第三章☆西方研究所
ひよりは西方研究所のゲートをくぐった。
「手を上げろ」
銃口を向けられて、しばし両手を上げる。肩から鳥が飛び立ち、建物の方へ飛んでいった。
ボディチェックされて、なにも持ち物がないとわかると、銃口を下げられた。
「PTー101!戻ってきたか?!」
西方研究所の荒巻博士がひよりを出迎えた。
「言わんこっちゃない。外の世界なぞ、なにもありゃせんだろう?」
「一緒にいたPTー100は?捕まって連れて行かれたけれど、無事なんですか?」
「あれは使いものにならなくなったから、処分した」
「なんですって?!」
「お前を言いくるめて脱走した危険思想を持った奴だ」
「でも、処分はひどいです!」
「しー。静かに。お前も処分かどうか役員会で話し合うことになっとる。おとなしくしておったほうが賢明じゃぞ」
独房に近い施設の何もかも白い部屋で、ひよりは椅子に腰かけて、思いを巡らせた。
私には人権がない。造られた人間だから。人類がどこまで進化できるかという課題のもとに100体以上の人造人間が造られて、たいていは処分されてしまう。私は記憶力がいいからという理由で優遇されているけれど、一度脱走したから、あとがない。
心よ!私のちっちゃな心よ!今生きているということをどう位置づける?!
「ひより」
私に名前をくれた人たち。どうか巻き込まないように。
じっと座っているだけで涙がこぼれた。




