決戦 2
赤い煙は緊急事態の狼煙
お城の方で何かがあった証らしい
取り敢えず立っていても仕方ないわ、落ち着きましょうと言って王妃様が手ずからお茶を淹れてくれた。
お茶を飲んでクッキーを食べていると馬が走ってくる音が聞こえた。
ガラス戸を開けてバルコニーに出る
「マロン?」
お城の方から騎馬がひとつ、こちらの宮へ駆けていた
宮の城壁、鉄柵は閉じられている
馬から降りて騎士は警護の騎士に慌てた様に言った
「・・・っ!・・・、・・・・・・!」
「レオンが、ボクを呼んでる」
「あら、ここから声が聞きとれるなんて凄いわね」
「そんな、レオ様は宮の、マロンは私の護衛に回すと言っていたのに・・・」
「何かあったのでしょうね、それもマロンちゃんを必要とする何かが」
なんだろう?
らぷとるとか言う恐竜は騎士で何とかなるって言っていた。
クロスケがドラゴンの事を知っているから、事前に話し合いをして対策はするとアランも言っていたのに・・・
「エリー」
振り向くとエリーは心配そうにボクを見て言った
「マロン怪我しちゃダメよ、危なくなったら逃げてね、でも、出来たらレオ様達を助けてくれると嬉しいの・・・」
「うん、任せて! レオンもアランも助けるし、悪い奴らはやっつけてくるよ、怪我もしない!」
ママもパパも怪我はしないようにと言って心配していた
ボクは怪我をしてはいけない
ボクが大好きな人達が怪我をしたら悲しいように、ボクの怪我も誰かが悲しむんだから。
「扉を!」
「大丈夫、ここから行くよ」
「え、待ってマロン! ここは4階っ」
「とー!」
ボクはバルコニーの手摺りを乗り越えて飛び出した。
「あ」
「え?」
飛んだ瞬間ボクは気付いた
「4階って意外と高い」
「ええっ!?」
「マローーーーン!?」
後ろから王妃様の驚く声とエリーが叫ぶ声が聞こえたけど、ボクは止まれない、だって飛んじゃったから。
「わー」
ボクは落ちた。
***
城からの馬で駆けてきた伝令は王妃の宮が既に閉じられていることに安堵した。
馬を降りると警護の騎士に説明をして宮へと入る。
ガッチャガッチャガッチャ
石畳の上を具足を鳴らしながら走る
そして宮の入り口を固めていた騎士まであと少しという所で、騎士から左手10m程の場所に何かが落ちて来た。
ドゴッ!!!
何かでは無い、人だ。
栗色の髪を持つ、防具を身に付けた少女マローネ・リュミエール伯爵令嬢。
彼女を城へと呼ぶ為に来た
物理的な衝撃と精神的な衝撃で門番2人と伝令は腰を抜かした。
「あっ、石畳割っちゃった・・・、あー、どうしよう」
そこじゃない!
気にする所はそこじゃない!
騎士は茫然自失の体でマロンを見つめていた
マロンは騎士と目が合うと誤魔化すように笑った。
「あ、えーっと、ごめんね? 後で直すから・・・」
だから違う! そこじゃない!
言葉は口から出なかった、そこまで衝撃的な事だ
直上は王妃様の居室、忍び込めないように2階3階はバルコニーが無い。
つまり4階の王妃様の部屋から降りて、いや落ちて来たのだ。
城でバケモノを見てきたが、宮でもバケモノを見たように騎士は固まった。
城の緊急事態に何故令嬢を呼びに行かされたのか
エリザベス公爵令嬢の護衛として滞在している、最近巷で名の挙がるリュミエール伯爵家の養子。
その答えがたった今理解出来た騎士は言葉を失っていた。




