イケメンも 歳をとったら みなおなじ
「まーるまるまる!独占欲丸出しねえ!」
「うわ、なんかでた」
下校途中に電柱の影から現れた、ハゲのおっさんは確実に不審者だった。
なんかすらっとしてるし、無駄に身なりがいいひ、ホリが深い美形なのが、普通に余計こわい。
俺は即座にスマホを取り出そうとし──
「ふんっ!」
「なにを!?」
おっさんにスマホを取り上げられる。
まいった。普通に危険が身に迫ってる。しかしながら、俺という男は生存本能の塊なので、とりあえずおっさんの金的を蹴り上げる。
「うえ」
超いやな感触がした。なんかこう、すげえヌルッとしている。
「独占欲はねっとりしているから当然なのだ」
「さっきから何言ってんだこいつ」
「ちなみに、おじさんがねっとりしてるのは、おじさんだからだぞ。汗腺が閉じてる」
「たんにきもいおっさんじゃねえか!」
キモいおっさんは、何かを憂うように首を横に振った。
「おじさんの話、聞いてくれるかい」
「俺じゃなくて、お巡りさんがこのあと聞いてくれるだろ」
「ありがとう。おじさんはね」
「人の話を聞くつもりが欠片もねえじゃねえか!!!!」
「おじさんは、話したいだけであって、会話がしたいわけじゃないんだ。そんなことも分からないなんて、最近の若者は」
おじさんであっても、普通に会話はできて然るべきだろ。
「おじさんはね。昔はおじさんじゃなかったんだ。おじさんは昔、若いイケメンおじさんだったんだけどね。若いイケメンおじさんは、若いゆえに顔の脂がすごかったんだ。知ってるかい?10代で顔にできるブツブツはニキビだけど、おじさんになってからできるブツブツは吹き出物だし、ある程度のおじさんを超えてくると肌にある日ブツブツができると癌とかなんらかの病気の可能性がよぎって怖くなるんだ。というか、なんでおじさんって、毎日洗顔しても顔にブツブツできたりするんだろうね。毎日2回は顔洗ってるのに……。化粧水とかおじさんが塗ってるわけないだろ、おじさんが化粧水買いに行ったら若い子からどんな目で見られるか心配になるから。それでさ、イケメンの俺はある日考えたんだよ。顔にベビーパウダーを塗ればさらさらイケメンになれるんじゃないかって。それで結果はこれなんだけどね。学生さんや……肌をいじなら若いうちだよ。おじさんになったら、若者の文化がわけわからなくなって、新しいことをできなくなるから。おじさんもかつては独占欲と執着心むき出しのイケメンということで名が売れてたけど、おじさんになって独占欲と執着心むき出してたら、心臓麻痺になるからね。血圧も上がるし髪の毛も抜け出し。だからあおまわりさんお疲れ様です、手錠なしでもいいですよ、全然ついていきますから




