新しい生活
朝起きると知らない部屋で寝ていた
エリーの部屋から剥ぎ取ったカーテンは無くなっていて、代わりにすべすべな肌触りの夜着を着せられていた、それに真っ白なシーツにふかふかのベッド
「ここ、どこ?」
眠気に目をこすっていると静かに侍女さんが入って来た
「おはようございますマロン様」
「おはよう・・・、誰? ここどこ?」
「これは失礼致しました、私はメイベル侯爵家に仕える侍女、アイリスと申します」
メイベル侯爵家、アランとタチアナの家だ
そっかボクは昨日・・・
昨夜の出来事を思い出したマロンは落ち込んだ
そこへ聞き覚えのある声が響く
「なーにしょげてんだよマロン」
「え?」
「よう」
「クロスケ・・・、どうしたのその顔」
「お前に殴られたんですけど!?」
黒髪黒目で制服に身を包んだクロスケ
何故か顔に青アザを何個も拵えていた
殴った? 何かしたっけ? とよくよく考えると
「あ」
「思い出したか?」
「うん、ごめんなさい・・・」
「いや、良いけどよ、お前馬鹿力なんだから加減は覚えねえとこれから大変だぞ」
「うん、気を付ける」
そうだった、昨日クロスケが生きてる事を知って嬉しくて
でも報せてくれないクロスケに腹が立って、つい・・・
「それより!へこむなよ、俺もお前もまあ大変だけどよ最悪じゃねえ、何とかなるから大丈夫だって、本当にやばいのは知り合いは居ねえ、金も何もねえだ、奥様はお前のこと気に入ってるみたいだし、アランだって拾ってきておいてポイなんてしねえ、それに、お、俺も居るだろ?」
「うん、ありがとクロスケ」
ボクにはあまりいい考えは思い浮かばないけど、クロスケが励ましてくれるのは純粋に嬉しかった。
照れくさいのかそっぽを向きながら言う仲間がとても頼もしく感じる。
「クロード、着替えを済ませていない淑女の部屋に立ち入るのはどうかと思いますが」
アイリスさんがジトリとクロスケを睨んだ
「いや、こいつの事だから変に気を遣って・・・」
「出て行きなさい」
「ハイ、すませんした」
一応、侯爵夫人とタチアナ、アランの心遣いから
修行中の身ではあるがマロンの世話をするようにとクロードは指示されていた。
クロードの立場は見習いなので一番下っ端である
他の使用人は大半が貴族の家出身なので、長い物には巻かれろ女には逆らうな、がモットーのクロードは大人しく退散した。
侍女も不安がるマロンの態度が和らいだのを察してはいたが、それはそれ。
高貴な客人の寝起き姿を男性に晒すなど有り得ないマナー違反だとしてクロードを追い出した。
深まる誤解。




