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24 ブロンソンのパーティと合流する


 今回は男装させるべきだったというルーカスにオスカーが思いっきり同意する。

「ああ。前がアレだったから言わずにいたが。失策だった」

「えっと……」

「嬢ちゃんが国王様に見初められた話だろ」

「え」

 一瞬目が合っただけだし、名前を聞かれただけだ。どうしてそうなるのかがまったくわからない。


「ほんと、失礼しちゃうわあ。アタシだって負けないくらいいい女だし、あの人、アタシより年上のくせにアタシを年増だなんて!」

「なんだ、リリーはここの後宮に入りたいのか?」

「ぜんっぜん! まったく!! 入りたくはないわ。けどこれは女のプライドの話なのよ」


「えっと、パーティメンバーとして同行というのは」

「ここに残すと言えば狙われるだろうし、ここを離れると言っても引きとめられると思ったからな。嬢ちゃんの安全のためには同行してもらうのがいいと判断した。勝手に決めて悪かったな」


「最善だと思うよ。他のことは今回のブロンソンさんの依頼の後でも問題ないからね。ジュリアちゃんの安全以上に優先することはないから」

「考えすぎという可能性は……」

「ないな」「ないね」「ないわね」

 オスカーとブロンソン、ルーカス、リリーの声が重なった。


(ちょっと待って。百人以上奥さんがいるのに他の女性に声をかけるなんて、王様元気すぎじゃない?!)

 何代か前だという病弱な王様の時には必要なことだったのかもしれないけれど、今の王様に側室や後宮は要らないと思う。



 すぐに軽装に変えて、何日か外泊できる準備を整える。出る準備ができたら部屋に来るようにと言われていたため、オスカー、ルーカスと一緒にブロンソンの部屋を訪ねる。

「オレのパーティメンバーを紹介しておく。完全に初対面だと不自然だからな」

 部屋の中にはブロンソンとリリー以外に四人いる。夏の時に遠目で見かけた人たちだ。


「すみません、ご迷惑をおかけします」

「うわ、かわいいじゃん。しかもお高くとまってないなんて、ホントに魔法使い?」

「黙れ、カミール。冠位魔法使いのお嬢さんで婚約者もいるんだ。指一本触れたらオレがぶっとばすからな」

「いやブロンソンに殴られたら普通の人間は死ぬからな? それ殺すっていうのと同義な」

「そう捉えて構わん」

「恐ろしいリーダーだ」


 カミールと呼ばれた男が肩をすくめる。声の調子は軽いから、それほど本気ではないだろう。男性の中では細身で、顔つきも体も縦に長めだけれど、オスカーやブロンソンよりは低い。吊り目で、少し軽率そうに見える。


「じゃあ、でしゃばってきたこいつからな。こいつはカミール・スミス。鍵や罠の専門家だ」

「よっしく」

(冒険者のパーティにはそういう人もいるのね)

「といっても、ここ数年オレと行動を共にしてるからな。最低限は動ける。武器種は双剣だ」

「双剣?」

 あまり聞かない名称に、オスカーが尋ね返す。


「ああ。要は二刀流なんだが、一般的なロングソードではなく、ショートソードの二刀流だ」

「狭い場所での立ち回りはそっちのが楽だし、でかいのは扱いきれないんで」

「なるほどな」

 それもおもしろそうだとオスカーの顔に出ている。かわいい。


「こいつはチェイス・ファウラー。弓矢など、遠距離の飛び道具に長けている。カミールと組んで、遠くの罠を解除してもらうことも珍しくない」

「よろしくね」

 中肉中背で特徴が薄い男性だ。フレンドリーな雰囲気があるくらいか。ルーカスの笑顔は時々うさんくさいが、チェイスの笑顔は友好的に見える。


「それから、ニールは戦士だ。ニール・シルバー。オレがつっこんでいくタイプだからな。どっちかというと守りを固めてくれている。オレとの付きあいは一番長いな。武器はグレート・ソードだ」

「よろしく頼む」

 がっちりと鎧を着こんだ、ブロンソンと同年代の男性だ。ブロンソンほどではないにしろ、体格もいい。背には大きな剣を背負っている。


「で、こっちがオレたちのパーティの元からの魔法使い、エルヴィス・ハリソンだ。防御系と補助系の魔法を得意としている」

「よろしくお願いします」

 魔法使いにしてはまじめそうな雰囲気の男性だ。このパーティの中では一番年長で、一番小柄だろうか。


「最後に、リリー・シートン。攻撃系の魔法使いはいなかったからな。パーティの幅が広がって助かっている」

「幅が広がったのは魔法だけじゃないっしょ?」

「紅一点が入りましたからね」

「男ばかりのむさ苦しさから解放されたのは大きいな」

「ちなみに、リリーにも指一本触れたら殴り飛ばすと言って紹介した」

「ホント、物騒なリーダーだよな」


 続いてこちら側の自己紹介を求められる。顔を見合わせて、ルーカスに先手を譲った。この場で何をどこまで話すのかは、ルーカスの出方を見たい。


「ぼくはルーカス・ブレア。戦力としてはまったく期待しないでほしいかな。迷惑はかけないようにするけどね。短い間になるけど、よろしくね」

(なるほど……)

 名前と、一緒に戦う上で必要な情報といった感じだろうか。オスカーと視線を重ねて、オスカーにも順番を譲る。


「オスカー・ウォードだ。戦闘スタイルは魔法剣士。ブロンソン氏には胸を借りるつもりでいる」

「ジュリア・クルスです。……魔法は防御と回復が得意です」

 ウソではない。攻撃魔法も使えるけれど得意だとは思っていない。戦うことになるとつい魔法を使いすぎるから、なるべく戦闘には参加しない方向でいきたい。


「さっき話した通り、ジュリア嬢が王様に目をかけられてしまってな。今回の任務に支障はないと判断し、同行してもらうことにした」

「異議なーし」

「そろそろパーティに若い風が吹いてもいい頃ですしね」

「ちなみに、ジュリアちゃんの婚約者はオスカーだから、二人がいちゃいちゃしてるのを見かけても見なかったことにしてあげてね」

「ちょっ、ルーカスさん?!」

 突然なんてことを言うのか。顔から火が出そうだ。


「だって、往復十日くらいかかるんでしょ? その間ずっと、手もつながないでいられる?」

「……それはすごくさみしいです」

「でしょ? ならちゃんとカミングアウトしておかなきゃね」

「オレのパーティはみんないい歳して独り身だから、いちゃつくのはいいがほどほどにな?」

「わかった」

 オスカーが真剣にうなずく。

 ほどほどにならいちゃついていいというのはどこまでを指すのかがわからない。そんなことを真剣に考えてしまいそうになるのが更に恥ずかしい。


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