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秋桜  作者: 七地
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定例会かお茶会か (1)side:悠

放課後、生徒会室に来た梨桜ちゃんは、持ってきた紙袋を大事そうに机の上に置いた。


生徒会室にいるから伊達メガネを外している。


今日も可愛い。


「何?それ」


「パウンドケーキ。今日は東青の皆が来る日でしょう?お茶の時に出そうと思って焼いて来たの」


にっこり笑った梨桜ちゃん。

彼女が作ったケーキを食べられるなんて今日はツイてる。


「愁君にはお世話になっているし、ケーキが好きだって言っていたから」


爆弾投下したよこの子。


青龍の副総長のためにケーキ焼いてきたのかよ?

拓弥さんも寛貴さんもしかめっ面をしている


「梨桜ちゃん、オレがパイが好きって言ったら作ってくれる?」


拓弥さんが女を口説くときに使う極上の笑みを浮かべながら聞いた


「いいよ、何のパイがいい?」


拓弥さんの顔が明るくなった。

あっさりと笑顔をかわされて、代わりに拓弥さんが笑顔になる。

梨桜ちゃんはなかなか手強いぞ‥


「アップルパイとか」


「今度作ってくるね。今日はミートパイも作って来たの。お口に合うといいんだけど…」


その笑顔の破壊力ハンパねぇ‥タラシの拓弥さんも赤面してるし、寛貴さんも少しの間固まっていた。


「合うに決まってんだろ?この前の調理実習の料理だってすげー美味かった」


「は?」


寛貴さんと拓弥さんがオレを見た。


「調理実習?」


二人の視線が痛かった。

そういえば、この前梨桜ちゃんの作った料理を食べたことをこの二人に言っていなかった。


やべぇ…寛貴さんがすげー睨んでる。


オレ、視線だけで殺されそう…






なのにこの男は‥


「梨桜、甘い‥」


梨桜ちゃんが男のオレ達用にかなり甘さ控えめでケーキを作ってきてくれたのに、宮野は台無しな一言を放った。

もちろん、ケーキは美味い。


「無理に食べなくてもいいのに‥」


普通、そんな事を言われたらへこみそうなのに、宮野の言葉を梨桜ちゃんはさらっと流した。


「ミートパイとって」


自分でとりやがれ宮野!


「はい、どうぞ」


甲斐甲斐しく宮野にミートパイを取り分けてやる梨桜ちゃん。そんなことしてやらなくてもいいのに、梨桜ちゃんは優しい。


「梨桜さん、超美味いです!」


「ありがとう、コジ君」


小嶋に向けられた笑顔がメガネで隠されていることに安心した。

東青の奴らが来るから梨桜ちゃんは拓弥さんからメガネをかけるように言われて今は眼鏡っ子になっている。


「梨桜ちゃんの弟は羨ましいな!旨い飯が食えて」


オレが言うと梨桜ちゃんは笑った。


「そんなことないよ」


「いーや!感謝するべきだね。姉ちゃんありがとう~って」


三浦が笑い出した。ツボにはまったのかやたらと笑っている。


「オレ、梨桜さんみたいな姉ちゃん欲しいです」


小嶋が言いだすと宮野の眉が顰められた。


「私もコジ君みたいな可愛い弟欲しいな」


オレは梨桜ちゃんみたいな彼女が欲しい。


「梨桜、美味かった」


寛貴さんがそう言って席を立った


「寛貴、煙草?オレも行く」


拓弥さんも行ってしまった。

オレも行きたかったけど、こいつらの中に梨桜ちゃんを置いていけないから、小嶋と梨桜ちゃんがきゃいきゃいと話しているのを見ていた

しかし、なんで小嶋は梨桜ちゃんに敬語なんだ?


「後片付けするね」


「手伝います」


梨桜ちゃんの美少女っぷりを尊敬してんのか?イヤイヤ、あの顔はメガネに隠れて見えないはずだ。


そんなことを思っていると


「葵、ついてる」


梨桜ちゃんが宮野の顔に指を持っていった。


これは、あの‥禁断の、口元についたご飯粒を取ってパクッと食べるあれか!?



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