新しい居場所
「ん・・・」
目を覚ましたら屋敷に居た
「といれ・・・」
マロンはベッドから下りるとトイレへと向かう
身嗜みが整えられていたり、怪我の治療がされていたり
汗をかいていた筈なのに体からは良い匂いがしていたが
寝惚けて気付かない。
屋敷、というものは大抵似通った間取りになっていたりするものだ
ぼーっとしたマロンは用を済ませて廊下に出ると元の部屋が分からなくなっていた
それはそうだ、此処は公爵家ではなく侯爵家なのだから
だがエリザベスと共に何度も来ている事もあって、寝惚けた記憶が公爵家と侯爵家をごちゃ混ぜにした
記憶の中のエリザベスの部屋の辺りに入ると、確かめもせずに寝室のベッドに潜り込んだ。
温かい何かがあったのでぎゅうっと抱きついて、微睡みの中へと沈んでいった。
——————————————————————————
「おいアラン、悪いけど起きてくれ!」
早朝、アランは起こされた
父と兄に事件の経緯とマロンの事を説明
身を清めて軽食をとり、ベッドに入ったのは明け方近い
「う・・・、ん?」
流石に体に重さを感じる
昨日は朝からパーティーの準備に、パーティー本番
賊の襲撃と、公爵への説明に、マロンの捜索
あまり疲れが抜けていない中、クロードが起こしに来たのだった。
シャーッ!
カーテンを開けて陽射しが目に刺さる
「ぐ、なんだ・・・、」
今日は昼にレオン殿下の所へ行くだけだ
あまり早く起きる必要は無い
「マロンが居なくなったぞ」
「なっ、にっ!?」
「さっき様子を見に行ったら、もぬけの殻だそうだ」
アランは驚きと共に慌てた
客観的に見て、今のマロンは公爵家の襲撃犯だ
また王家の馬車襲撃に関する重要参考人でもある
大手を振って外を歩ける立場ではない
急いでベッドから下り、
ようとしたら、腰の辺りに重さと抵抗を感じて動けなかった
何やら温もりがある
「・・・クロード」
「早く探さねえと大変なことに、ん?」
「大丈夫だ、探さなくていい」
「は?」
「・・・此処に居たよ」
髪をガシガシと掻きながらアランが寝具を捲ると
そこには丸まって寝ているマロンが居た
「アラン、やっぱりお前・・・」
「やっぱり?」
なんだやっぱりって、起き抜けから嫌な予感がした
「キースが、アランと裸のマロンが抱き合っていたって」
「いや、それは誤解だと何度も」
「それ見せられて誤解と言われても・・・」
それとは勿論ベッドに同衾しているアランとマロンのことだ
ここはアランの寝室で、アランのベッド
ベッドの中には少女が共に・・・
連れ込んでいると思われても仕方の無い場面である
昨日から何かと誤解を受けるアランは嘆息した
「また、誤解を解かないと・・・」
またもやタイミング悪く、メイドが一人覗き込んでいて
「きゃっ♡」
と言って走り去って行くのが見えていた
少なくとも母とタチアナ、侍女達にはあらぬ噂が拡がっているだろう、父と兄はなんと言って来るか
朝から頭が痛いアランであった。




