50.エルエル、教わったことを生かす
五月中旬まで投稿ペースが極端に落ちます。
大変申し訳ない。
今後ともよろしくお願いいたします。
森オーガが百以上暮らしていた。
翌日夜。
再度崖上台地の探索に出たエルエルは、台地の切れ目にたどり着いた。
そこは崖で台地とは切り離されており、多くのオーガが拠点を築いていた。
台地が大きな円として、その中に小さな円の盆地がある。
その小さな円がオーガの拠点になっていたわけだ。
防衛力に長けたいい地形、なのだろうか?
崖上から射撃を受ければやられっぱなしになりそうだ。
外部から見つけられにくいかもしれない。空からでも、真上近くでなければわかりにくいかもしれない。
地上の生き物で、崖を登り降りできない相手なら守りは硬いだろう。
何を仮想敵としているのか。
しかし、オーガたちはさして警戒するでもなく、夜を迎えて大半が眠っていた。
オーガはせいぜい一家族単位で生活を送るのが普通で、こうして大集落を構成することは珍しい、らしい。
気になるのは、転移魔法の起点はこの拠点内ではないことだ。
オーガを転移させているが、別の勢力なのだろうか。
それとも、地下に何かあるのか。
転移が魔法施設に寄るものであれば、これを破壊すれば事が済むうえ、気づかれても術士に逃げられる心配がない。
正確には逃げられても施設を破壊すれば転移攻撃は再現できなくなるだろう。
そうなればエルエルたちの役目は果たせる。
もちろん実際のところは、術士が隠れているだけかもしれない。
結局現場に行ってみないと確定できない。ウィスタの頑張りに期待である。
とはいえ、オーガの拠点は昼に観察してみる価値があるかなと思った。
内側の崖沿いに移動する。
やはりオーガが崖の上に上がってきている様子はないようで、魔植物が繁茂しており、痕跡は見つからなかった。
ざっと見まわした通りの地形で、やはりおおむね円形の大きなくぼみといってよい。
おそらくだが、崖に穴があって外の崖の穴とつながっているのだろう。
ほかにも穴があるかもしれない。というよりあるだろう。崖の下に降りて確認するべきか。
オーガの拠点は邪魔な樹木は排除されていて、崖に穴を掘ってその中で雨風をしのいでいるようだった。
では内縁の空間には何があるのかといえば、例えば大樹の幹を加工したらしいよくわからない構造物。獣や鳥、魔物の頭を模しているようにも見える。精緻とは程遠いが、面影があると表現すべきか。
ほかにはまだ生きている獣が、柵の中に詰め込まれている。恐らくオークに作らせたものだと思われる。これは保存食代わりだろう。人間で言うところの牧場だ。
以前にも見た通り、オーガは生で獣をくらうので調理という概念は不要なのかもしれない。
そして皮の加工。
大型の獣の皮が木枠に張られて風通しの良い場所に置いてあった。乾燥させる工程らしい。
皮の加工方法はそう変わらないようだ。
夜の見張はいないでもない。
だが、緊張感がなく、エルエルが近くを通っても眠そうにあくびをしていた。
近く、戦争を控えているとは思えない。
エルフのようにいつだって立って動けるので余裕があるのか。
それとも、まだそういう予定が立っていないのか。
仮に、ここにいるオーガが百ほどとすると、毎日転移させていれば半年もかからずここからいなくなるだろう。
そんなに暢気にしていられる状況には思えないのだが。
オーガたちは状況の支配権を持っていない?
それどころか状況を認識できていない?
それともエルエルがなにか見落としているのか。
そうでなければ、やはりオーガ、オーク、ゴブリンを支配している存在がいる可能性が濃厚になってくる。
本来争い合うゴブリン、オーク、オーガ。
そのうえ、オーガは大きく群れない。
これを支配する存在がいるとなると。
それがオーガの道士、マギなのか。
あるいはとも別のなにかなのか。
まだ断定できない。
ほかにも問題はある。
崖にある穴が多いため、外につながる穴がどれなのか、調べにくいということだ。
魔法を使えば簡単だが、気づかれる恐れもある。
もっと接近してもわかるだろうが、そうするとかなり臭いのと、それを我慢しても、穴の周辺は森ではないため、深き森のマントが十全に機能しないので気づかれる可能性がなくもない。
時間をかけて観察すればそのうちわかるだろうが、そこに時間をかける価値があるか、判断がつかない。外側の崖を調べるほうが早いかもしれないし、上から穴を掘ってみるのもありだろう。
どちらにしてもいったん広く浅い情報を持ち帰って相談するべきか。
エルエルはキノコに指導された持ち帰って相談を実行することにした。
ついでに毒物を採取した。
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