縁
「女同士でお話したいですわ」
その一言でアランは閉め出されていた。
マロンとオデット嬢二人きり、応接間を借りて何を話しているのか・・・
「アランこっちにいらっしゃい」
母が手招きをして応接間の隣の部屋に入って行った
アランも少し腹に据えかねたので母にひとこと言わねばと続く。
部屋には兄も居て、小さく「すまん」と謝ってきた。
「母上、どういうつもりですか!オデット嬢と鉢合わせさせるなんて」
「どうもこうもないわよ、そう何度もお見舞いを断れる訳ないでしょ」
「だからと言って」
「良いじゃない、多分彼女はこれで最後よ」
「最後?」
「呆れた、元々縁談があって断ってからもあの子がアランについて回る事に疑問を感じなかったの?
伯爵が娘の好きにさせてくれないかって頼み込んで来たから、此方としては個人の行動は制限しないと話し合いしていたのよ?」
「それは、でも、何故・・・」
「丁度良かったからよ、婚姻を結ぶならあの子が1番適していたわ、でもあなた婚約にさえ首を縦に振らないから、家としては婚約の話を勧めないけど、もし個人的にそうなるのなら、また話し合いしましょうねって」
「そんな話が・・・」
母はため息をついた
「今思うと酷いことをしたわ、ここまで引っ張るとは思ってなかったもの」
彼女、オデット嬢は諦めなかった
何度そのつもりは無いと言ってもだ。
「政略だけなら家同士の話が終わった時点でおしまい、それでも彼女がここまで粘り続けたのは、・・・分かるわね」
母が言いたい事は勿論解っていた
苦手意識はあったが憎いとかそういった感情はない
ある意味では尊敬さえしていた、今はその気持ちも解る気がする。
相手が気になってしまう、つい目で追ってしまう
庇護欲も多分に混じっては居るが特別な感情を持つ相手。
ケジメをつけなければならない
俺は廊下で待ってますと母に言うと部屋を出た。
***
アランが部屋を出ていくと兄が口を開いた
「で、本音は?」
「修羅場、見てみたくない?」
ニヤリと笑う母、アランに言ったことは事実である
ただマロンとオデット嬢が顔を合わせる必要は無かった
アランにだけ伝えてケジメをつけさせればそれで済む話なのだから。
「・・・台無しだよ、母上」
「だってぇ、アランたらのんきなんだもの、マロンちゃんなんて宰相のお孫さんから縁談来ているのよ?
クギは刺してあるけど、それでも王命で推されたら断るのも面倒だし、かと言って「はい!メイベル侯爵家とリュミエール伯爵家で婚約の話まとめました!」っていうのも情緒が無いじゃない」
それはそうだったが
修羅場を作り出したのは絶対楽しんでいる侯爵夫人であった。




