乙女の秘密 EX
「ん・・・」
朝方、まだ日はのぼりきっていない時刻
胸元にごそごそと擦り寄るマロン
何度か一緒に寝たことで慣れてきたのか最近ではイリアに甘えるようにピタリと抱きつくようになっていた。
可愛らしい娘の行動を愛しく思うイリアは優しく抱きしめた。
ふわりと柔らかい毛の感触と長細い形に、おや? と目を開ける。
「キウ・・・、キウ・・・、スピッ・・・」
「・・・」
目の前には栗色の美しい毛並みの、公爵家で家庭教師をしていた時によく見た姿が・・・
「いやだ、寝ぼけているわね・・・」
ほわほわと温かく細長い娘を構わず抱きしめるとイリアはまだ起きるには早いと寝直した。
公爵家の家庭教師時代、エリザベスの部屋で毎度見たマロンの姿を娘になってから夢で見るなんておかしな夢ね、と微睡みに身を任せた。
朝日がカーテンの隙間から差し込み、ゆっくりと起き上がるイリア
隣にはまだ夢の中にいるマロンがすぅすぅと寝息をたてていた。
穏やかな寝顔をずっと眺めていたい気もするが
「マロン」
「んー・・・」
イリアに起こされたマロンは上半身を起こして目を擦りながら周囲を見渡す
「・・・」
ポケーっとするマロンをイリアは微笑ましく思いながら
優しく頭にキスをする
「おはようマロン」
「おはよお、せんせー」
マロンもイリアのほっぺにおはようのキスを返す
イリアはマロンの頭を無言で撫でてから、化粧台の前へと座らせヘアブラシで髪を梳かす。
さすがに着替え迄は手を出さなかったが、朝いちマロンの髪を梳かして寝癖を直すのはイリアの役割になっていた。
着替えは侍女の手を借り、モーニングティーを飲み干す頃にはマロンも意識がハッキリしてくる。
そうして伯爵家の一日は始まるのだった
ホランドがイリアとマロンを迎えに来て一緒に食堂へと移動していく。
そして入れ違いに寝室のベッドメークが始まるのだが
イリアとマロンが寝ていたベッドのシーツには数本の栗色の短い毛が落ちている事には誰も気が付かなかった。




