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伯爵家子息の場合

「養子っ!?」


それを聞いたのは父の政務についた合間の事だった

突然養子を取ると言われた

驚いた俺をよそに父は「うん、そうだよ」と軽い態度である。


「何故・・・」


伯爵家には俺しか子供はいない、分家筋に近い歳頃の人間は何人か居るが養子はそちらからでなく平民との事。

意味がわからない・・・


「色々あってね、ジュードも来年20歳になるし、イリアも空いていたから」

「暇だから養子をとると?」

「そんな事は言っていないだろう?」


父はピクリと眉を寄せて俺を窘めた


「可愛らしい良い子だよ、少しだけ世間知らずだけど仲良くしてあげなさい」

「・・・はい、でも大丈夫なんですか、平民なんか」

「大丈夫だよ、アランくんが連れて来たらしくてとても————」

「アランって、メイベル侯爵家のっ、!?」

「そうだね、縁あって・・・」


続く伯爵の言葉はジュードの耳に届かなかった

宿()()アラン・メイベル、ジュードは彼のことを一方的にライバル視していた。


ジュードは人格者の父、教育者の母の教えを受けて

優秀と評判だった。

彼自身とても器用で頭もよく努力を重ねた

自他共に認められていて自信もあったが、それは学校に入って砕かれる。


上には上がいる、ひとつ上の学年にアランが居たのだ

アランは侯爵家の名に恥じない優秀さで成績は上位、整った容姿と王子の従者であることで誰もが放っておかなかった。

入学して何人かの令嬢に声を掛けられて有頂天だったジュードだが、同級の令嬢はあっという間にアランに群がっていったのである。


そこまでは良かった、まだ。


ある日、婚約者であるファナ伯爵令嬢がアランに髪を触らせて赤面している場面を見てしまった。

アランは普段素っ気ない態度で令嬢を捌いているのに何故、しかも自分の婚約者を・・・


その時は呆然としていたジュードだったが

それ以降アランは敵と認識した、因みに婚約者には怖くて確認出来なかった。



そんな宿敵アランが関わっている養子が味方とは到底思えないジュード。

彼は静かに警戒心を高めた・・・



「という訳で、イリアが娘も欲しいだろうと前々から考えていたんだ」


親の心子知らずとはよく言ったもので、伯爵による説明はジュードの耳には届いていなかった。

マロンは腹芸が出来る子ではない

イリアは今楽しそうに娘の部屋を整える為に自ら部屋で指示を出していることを。




毎度、誤字報告ありがとうございます。

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