伯爵と伯爵夫人 4
食後は3人でゆっくりお茶を飲んだ
お肉を沢山食べてお腹はパンパンだからストレートティーで落ち着ける。
「マローネは沢山食べるんだね」
「お肉大好きなの・・・」
「ふふふ、育ち盛りだものね」
「うん、そう言えば下着のサイズも合ってないってサリー・・・、えとクリスのお店で言われたし」
「あら」
「クリスとは、ワーナード伯爵の事かな?」
「マロンは12歳くらいで1番身体が変化する時期だから、まめに補正した方がいいかも知れないわね、早めに下着も作り直してドレスも仕立てなきゃ! 他に変わったことはない? 大丈夫?」
「え、と・・・、うーん、あっ、また下着合ってないかも、胸もなんか痛いし」
アランと商会へ行った時に新しい下着を合わせて貰って、その後は先生との顔合わせをする為にドレスを作る時にも調整して貰ったのに、また合っていない気がする。
胸もかたいし、触ると痛い
今も胸を両手で触ってみると張っているというか・・・
「んっ、んんっ!」
「え?」
「あらあら、ふふふ」
「マローネそういうのはだな、そのー、女性だけでするものだ・・・」
「そうね、いいことマロン、胸・・・、身体の事や下着の事は私かレナさん侍女達にしか話さないようにね、男性の前では口にしちゃダメよ?」
「なんで?」
マロンはオコジョ(全裸)で10年以上も過ごしていた為に
情緒や羞恥心、男心の機微というものへの配慮が全く育っていなかった。
ホランドは咳払いをしつつ気まずげに紅茶を飲んで誤魔化す、イリアは早々にマロンの問題点を諭しながら今後の養育計画を考え始めた。
とはいえ性急にことを進めるつもりは全くない
親子になって1日目の今日、お互いに知らない事の方が多い
子供を1人育てたと言っても養子を迎えたのも初めて、娘が出来たのも初めての伯爵夫婦と
両親は居ないまま12年程、しかもオコジョとして過ごして来たマロン。
不慣れな親子生活は始まったばかりである。
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「ただいま」
「お帰りなさいませ」
深夜、既に屋敷は静まり返った時刻にジュードは帰宅した
彼がマロンの歓迎会をすっぽかしたのは
「お前など妹、身内として認めない」
という決意表明である。
マロンがアラン関係で家に来たという事もあり、信用ならないと勝手に思っていた。
「すまないが食事を・・・」
「はい」
こんな時間に申し訳なく思いながらも執事に言うとすぐさま食事は出てきた。
コトリ、コトリ・・・
「なんだ、これは?」
目の前に置かれたのは2皿のみ
パンひとつに粗末な野菜スープのみである
いくら食事時を外したと言っても、伯爵家の嫡男にこれはないだろうというメニューであった。
「奥様は大層お怒りでございました」
「・・・」
執事のひと言に、ジュードは大人しくパンとスープを平らげて部屋に戻った
礼儀やマナーに厳しい母が怒るのも分かるが、自分だって妹が出来ます、はいそうですか、なんて無理に決まっている。
「俺は、認めない・・・」
意固地になっていたジュードは次の日も顔を合わせないようにさっさと屋敷を出る事を決めた。
何も解決しないのに・・・




