新しい居場所 2
「てのは、ジョーダンだけど」
クロードは悪ノリして言っていただけだ、しかしキースの報告が父母にいっているのも事実。
メイドの一人も小走りでどこかへ行った
取り敢えずマロンを起こして、誤解を解くのを手伝って貰おう
アランはマロンを揺り動かそうとして止まる
どこに触れていいのか?
女性は露出を控える事を美徳とする文化である
足首を晒すことでさえはしたない
男であるアランもそういった女性の事情に即した教育を施されている
気安く女性に触れてはならない
許可を得ても手くらいが関の山、恋人なら多少のお目こぼしはアリ
婚約者や家族は例外として・・・
さて、マロンを改めて見る
自分が父と兄に説明している間
母とタチアナを筆頭に、侍女を加えた屋敷の女性らが着飾って寝かせたらしく
夜着をしっかり着ていたのは幸いだった
少し躊躇しつつも眠るマロンの肩を掴んで揺さぶる
「マロン、・・・マロン!」
「ん、・・・んう?」
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ゆさゆさと揺すられ、白い光が瞼の裏にまで届く
んー、もうちょっと・・・
「マロン!」
んん・・・、分かったよお・・・
「おはよー、エリー」
ちゅ
ボクはいつものようにエリーにおはようのキスをした
すぐにエリーからお返しのキスがくるから、おデコを差し出す。
・・・
・・・・・・
・・・・・・・・・
?
いくら待ってもエリーからキスが返ってこない
ボクは眠気の気持ちよさに身を任せて、二度寝した。
すやあ・・・・・・
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「おはよー、エリー」
ちゅ
「・・・」
「・・・」
「キャー!見ちゃった、見ちゃったわ」
パタパタパタ・・・
昨夜からアランは頗る間が悪い
目撃した侍女は「まあ!」と、両手で口を抑えると走って出て行った。
客間から姿を消したマロンを探す為に屋敷内で使用人が動いているのだろう
昨夜アランが連れて来たということで先んじてアランに話をと部屋を訪れる使用人が多いのも頷ける。
寝惚けたマロンはエリザベスとのおはようの挨拶
キスをしたのだが相手はエリザベスでなければ、そもそも此処は公爵家でも無いし、マロンはもうオコジョでもない
キスの意味合いが全く違うのである。
キスをした箇所はアランの唇の真横だった
カーテンを開けたクロードの立ち位置なら確認できた事も、反対に寝室の入口側から見た侍女の視点では恐らく唇を重ねたキスに見えただろう。
更に言うのなら、エリザベスからのキスを待っておデコを差し出すマロンは、まるでキスを強請る恋人のようにも見えた。
1.女っ気のないアランが
2.無理を押して連れて来た女の子
3.その女の子と同衾(と思われる)
4.ベッドの上でキス
「おはようのキス」
と言うには無理があった。
「ぶはっ、ラブコメか!」
クロードはマロンの事も知っているし、アランの事も知っている
キスシーンにしても寝惚けているのは明白なので、前世で見た漫画のような展開に噴き出し笑った。
廊下ではキャーキャーと黄色い声が響いていた
「女は好きだねえ、恋愛話」
基本隙のないアランが耳を真っ赤に染め、手で口を押さえて固まる様は新鮮だった
クロードはニヤニヤとほくそ笑み、マロンは二度寝を決め込み、アランだけが大ダメージを受けていた。




