クロード 2
「さて、先程の話に戻るけど何か無いか」
「いやー、まあアレだよ、アレな考えしかない」
「良いから言ってくれ、この際どんなに突飛な話でも信じられるよ」
レオンが疲れたように笑った、まあ気持ちは分かる。
はっはっは、笑うしかない。
だってそうだろ、リオンらを変容させたクスリは血が主成分で。
そのクスリを製造したと思われる人間が血判入りの書類を盗って行った。
で、あのA野郎が城に来た時、王太子に煽てられてベラベラと喋ったわけだ、神獣とか呼ばれる獣と人間の力を持った生き物を人体実験に使ったと。
これは俺とかマロンみたいな存在の話になるんだけど
俺は黒猫に戻れた試しはない、マロンはオコジョに戻れた、ということは恐竜化のクスリはマロンタイプの人間が使われた可能性が高いって事になる。
マロンの養子縁組の書類は当然マロンの血判も押されているワケで・・・
「書類から血を抽出、マロンの力を得る、なんつって」
「紙から乾いた血を抜き取れるのか?」
「まあ、多分あの野郎が俺と同郷だとしたら、そういう技術は確実にあると言えるよ、こっちで再現出来るかどうかは別にして」
「なんだと・・・、ではマロンの血を?」
「気色悪い事に・・・」
「兄上にも伝えなければ!」
「え、マジで? こんな想像を上奏しちゃうの?」
「可能性はあるのだろ?」
「まあ、人が恐竜化した以上可能性はある、のかな」
結局王太子様に俺の想像は伝えられた
凄い難しい顔をしていたけど無碍に否定しなかったって事はこの人も考えていたのかもしれないな。
つうかヤバイ、恐竜は多分打ち止めだと思うんだけど
たった1人でもマロン級の人間なんて来たら城落ちるんじゃね?
だって恐竜討伐に参加した騎士の大半が使い物にならない
動けるには動けるけど、全員が全身打撲やら捻挫で戦える状態じゃない。
王様に着いて行った騎士で半分、更に戦闘不能で半分
王妃様の宮に警備を割いて、城側は僅かな警備。
王妃様達を城側に移らせて騎士を集中させるか?
勝てば良いけど負けた時はみんなやられるな、これは難しい判断だ、俺にはムリ、つか逃げたい。
マロン?
オコジョのままぐっすり眠っていて起きる気配の欠片も無いってさ。
襲撃事件が朝、その後昼食と夕食時間になって肉の匂いがしても起きなかったらしくて
「こんなに消耗したマロンは見た事がない、レオ様何をやらせたんですかキライです」
とエリザベス様から手紙が届いてレオンが机に突っ伏したのがついさっき。
まあ肉の匂いがしても起きないのは非常事態だな、マロンとの付き合いも長い。
昼寝してても何してても、干し肉レベルの匂いでさえ嗅ぎ分けて起きて来た事もあるからなアイツ・・・
つまりマロンは使えない
つうか唯一対抗出来るであろうマロンを消耗したまま同じ様な敵にぶつけるなんて愚策だろ
俺なら逃げて、マロンが回復したらやってもらうわ。
じゃあ城を1度明け渡すかという話になるんだけど
先の恐竜襲撃の時に王太子様は最悪城ごと燃やすなんて手段も考えていたから簡単に思えるが
「権力の象徴である城が落ちたとなれば人心が乱れる」
という宰相の意見があったり、おいそれと城をやるわけにもいかない事情があるのだとか。
政治というのは分からんが、デモ隊がそのまま暴動に、とかニュースではよく見たからな、不安を与えたりはしたくないのも分からないことも無い。
王太子様、レオン、宰相と他の代表者やらも集まり揉めているから俺は与えられた部屋に戻り食事を摂って寝る事にした。
だって口挟めねえし、腹減ったし眠いし気疲れした、おやすみ・・・




