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第29話 海老男、弟子と共にギルド本部へ乗り込む

【お知らせ】投稿ミスについて


いつも『海老男』をお読みいただきありがとうございます!


本日の更新で、誤って2話分を同時に投稿してしまいました。

読者の皆さまには読み進めるタイミングがずれてしまい、ご迷惑をおかけして申し訳ありません。


今後は通常通りのペースで投稿してまいりますので、ご安心ください!

今回の件も含めて、引き続き作品づくりに全力で取り組みます。


これからも『海老男』をどうぞよろしくお願いいたします!


 王都レガリアが目前に迫る。

 馬車の揺れが緩やかになり、窓の外には高い城壁と喧騒に包まれた街並みが広がっていた。


「わあ……!」


 リリアが思わず声を漏らす。

 視線の先では石畳の道が続き、屋台からは活気ある声と香ばしい焼き菓子の匂いが漂ってくる。

 目に映るすべてが新鮮で、夢中で窓の外を眺めていた。


 そんなリリアを横目に、ロブは隣に座るゼランへと視線を移す。


「ところで報酬の話だがな」


 唐突な切り出しに、ゼランが目を細める。


「お前から金の話とは珍しいな」

「今回は俺が受け取る」

「ほう?どういう風の吹き回しだ?」


 ゼランが興味深げに眉を上げる。

 ロブは窓の外に視線を向けたまま、静かに告げる。


「被害が大きかったからな。全額、セイラン村の復興に回してくれ」

「なるほどな」


 ゼランはわずかに口角を上げ、感心したように頷いた。


「お前らしいやり方だ。ギルドとしてもその方が助かる。復興支援は良い看板になるからな」


 そのやり取りを聞いていたリリアが、ぱちぱちと瞬きをした。


「ロブさん……!報酬を全部、村の復興に……?」

「ああ」


 ロブは気負う様子もなく短く答える。

 だがその瞳はまっすぐで、曇りがなかった。


「そ、そんな……ロブさんが盗賊たちをたった一人で倒してくれたのに……!」


 リリアは思わず声を上げるが、ロブは静かに首を振る。


「礼ならお前が立派な冒険者になることで返してくれればいい。期待してるぞ」


 にやりと笑顔を作るロブに、胸が熱くなる。


 その言葉に答えるように、


「はい、師匠!」


 と、リリアは胸を張って力強く頷く。

 その姿を見たゼランが、わずかに笑みを浮かべた。


「可愛い弟子を持ったな、師匠殿」

「まあな」

「か、かわ!?」


 いきなり褒められ、リリアは顔を真っ赤に紅潮させた。


 その様子を見たゼランは苦笑して続ける。


「さて、俺たちはあいつらを王宮まで運ばないといけない」


 ゼランが視線を窓の外へ投げると、護送用の馬車が並走しているのが見えた。

 

 その馬車には、拘束されたエリザとザハルが乗せられている。

 

 護衛の冒険者たちが厳しく周囲を固め、慎重に王宮へ向かっている。


「エリザもザハルも、逃げる気はないだろうが……念のためにな」

「当然だ」


 ロブは短く返しつつ、護送馬車をひとしきり見やった。

 

 エリザは静かに目を閉じ、ザハルは視線を落としたままピクリとも動かない。


「王宮に報告したら魔導公会にも顔を出す。セイランの魔石の件で釘を刺しておかんといかんからな。こっちは任せろ」

「ああ。後は任せた」


 ロブは静かに頷いた。


 そんなやり取りの間にも、馬車はギルド前の広場に到着する。

 堂々たる石造りの建物がそびえ立ち、冒険者たちが活気よく出入りしていた。


「ここが……ギルド……!」


 馬車を降りたリリアが息を呑む。

 その目は輝きに満ちていた。


「行くぞ、リリア」


「はいっ!」


 二人はギルドの重厚な扉の前で足を止めた。


 ロブが手を伸ばし、押し開ける。

 扉の軋む音とともに、中の喧騒が一気に押し寄せてくる。


 冒険者たちが依頼を受け、仲間と談笑し、時に酒を傾ける。

 依頼掲示板には無数の紙が貼られ、誰もが目を凝らして睨んでいる。


(これが、ギルドの中………強そうな人が沢山いる……!)


 リリアが胸を高鳴らせる。

 その瞳は新たな世界への期待で輝いていた。


 ロブが一歩、足を踏み入れると。

 それまで喧騒に満ちていた空気が、わずかにざわめき始める。


「あれ……? 誰だよ、あの男」

「見ない顔だな。いや……待てよ」


 ひそひそと交わされる声。

 視線が徐々にロブへと集まっていく。


「女の子連れてるぜ」

「まさか……海老男じゃねえか?」

「え? あの、滅多に顔を出さないっていう銀獅子の……!」

「セイラン村の紅竜団の件で噂になってるやつだろ。ひとりで幹部を倒したって話じゃないか」

「嘘だろ。紅竜団の幹部って言ったらA級の賞金首ばかりだぞ。何者だあいつ……」


 リリアがその視線に気づき、きょとんとした表情を浮かべる。

 

 しかし周囲の冒険者たちは、リリアではなくロブに視線を釘付けにしていた。


 ロブは気にも留めず、まっすぐ受付に歩み寄る。

 その立ち姿に、冒険者たちが自然と道を開けた。


 カウンターの向こう、美人受付嬢の視線がロブに留まるなり、ぱっと花が咲くような笑顔が浮かぶ。


「ロブさん! お久しぶりです!」


 ロブは飄々とした様子で軽く片手を上げると、親しげに声を返した。


「よう。元気だったか、ミーナ?」


 その一言に、受付嬢ミーナの頬がふわりと緩む。


「もちろんです! ロブさんが無事で何よりです」


 ぱっと明るく答えた彼女の笑顔に、周囲の冒険者たちがざわめきを強めた。


「今日のご用件は?」

「セイラン村の件といえばわかるだろ」


 ロブが短く告げると、ミーナは一瞬目を瞬かせた後、はっとしたように表情を改めた。


「あっ、紅竜団の……! 今度はちゃんと報酬を受け取るんですね?」

「ああ。細かいことは後で話す。それとこいつの登録を頼む」


 ロブがリリアを示すと、ミーナはにこやかに頷いた。

 その豊かな胸元が自然と強調され、リリアの眉がぴくりと跳ね上がる。


(な、なに、この人……!)


 リリアの胸の奥がきゅっと締めつけられる。

 しかも、ミーナのまなざしはどこか親しげで、妙に馴れ馴れしさすら感じさせる。


「まあ! 新しい冒険者さんなんですね。ようこそ、ギルドへ!」

「は、はいっ!」


 リリアが張り切って返事をするが、その目はどこか受付嬢を牽制するように細められていた。


(ロブさんは、わたしの師匠なんだから……!)


 ミーナがロブに微笑むたび、胸の奥でもやもやとした熱が湧き上がる。


 けれど、それでも誇らしかった。

 ロブがこんなにも周囲から一目置かれる存在であることが、何よりも嬉しかった。


「では早速、登録手続きに入りましょう!」


 ミーナの明るい声に促され、リリアは緊張と期待を胸に、一歩踏み出した。



【リリアの妄想ノート】


 今日は、ギルドに来ました! 受付のミーナさん、美人さんだったけど……な、なんか、ロブさんに馴れ馴れしくなかったですか!?


 しかもロブさん、普通に「よう。元気だったか、ミーナ?」なんて……! 


 そ、そんなの親しい証拠じゃないですかっ!!


 ……でも、ミーナさんからも周りからも、ロブさんがすごい人だって伝わってきて。


 なんだか胸がぎゅってして、誇らしいような、くやしいような、不思議な気持ちでした。


 わたしも早く一人前の冒険者になって、ロブさんに胸を張って弟子です!って言えるようにならなきゃっ!


 ……というわけで、ギルド登録がんばります!

 師匠の期待に応えるんだから……ぜったいに!


【作者あとがき】


 ここまでお読みいただき、ありがとうございます!

 王都レガリア到着、そしてついにギルドでの冒険者登録です。


 ざわめくギルド内、ロブの存在感がしっかりと描けてきました。


 リリアがちょっと焼きもちを焼きつつも、師匠としてのロブを誇らしく思うシーン、私もお気に入りです。


 次回はいよいよリリアの登録手続き&ギルド試験へ!

 受付嬢ミーナさんともまだひと波乱ありそう……?


 お楽しみに!


【感想&ブクマのお願い】


いつも応援ありがとうございます!

感想・レビュー・ブックマーク、とても励みになります。


「ここが良かった!」や「このシーン好き!」など、一言でもいただけたら嬉しいです!


引き続き「海老男」をどうぞよろしくお願いいたします!





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