表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
朱の森のエルエル  作者: ほすてふ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/67

48.エルエル、崖の上

 今のところつけ入る隙がない。

 そう考えたエルエルたちは、どうにか隙を作る手がないか模索することにした。


「まさか俺がすっかり料理担当になっちまうとはねえ」


 グーフゥは本格的にやることが無くなり料理の腕を振るう役になった。

 エルエルは他に進入路がないか、それ以外にも何か手掛かりになりそうなものはないか探すことになった。


 入口が一つとは限らない。

 というよりも、複数あってしかるべき。

 グーフゥの意見だが、防衛拠点には脱出路がつきものなのだそうだ。

 転移攻撃が始まった時期よりも、オークやゴブリンと組んだ時期のほうが先と考えられる。

 であれば、脱出路があるはずだ、と。

 ザッカーの流通を攻撃するなんて作戦を思いつくやつが、そんな基本的なことをおろそかにはしないと。

 それなら、見つけておくべきだろう。

 こちらは通路で本拠点が別にあるかもしれない。

 問題の転移起点は地下なのだから不要かもしれないが、内部にある戦力の見積もりが変わる。


 ウィスタは地下を調べてくれるという。

 穴を掘って。

 問題の場所への直通路が出来れば奇襲できる可能性がある。

 穴を掘って気づかれないかという懸念はあるのだが、うまくやるということなのでうまくやってもらうことになった。

 エルエルも手伝いたいが、地上の探索がエルエルの役目なので手伝えない。

 グーフゥは別の理由で却下された。

 手作業で掘ると音や振動で気付かれるというのだ。

 おかげでグーフゥは料理担当である。

 戦力担当の出番はまだ先のようだ。






 というわけで、エルエルはまず崖上を探索することにした。

 生息する生き物の分布。

 どうやらこのあたりは手つかずに近いようで、人間やオーク、ゴブリン、もちろんオーガの侵入はないようだった。少なくともオーガは確実。オーガの痕跡はあまりにもわかりやすい。

 もしかするとこの断層は台地になっているのかもしれない。登れないなら痕跡がないことに辻褄があうからだ。

 かりにそうであったら、かなり特殊な地形だと思われる。

 何者かの意図を感じる。

 とはいうものの、そのこと自体は今回関係しているかわからない。

 繁茂状態を考えると断層が出来てから十年以上は経過しているだろうから、この地形が生まれた状況と現在の問題が関係していると言い切れない。

 一つ言えるのは、崖上の森でなら気を使わずに食料を確保できそうだということだ。

 肉はともかく、下手に植物を採取すると、オークあたりが巡回でもしていたら見つかりかねないので控えめにしていたのだ。

 連中が崖上を抑えていない理由は気になるが、キノコや植物性の食料が手に入るのは正直嬉しい。

 肉だけではお肉病になってしまう。

 お肉病とは肉が大好きで肉しか食べなかったものがかかる病だ。

 お肉以外も食べないといけない。

 さもなくば見るも無残な死に方をすることになるらしい。

 エルエルは見たことがないが、長老たちが実に悲しそうに言っていた。亡くなったのかと尋ねると、魔法でなんとかしたそうだ。何度も。

 何度もである。

 誰がそうなのかは教えてくれなかった。





 話を戻す。

 魔植物が少々多いが、奴らはきちんと処理すれば年中食べられるのでむしろ都合がよい。

 鳥も多い。

 魔植物の養分にもなっているが、おそらく崖下との移動が魔植物の繁茂で難しくなっていることが原因ではないだろうか。

 大型の獣が縄張りを主張している。魔獣だろうか。

 魔獣と獣の差はあまりない。魔法を使うとか、生存に魔力が必要とか、いろいろ区別の基準があるが、おおむね魔獣のほうが厄介だ。

 そいつは置いておき、ひとまず食……探索を進める。


 地に埋まっている根が食べられる植物があったので掘り出した。

 生でも食べられるが、火を通したがるかもしれない。

 すりおろしてちゅるんと飲みこめて、触感が面白い。


 毒を持つ植物も見かける。

 そもそも毒をもつ植物は多いので、正確に言えば特に危険な毒をもつ植物である。

 調合すればオーガ対策になるかもしれない。

 エルエルの矢ではオーガの皮膚を貫通できないが、目や鼻、口などを毒矢で傷つければ討伐できるのではないだろうか。

 エルエルは毒植物の目星をつけておく。

 今回は食料を持ちかえりたいので手を付けない。

 間違って混ざるといけないので。


 あとは鳥でも撃てば十分だろうか。

 そんなことを考えつつ、一度引き返すことにする。

 グーフゥに食材を渡さなければならない。

 狩りをしないように言ってあるので餓えてしまう。

 魔法で穴を掘っているウィスタもしっかり食べてもらわなければ。


 エルエルは食材を抱えて二人のもとへ帰った。

面白かった、続きが気になると思ったら、いいねと評価をお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[気になる点] お肉病って依存症とかじゃなくて、単に肉の旨さが忘れられなくなっただけでは
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ