最後の敵
「復習よマロン、やるべき事は?」
「使える手段はなんでも使う!」
「よろしい、あなたならきっと大丈夫よ、私達の娘なんだから胸を張って行きなさい」
「はい!」
「淑女は?」
「賢く強かに!」
今日はマスティーゼ公爵家で侍女採用の面接だ
ママと相談して沢山対策をしたからきっと大丈夫
ボクは公爵に勝つ!
「なあイリア、今復習の意味が違うように聞こえたんだけど・・・」
「ほほほ、気のせいです、私は公爵様に腹など立てていません」
「ああ・・・」
伯爵は黙った
マロンがオコジョから人になり、そこからどうなって侯爵家に辿り着いたか全部知っている。
人の身体を手に入れたばかりのマロンが裏切り者の家令をやっつけ、しかし公爵に追われて泣いた事。
状況的に仕方ないと思う、見知らぬ人間が娘の部屋に居て
家令とどちらを信じるのかと言われると家令になるだろう。
とは、口が裂けても言わない伯爵。
妻も理解している筈だがそれはそれ、マロンが泣いた事は事実なのだからチクチク啄くくらいはまあ許容範囲だ。
それ以上はやらないよね? と一抹の不安が胸を掠めたが、伯爵は考えるのをやめた。
***
「ぬん!」
「えい」
「ぐあっ!?」ゴトン
「旦那様っ!?」
ママとパパは応接室に、ボクは別室に案内された
公爵の執務室だ。
ボクが執務室に入ると扉の横に居た誰かに剣を振り下ろされた、反射的に剣をポキっと折ってお腹パンチと顎パンチをする。
倒れた人は、公爵だった。
「ふ、ふふん!やるでは無いか、マローネ」
「あなた、いい加減にしなさい」
「ふん!」
護衛侍女として売り込んで来たボクの実力を測ろうと公爵は試したらしい。
公爵は執務机の椅子に座り、公爵夫人は机の横に立っていた。
「公爵様、ボ・・・、わたくしの力は見て頂けたでしょうか」
「まだだ、来い!」
バターン!と後ろの扉から人がボクに襲いかかって来る
振り向くとアンドレアス、エイブラハム、ライレルの警備3人。
「あなた!どういう事ですか!」
「ははははっ!護衛なら敵の奇襲にも対応出来ねばならない」
「突然、なんてことを」
「敵が待ってくれるものか! 護衛侍女なら侍女服を、伯爵令嬢の肩書きもあるのなら夜会で付き添う事もあるのだ、ドレスで動けなくてどうする!」
背後で公爵が高笑いを上げた
アンドレアス達はボクに向かって突撃して来た
ふと、目が合う
「「「あ」」」
と目を丸くしたアンドレアス、エイブラハム、ライレル
ボクはこれも試験ならと、3人を公爵に投げた。
ドスン
「ぎゃっ」
ミシ
「ぐえ」
ズン
「げほ」
公爵の潰れる音が3度響いた。
ママとパパの予想通り、公爵は必ず奇襲してくるから相手を公爵に投げなさい作戦。
普通にボクが勝っても公爵は負けを認めない
ボクが不意をつかれても勝ち、逆に公爵は不意をつかれて対応出来ないなら認めざるを得ない筈だ。
見ると公爵は鼻血を垂らしてグヌヌと唸っていた
・・・勝ち?




