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忠臣

「っ!?」


アダムスは何が起きたか分からなかった

気付けば家具に叩きつけられ、全身の痛みに動けなくなっていた。


「ぐ、・・・う」


どうにか頭だけを上げると目の前には子供が立っていた

子供はポイっとアダムスに輝く何かを投げて寄越す

近くにポトリと落ちたソレは潰れた金貨である。

そこでアダムスは理解した


そうだ忍び込んでいた子供に金貨を渡して、それで読み違えた・・・


「エリーを裏切るわけないだろ」


公爵の手の者だった、マズい。


「今の音はなんだ!」

「お嬢様の部屋からだ、剣を持って来い!」

「侵入者か? 旦那様に報せをっ」


マロンに殴られ、家具が破壊された音は静かな屋敷に響き渡った。


アダムスは臍を噛む

子供が公爵の部下だとすれば完全に現場を押さえられた

今の一撃で体も満足に動かない、このままでは・・・




バンッ!!


エリザベスの部屋に警備がすぐ様駆け付けた

主不在であろうと緊急時には入室を許されている


「な、なんだ、アダムス様! どうされたのですか!」

「っ」


アダムスはこの場を取り繕うのを諦め、今後どうにか逃走する為の方法を考え始めていた、しかし


「子供! おいお前は何者だ!何故ここに居る!」


警備の言葉に不意をつかれる

公爵の部下ではないのか?


警備の人員や配置、全ては公爵と公爵夫人にしか明かされていない

家令であるアダムスにさえ極一部のみ、それほどに公爵は用心深かった。


子供を見ると唇を噛んで悔しがるような顔をしていた

警備と影の者が連携を取れていないなど有り得ない、同士討ちになっては本末転倒なのだから。

つまり子供は公爵の手の者ではなく只の侵入者となる

目的は分からないが、まだ神は自分を見捨ててはいないようだとアダムスは口許を緩めた。



「ぐ、気を付けろ、賊だ、見かけによらず、恐ろしく強いっ、」

「お前っ」


マロンはアダムスの襟元鷲掴み力づくで起こす


「動くな!」

「ぅぅっ・・・」


当然、公爵家の警備は公爵家の家令を守ろうと殺気立つ

今この場ではマロンこそ「敵」であった。

部屋に来た警備はエイブラハム、アンドレアス、ライレルの三人

マロンにとっては既知の公爵家使用人だった・・・




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