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王太子の友

王太子は各所への根回しに力を尽くしていた

国王である父が帝国へ向かった為、国王代理として采配を振るう。

騎士団が半分不在であるのは痛かったが宰相らが残っていたのは幸いで、情報統制や事務手続きがスムーズに行えた。


主だった問題は3つ

リオンの処遇、大講堂で捕えた側近候補の治療、首謀者の確保。


リオンが大講堂で起こした騒ぎは見過ごせない

しかし帝国から流れて来た研究者に寄るクスリの影響ともなれば、現状身柄さえ押さえてしまえば情状酌量の余地はある。


側近候補の子息達は王城の北の塔へ隔離

隔離された3人の内2人は意識混濁ではあるが身体への影響は見られない。

問題は騎士見習いギリアム、彼は錯乱状態の上に身体の一部が変化している。

ワニのような鱗、鉤爪、瞳の変化

人の身体を変容させるクスリなど俄には信じられないが

マローネ嬢のようにオコジョから人の身を得た例もあるので頭から否定は出来ない。

クスリの効果によって変化させられたなら逆に戻す手段も見つかるかもしれない、城の薬師を総動員して成分の解析をさせているが、果たして・・・


そして首謀者は、


「はあい、お疲れね」

「・・・仮とは言え、初めて与えられた王権の行使にしては荷が重い」


執務椅子で思考に耽ける王太子の元に現れたのはクリス・ワーナード伯爵

旧知の仲であり、次代の王の協力者

今回の件に関しては王家側の諜報と騎士の数が足りない為、王家に並ぶ情報網を持つ伯爵家に助力を願い出た。


「王様も大変ね」

「茶化すな、それで居場所は」

「捕捉はしてる、でもこれを見てちょうだい」


執務机にクリスは地図を拡げると指を差していく


「潜伏先は此処と此処と此処、それで此処と此処・・・」

「多いな・・・」

「ええ、上手いわね、頭の回る人間が居るみたいよ」


クリスが差した敵の潜伏先は10箇所程

元は貴族が住んでいた館や民家など、それぞれの場所は離れていて、且つ城に対してはほぼ同じ距離を取る配置。

あのバケモノ、恐竜(ドラゴン)が居る前提で手元の騎士を動員するには数が圧倒的に足りない。

2、3箇所に絞って潰そうとしたら、他の潜伏先から城へと攻め込まれそうだ。

寡兵ではあるが、騎士数人で1匹の対処となる程に強力な手札であると敵も理解しているのだろう。


「城へ来るな」

「でしょうね、でも好都合ね」

「ああ、街で暴れられるより遥かに良い」


王太子とクリスの見解は一致している

敵は城を取りに来る、国王と騎士団の半分が戻るまでに。

そうでなければとっくに街に火が上がっている

それをしないということは民を敵にするつもりは無いのだ。


戦闘は避けられない

しかし城の敷地内で済むのなら戦力は集中出来るし、民に対する配慮も必要ない

此方としては迎え撃つだけだ。



「助かる」

「良いのよ、ワタシもこの国は好きだし、あ、それとコレをマロンちゃんに渡しておいて、流石に王妃様の宮に迂闊に近付く訳にはいかないからお願いね」

「マローネ嬢に? それは?」


クリスが執務室に入室した際、扉の横に木箱を置いていた。


「マロンちゃん用の防具よ、護衛侍女を目指しているのだから一張羅は必要でしょ」

「これは、鉄、では無いな・・・、生地も黒い繊維の、なんだこれはクリス」

「うふふ、ウチの新作、チタン合金とカーボン繊維の服よ、錆びない腐らない硬くて丈夫、少量生産出来たから試作品ね」

「ほう、鉄より硬いのか?」

「硬いわ、そして軽い、繊維も丈夫で軽いのよ」

「ふむ、軽くて硬いなら騎士にも・・・」

「ああ、無理よ無理無理、とっても高いのよコレ」


販売する場合の価格を聞いて驚いた

ひとり分で騎士10人の装備より高額だと・・・


「そんなに高いのか」

「製法は秘密、ウチのお抱え職人による手間に素材自体も大量生産は出来ないの」

「1品ものか、そんなものをマローネ嬢に?」

「うふふ、男女(おとめ)の勘よ、きっと役立つわ」

「勘、か・・・」

「勘、よ」


こうなるとクリスは答えない

しかし勘と言っても天下のワーナード伯爵

時勢を読む事に長けている彼はごく稀に理由も無く勘と言って物事を的中させてきている。

例えば国が乱れる可能性、地方の疫病、流行り廃り

事前に知っているかのような、予知とも言える助言を・・・


今回の件も読んでいたのかそうでないのか、不思議な友人に王太子は味方で良かったとひとりごちた。





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