お茶会デビュー 6
「誰?」
「巻き毛がオックス伯爵令嬢、そばかすの子がグラメイル子爵令嬢、切れ長の目がアシューム男爵令嬢だよ、いっつも3人で居て、嫌味と自慢話してくるの、多分悪口言いに来たんだよ、気にしちゃダメだよ」
ミリアさんが小声で教えてくれた
悪口をわざわざ言いに来るの?
暇なのかな?
「あらぁ? 此処かしら匂いの元は」
「そのようですわねマーズ様」
「我慢ならないですわぁ」
「?」
匂い? うーんなんだろ、何か・・・、あっ!
「平民の・・・「そうですわね!本当に臭いですわね!」・・・えぇっ?」
マーズ・オックス伯爵令嬢がやはり平民あがりのマロンを揶揄しようとした瞬間、当の本人から臭いと言われて機先を制され困惑した。
「マローネさん!?」
「折角のお茶会なのに香水の香りが強過ぎて台無しですものね、わたくしなんて麻痺してしまいましたわ!」
「はあっ!?」
匂う、匂う・・・
お茶会の由来は読んで字の如く、紅茶を楽しむ所から発している。
マロンは鼻が良すぎるので、臭いと言った。
しかし文面通りに受け取らないのが貴族
「侯爵夫人が用意した紅茶を楽しみに来たのに、香水をこれでもかと付けて来るなんて誰でしょう! 臭くて鼻が曲がりそうですわ、貴女もそう思いますでしょう?」
マロンの言葉は歪曲した
決してマロンは煽っていない、母イリアは自然由来の優しい香りを身にまとっているし、これまでマロンが出会ってきた貴族も品良くうっすらと纏う程度だった。
初めての社交の場所、夫人と令嬢が集まった知っている筈の侯爵家庭園は各々の香水が混じり合っていたのだ。
匂うと言われたから臭いと返しただけである。
オックス伯爵令嬢らは歪曲した意味に捉え、扇の裏で怒りに顔を赤くした。
因みにこの場で1番臭いのはオックス伯爵令嬢である・・・
「あ、あなた、中々度胸があるようね・・・」
青筋を立てながらオックス伯爵令嬢は扇を握り締める
勝ち馬に乗っていたつもりが出鼻をくじかれて、左右の2人は扇越しにマロンを睨み付けた。
「?、初めましてリュミエール伯爵家が娘、マローネと申します」
「・・・」
サラリとイヤミを流して挨拶をするマロン
言ってる意味が分からないから取り敢えず挨拶しただけだが、これもまたイヤミ3人組にとっては鼻持ちならない態度であった。
「ふんっ、それよりも何、その地味なドレス!これだから平民は・・・」
「え、ドレス?」
今度は分かりやすく身につけている物を貶すことにしたイヤミ3人組。
それは最悪手であった・・・




