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クロスケの冒険

マロンが異形のバケモノと戦っている所をしり目に俺はリオン王子を追い掛けた。

壇上のリオン王子が足を引き摺るようにして逃げて行くのが見えたからだ。

バケモノに関してはマロンが倒すだろう、バカみてえに強いからタチアナもエリザベス様の傍に居れば安全だ。


大講堂を裏から出て外を見回すと丁度リオン王子の後ろ姿が生け垣の先へと消えていくのか見えた


「逃がすかよ!」


と、追い掛けて来たものの俺は腕っぷしに自信が無い。

一応護衛の特訓は受けているが剣なんて怖くて振り回せないし、そもそもパーティー会場に武器の持ち込みも出来ない。

丸腰だからせめて居場所だけでも特定しないと、という程度の心づもりで追っている。

あんな騒ぎを起こしたのだから、まさか城へは戻らないだろう。

走って生け垣の角からリオン王子が消えた先を伺う



「ぐ、アン・・・」

「あら、どうなさいました王子サマ」


居た、あの令嬢も一緒だ。


「俺、ナに、し・・・」

「あらあら? 流石といった所ですか、クスリの効き目が悪いのは王族故に毒に慣れているからかしら?」

「ふむ良いサンプルだ、改善の余地があるな」


女と王子の他にも誰かが居る

此処から姿は確認出来ないが男の声だ

クスリ? 確かに麻薬のような薬の影響を受けているとすれば、あんな滅茶苦茶な言動も納得出来る。

判断能力が落ちているのか、双子の兄レオン王子の優秀さを考えるとリオン王子の素がアレとは思えない。


どうする・・・

リオン王子だけならまだ何とかなったかも知れない

女も1人くらいなら、なんて思っていたけど普通の女じゃないっぽい、王子にクスリとやらを盛ったっぽいから相応の訓練を受けている人間の可能性は高いだろう。

男の方はクスリを作った奴か、改善とか言ってるし。


「ふふ、リオン様、大丈夫ですよぉ、私に全てを任せて?」

「・・・そ、だな」


クスリとやらの効果か、洗脳なのか

女の言葉に王子は素直に頷いていた


メリメリメリ・・・


おいおい・・・、王子の手がウロコ付きのかぎ爪に変化したんだけど!

大講堂のバケモノと一緒だ、ファンタジーかよ!

って、俺も猫から人間になったしマロンもオコジョから人間になったから、逆も有り得るのか?

無い、とは言いきれないよな。


これはどう考えても手に負えない

つか、今更冷静に考えると王族案件だからやべーわな。

俺はこっそり引き返そうと静かに


パキッ!


「誰だ!」


ああああ!枝を踏み折るとか、テンプレのアホやっちまった!


「サンプルにでもするか」

「ねえ王子サマァ、そこに居るネズミを捕まえて?」

「・・・」


うっわ、無理無理!

大講堂のバケモノだって、手加減に困っていたと言ってもマロンを押しちまう力を持っているんだ。

一般ピープルの俺なんか相手にならんわ。

俺は全力疾走で逃げる事を決めた、その時


ガサガサ

「ニャーン」

「あら、猫?」

「長居は無用だ行くぞ」

「はぁい、王子サマ着いてきて」

「・・・」


運良く生け垣の隙間から猫が出て来たようで連中は立ち去った。


「は、はは、助かったぜ・・・」


あまりの出来事にその場にへたり込む


「腰、抜けた・・・」

「ンゴロニャー」


猫は白猫で、やたら人懐っこい

グリグリと俺に体を擦りつけてきた。


「命の恩人だ、ウチ来るか?」

「ニャーン!」


なんかコイツ言葉通じてね?

まさか、いや、まさかな・・・

抱き上げてやると暴れることも無くゴロゴロと喉を鳴らす白猫、俺も侯爵家に世話になっている立場だけどタチアナは猫好きだ、多分大丈夫だろと猫を抱えて俺は大講堂に戻った。





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