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9 まさかのエロジジイ認定を受ける


 オスカーと一緒に老エルフの姿に戻り、エルフの子どもに化けたリンセを連れて、魔法卿の所に戻る。

 作りに行くと言うとソフィアは満足げで、魔法卿は解せないという感じだ。ルーカスから必要に応じて使うように言われた理由を言っておく。


「キレイなお嬢さんの頼みじゃからのう。聞かぬわけにはいくまいのう」

「差別だ……」

「ふふふ。光栄ですわ」


 トラヴィスの空間転移で魔法卿の屋敷に連れて行ってもらう。ソフィアに会う時に来ているから、すっかり勝手知った場所になっているけれど、今日は初めて来たふりをする。

 みんなから預かった模型を、自由に使っていいと言われたエリアの一角に並べる。真ん中が集会所、その周りを円形に小屋が囲むイメージだ。


(まずは私の部屋。プレイ・クレイ)

 実験を兼ねて自分の場所から作ってみる。上から見ると雪だるまに見えるような、ふたつの半球にした。出入り口がリビングエリアで、奥が寝室だ。地下室はリビングからつないで、寝室のドアにはカギをつけるように言われている。

(あのメンバーで何かあるとは思えないし、あのメンバーだと鍵は意味がない気がするけど)

 ルーカスは気持ちの問題だと言っていた。


「本当に簡単に作れるんだな。呪文は聞かない方がいいんだろうが」

「うむ」

 感嘆する魔法卿に鷹揚おうようにうなずいておく。

(ただのプレイ・クレイだけど)

 魔法に慣れるために教わる初級魔法だ。魔法自体が単純なだけに、イメージ通りの形にしたり、大きくしたり、頑丈にしたりするのは難しいらしく、自分のように家を作るのに使うのは聞かない。通常は家の模型までだろう。


 呪文を明かさないのもルーカスに言われたことだ。無詠唱で魔法が使えることは知られているのだから、なるべく隠して神秘的にしておいた方がいいということだった。


(えっと、次はオスカーの部屋ね)

 自分の部屋の隣にオスカー用の建物を作る。配置を決める時に、そこは満場一致だった。オスカーは長方形のワンルームだ。ベッドが置けて、あとは少しトレーニングエリアがあればいいとのことだった。


(それから、ルーカスさん)

 オスカーの隣、自分とは少し離れた場所だ。自分の隣という話もあったけれど、スピラがそれならそこがいいと言って譲らなかったため、オスカーとは反対側の隣はペルペトゥスになった。

 ルーカスの建物が一番複雑だ。やたら出たり引っこんだりしている。中もでっぱりが多く、ルーカスの秘密基地の部屋を彷彿とさせる。模型をよく観察してイメージをしっかり持ってから建てた。


(あと、スピラさん)

 ルーカスの隣、ペルペトゥスとの間にスピラの部屋を建てる。三角柱を横に倒したようなテント形だ。なんとなく落ちつく形なのだそうだ。


(それから、ペルペトゥスさん)

 ペルペトゥスはすぐに模型作りをあきらめて、どうせそこにいることはないだろうから任せると言われた。

 それなら代わりに作ると言ってルーカスが引きうけて、やたら凝ったミニサイズの城のようなものができあがった。イメージはラスボスの城なのだそうだ。他の建物にサイズを合わせたため、実寸になってもミニチュアのようで、むしろかわいい仕上がりになる。


(最後にみんなの集会所)

 そこはシンプルに、円柱に屋根が乗ったようなテント型だ。全員の部屋の方向に5つの扉がついているのが特徴だろうか。


「これでよかろうか」

「おう。最初ので驚いてる場合じゃなかったな……」

「あらあら、ふふふ。ずいぶん凝ったのね」

「興が乗ってしもうたのう」

 ということにしておくように言われている。実際に調子に乗ったのはルーカスだ。


「やっぱり師匠は師匠だな。ここに住む予定の嬢ちゃんにも驚いたが、さすがにここまでのことはできんだろうからな」

(ううっ、すみません、本人です……。しかも住んでから地下にダンジョンを作る予定です……)


「来年また同じ時に同じ場所で師匠に会えたりするか?」

「どうかのう」

「ソフィアの頼みは簡単に聞いてくれたのに、俺はダメなのか……」

 残念がられても、来年の今ごろどうしているかは自分にもわからない。自由に動けるかどうか以前に、世界の摂理に違う次元につれていかれて音信不通になっている可能性すらある。


「ふふ。なら、私にこっそり連絡方法を教えてもらうのはどうかしら? もちろん、お返事はお師匠様のご都合がいい時に、ムリなくで構わないわ」

「ふむ……」

 ソフィアの提案を考えてみる。ソフィアは自分の正体を知っているから、いつでも連絡が取れるのだ。内容的に対応してもいいと思う時にだけソフィアに返事をすればいいならアリだろう。


「それならよかろう」

「師匠?!」

「……キレイなお嬢さんの頼みじゃからのう。聞かぬわけにはいくまいのう」

「まさか師匠がエロジジイだったとは……」

「ブフォッ」

 隣のオスカーがかつてない吹きだしかたをした。

「失礼」

 言って反対を向くけれど、肩が小刻みに震えている。ツボにハマったらしい。

(中身、私だものね……)


「ソフィア嬢と我が眷属けんぞくのみ、ついてくるがよい」

 がんばって偉そうに言って、集会所スペースに入る。ソフィア、オスカー、リンセが後ろに従って、扉を閉めたとたんにソフィアも笑いだした。

「ふふ、あはは。ほんと、おもしろかったわ」


「エロジジイって言われたのは生まれて初めてです……」

「一生、魔法卿以外から言われることはないだろうな」

「おもしろいから後でまた少しからかっておくニャ」

 リンセが笑いながらイタズラを提案してくる。聞いた内容はいいことで、ソフィアが嬉しそうだから、ここを出たら帰る前にやることにした。


「ふふ。前も言ったけれど、ほんとに感謝してるのよ? 去年あなたに会ってから、あの人変わったから。私に対してもそうだけど、楽しそうにもなったのよね」

「楽しそう?」

「もう一生、誰かから魔法を教わる機会なんてないと思っていたのでしょうね。視野が広がったし、今朝は子どもみたいにワクワクしていたわ。だから、あなたにムリがない範囲で、気が向いたら相手をしてあげてもらえると嬉しいわ」


「わかりました。私は私でお世話になるので、できる範囲で恩返しをしますね」

「ええ、ふふ。やっぱり私はあなたが好きだわ」

「えっと、ありがとうございます?」

 話がまとまったところで建物を出る。トラヴィスと待っていた魔法卿がものすごく不機嫌だ。


「この場合、俺はどっちに妬けばいいんだ?」

「ふふ。どうかしら?」

「エーブラム。何かあればソフィア嬢から連絡してくるがよい。それと……、もしソフィア嬢を泣かせたら、わしが連れ去るから覚えておくように」

 後半を言う間にリンセが魔法を調整して、老エルフの姿を若返らせていく。若くて美しい青年姿で言った方が危機感があるだろうとのことだった。


「なっ……」

「……さて、山に帰してもらおうかのう」

 続けた時にはもう手の感じが老エルフに戻っている。ソフィアは上機嫌で、魔法卿は固まっている。

 トラヴィスが苦笑しつつ手を差しだしてきた。魔力は回復液で回復したようで、帰りのための魔力回復液も用意済のようだ。


(ごめんなさい、トラヴィスさん。いつもお手間をおかけしてます)

 毎度がぶがぶ魔力回復液を飲ませて申し訳ないと思いつつ、クロノハック山まで送ってもらう。


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