婚約者って何?
とても忙しい日々を送っていた。
週3日は通いでエリーの侍女見習い、2日はママの淑女教育
残りの2日は休んだり、お出掛けしたり、リブ食べたりしてる、美味しい。
ボクは全然疲れる事が無いから大丈夫だけど、休む癖を付けなさいと言われた、はあい。
あれから伯爵家には沢山の手紙が届く
王様からは感謝状とお城に来ないかという誘い
リオンが元に戻って、何が起こるか分からないから対向策としてボクにお城に居て欲しい、とか。
王太子妃様の話し相手にお城にあがらないか、とか。
王妃様のお茶会に来ないか、とか色々だ。
全部ママが「マローネの貴族教育に手一杯で失礼があってはいけませんから」と断った、お兄ちゃんが言うには嘘も方便ってやつらしい、何でもかんでも頷いていたら好きなこと出来ないぞ、身体はひとつだ、だって。
うんうん、ボクはエリーの侍女だからね
お城のお肉は美味しかったから、身体が2つあったら行っても良かったかな?
え? お前流石に分身はしないよな?
しないよ、多分。
「でね、ボクは増えないよって」
「そ、そうか、まあ増えなくてもいいんじゃないか?」
「そう?」
「ああ・・・」
今日はアランのお見舞いだ、週に一度来ている。
足は少し引き摺っているくらいで大丈夫らしいけど
肩、鎖骨の骨折は何かと体に響いて動けない
暇してるからマロンちゃん遊びに来てあげてと侯爵夫人に言われた、そうでなくても心配だから来てるけどね。
「あ、紅茶おかわりする?」
「ん、頼むよ」
とても天気が良いし寝てばかりじゃ気が滅入るから、アランの座ったソファーごとバルコニーに運んで一緒にお茶をしてる、力仕事なら任せてよね!
アランの紅茶の好みも知ってるからね
オコジョの時は紅茶淹れる時にお湯を零しそうになって大変だったけど、今なら楽に淹れられる。
「はい」
「ありがとうマロン」
「へへへー、あ、クッキー食べる?」
「あ、ああ・・・」
「はい、あーん」
「ん、んんんっ・・・、あー・・・」
***
「うーん、良妻だな」
「お兄様にあそこまで気を許させてるなんて、お母様決まりじゃない?」
「そうね、やっぱりマロンちゃんよねえ、あの子ったら幼い内に王子の従者になっちゃったから猜疑心強めなんだもの・・・」
クロード、タチアナ、侯爵夫人がアランとマロンの二人きりのお茶会を覗いていた。
マロンには事件解決以降、騎士や宰相の孫などからの縁談が数多く届けられている。
騎士はマロンの実力に対する純粋な敬愛と壁の無い素直な態度が好評で、宰相の孫は王家肝入りの縁談である
伯爵家としては娘が評価されている事に嬉しい反面、王家への警戒もある。
通常の貴族で12歳なら政略も大いにあるのだが
マロンの出自の特殊性と現状の精神年齢を考えると、やはり全てを知っている幼馴染みのアランが良かった。
問題はマロンの異性への芽生えが無いこと
アラン、もとい男性から動く事が当然の話なので周囲は面白半分に色々と気を回している所だった。
今日のお茶会も最初の準備を終わらせた侍女はそそくさと下がっていた。
侯爵家としてはマロンのことを気に入っているので異論は無く、伯爵家も望む所で
なんなら侯爵と伯爵で婚約を進めても良いが、どうせならアランがどうアプローチするのか見てみたいと両家の夫人が盛り上がっていた。
「アラン様には同情するわ・・・」
レナは伯爵夫人から備に観察する様にと言われているので
3人が覗いている後ろから出歯亀していた。




