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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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グンジン

「ロップは初めから俺に親切だったよね?」


「はい。女の子かと思ったのと獣人は他の受付嬢に浮気しないので」


確かに顔見知りの所にしか行かないな俺。


「ポンタくん、今度の休みに聖剣の所に連れてってあげるよ」


「いいの?もしかして西側?」


「そう。街を出たすぐのところ」


「街を出るのか…」


「もしかして怖いの?」


「いや、俺は人族の男からモテるんだよね。声掛けられたり、触られたり、絡まれたりとか。こっちは一度大きな騒動があったからそんな事はないんだけど、西側は衛兵も顔見知りじゃないからレッキスに迷惑を掛けるかもしんない」 


「あー、バチ騒動がありましたよね」


と、ロップが笑う。


「そうそう、あれ。俺一人ならなんとなるとは思うんだけど、レッキスが一緒だと危ないんじゃなかろうかって」 


「それなら大丈夫よ。西側は強い冒険者も多いし、顔見知りも多いから」


「そう?ならお願いしようかな」


「じゃあ、デートだから何かご馳走してね」


「あ、はい」



ふと通信機に着信があることに気付いた。


「ちょっとごめん」


誰から確認するとランガスからだった。


良かった無事で。


カタカタカタとプリントアウトをする。


〜ポンタへ〜

連絡が遅くなってスマン。聖エルイムに依頼で行っていた。聖なる杖を抜けるか試して欲しいとの依頼でな。まぁ、当然無理だったから無駄骨だ。それにまた聖エルイムにトンボ帰りになるハメになった。来月にはコディアを出るから心配すんな。


内容はこんな感じだった。


すぐに返事を書く。



〜ランガスへ〜

無事で良かった。聖エルイムに行くならラメリアまで遊びにきませんか?エルイムからラメリアに船が出ているようなのでズーランダを経由せずに来れます。港はラメリア王都の隣にあるので、到着したら近いよ。


これで送信だ。



「ズーランダの恋人からですか?」


「いや、コディアの冒険者。俺を育ててくれた人だよ」


「随分と嬉しそうな顔をしてますね?まるで恋人からラブレターが届いたような顔をしてますよ」


そうロップに言われて赤くなってしまった。確かに物凄く嬉しかったのだ。


「へぇ、ポンタくん女っ気ないと思ったらそっちの人?」


「違うよっ。俺は嫁探しにラメリアに来たのっ」


「その割には女の子に声掛けたりしてないよね?人族で探してるの?それとも犬族?」


「どっちでもいいんだけどね。ズーランダにも犬族は居たんだけど俺には合わなさそうで…」


パグブルばっかりだったからな。


「ポンタさんの恋人みたいな人はズーランダにいるんですよね?」


「恋人というより好きな人ね。身元引受人にもなれたからいつでも来てねと言ったんだけど、バタバタしててしばらく来ないみたい。来たら紹介するよ。優しくて背が高くて強くてスタイル良くて美人だから驚くぞ」


「そんな人に振られたんですか?」


ロップは聞きにくいことをズバッと聞いてくるよな。


「その人は俺とは種族が違うんだよ。ヒョウ族だからね」


「なら、もうその人はヒョウ族のいい人が出来たんじゃない?」


レッキスも心をえぐるような事を言う。


「そうかもね。でもその方がいいんだよ。俺とは子供も出来ないし」


レッキスはいらぬことを言うなとロップから肘打ちを食らっていた。いや、どっちもどっちだぞ。



ゴンゴンっ


えらい勢いのノックだな。


まぁ、変な雰囲気になってからちょうどいいわ。


「はーい」


「看板を付けにきてやったぞ…、お前、女みたいな顔してるくせに手が早ぇな」


ロップ達の事を見てそういう親方。


「違うわっ。二人は酔い潰れて泊まっただけだよ」


「まぁ何でもいいわい。屋号が決まっていないなら看板だけ置いてくが」


「いや決まってるよ。ケモミミポーション」


「は?」


商人ギルドでした説明をしておいた。絵師も連れてきているから看板を描いてもらえとのこと。



「なるほどなるほど、ちゃんと獣人が経営していると言うことを伝えるためなんですね」


「そうです」 


「何かマークを決めておられますか?」


「いや、決めてないよ」


「ではこんなのはどうでしょう?」


と、肉球マークの親指と小指の所がケモミミになっているマーク。そこから尻尾が生えているのだ。なかなかわかりやすくて宜しい。


「じゃあそれでお願いします」


頭の部分にマークを描いて、その後ろにケモミミポーションの文字をファンシーな感じのフォントで書いていく。最後の文字がそのまま尻尾になるように描いてくれた。この人センスいいな。すぐに思いついて描けるのか。


後は黒板みたいな物を用意してくれていて、店頭に飾るメニュー表を書いてくれるとのこと。取り敢えず値段は空けておいて、取り扱い予定のアイテム名だけ書いてもらった。


「以上でよろしいですか?」


「ありがとうございます。料金はいくらですか?」


「すでに頂いております」


「工事費の中に含まれておる。取り付けはワシがやるから手伝え」


そして看板が取り付けられて店って感じがした。店内に商人ギルドの許可証を額縁にいれて完成だ。


「昨日はごちそうになったな。旨かったぞ」


「こっちも早くに仕上げてくれてありがとう。これお土産に持って帰って」


と、ゴールドとダークの瓶を渡しておいた。


「いいのか?」


「いいよ」


「次からはちゃんと買うぞ。これはいくらで売るんだ?」


「1本10万Gだよ」


「そんなにすんのかっ」


「これはここでしか手に入らないお酒だからね。旨かったろ?」


「確かに。ガッツリ強いのにちゃんと風味もありやがる。確かにそれぐらいしてもおかしくねぇかもしれん。昨日はガバガバ飲んじまったがよ」


「うちに遊びに来たらまたガバガバ飲んでって」


困ったことがあれば何でも言えと嬉しそうに帰っていった。


「ポンタくん、気難しい人の扱い上手いねぇ。ギルドの受付やれば?」


「やだよ。相手すんのほとんどむさい男ばっかりじゃないか」


「そんなの好きそうじゃない」 


違うわ。


ラビッツ達が帰った直後に馬車が来た。この音はヴォルフのところのだな。忘れ物でも…、いやプーアンの馬車と他の馬車も来たぞ。



馬車はここで停らずに手前の物件前で止まった。


従者たちが降りてきた後にヴォルフ達も降りてきて建物の中に入っていった。もう購入して引き渡しか。行動が早いなヴォルフ。


商談はすでにまとまっていたようで、見知らぬ馬車は帰っていった。


「ポンタ、隣の物件は軍の物品を売る店となる」


「え?」


「次回からポーションの納入は隣にしてくれればよい。声を掛けたら部下が取りにくるから楽だろう」


「それはいいですけど」


「閣下、我々はこちらに取りに伺えば宜しいのでしょうか」


「こいつがポンタだ。正式にはまだであるが貴様達の上官にあたると思え」


「ハッ」


上官?


「ヴォルフ伯爵、どういうこと?」


「ノーズと呼べと言っただろう」


あんなに酔ってたのに覚えてんのかよ。


「今は公務中なのでダメです。それと上官にあたるとはどういう意味ですか?」


「ポンタは非常勤の補佐部隊隊長という名目にする。まぁ、要するに保存魔法の資格が取れた暁にはポーションの納入を正式にするということだ」


「いいんですか?今までの納入業者とか困るんじゃないですか?」


「必要な時に必要な数を納入出来なかったのが悪いのだ。いざ実戦になれば間に合いませんでしたと言って済まされるものではないからな」


まさか無茶な発注を掛けてたんじゃなかろうな?


「俺のポーションの効能検証とかされたんですか?」


「回復ドリンクは私が試した。ポーションは部下を斬って試したから大丈夫だ」


なんてことをするのだあなたは。


「そんな試し方はやめて下さいよ」 


「予備のポーションも準備してあったから問題はない。兵士には斬られても戦う経験が必要なのだ。どうしても初めて斬られた時は動揺する。そこで怯えたり怯むと死に直結する。斬られ慣れという言葉があってだな」


酷い言葉だ。


「それと…」


「それと?」


「あれは本当に中級ポーションか?」


あ、薄めるの忘れてた。


「すいません。次からは効能を基準に合わせます」


「いや、そういうことではない。ほぼ上級ポーション並の治り方をした。あれを中級ポーションとして売るのか?」


「いえ、通常販売分は効能を落とすつもりです。値段も効能も他の所に合わせないと宜しくないかと。他のポーションとの差別化は味にするつもりです」


「なるほどな。一日に化け物じみた数を作れて効能も高すぎれば他の有資格への影響が大きいか」


「はい。獣人の作ったポーションは信用がないと言われたことがありますので、味で勝負するつもりです」


「軍への納入分は今回の効能でいけるか?」


「問題ありません。内緒にしていてくれれば済む話なので」


「では、それで頼む。ポーションの大量発注は保存魔法の資格を取れてからになるが良いか?」


「回復ドリンクは問題ないのですよね?」


「あれは大丈夫だ。ただ、私の分は昨夜の瓶詰めにしておいてくれ」


「かしこまりました」


これは一般のと軍用の瓶を分けないと間違えそうだな。ジョージの所で別注で頼むか。


「ポンタ隊長。私は小隊長をしておりますガードと申します。商品の受け取りやこちらの安全は我々が守りますので何かございましたらご命令下さい」


「宜しくお願いします。ガードさんはボーダーテリア族?」


「さすが博識でいらっゃいます。初対面で種族をご存知の方に初めてお会いしました。民間向けの店舗へ配属されるのは見た目に威圧感のない者中心になっておりますが強さは兼ねておりますのでご安心下さい」


ちゃんと考えてくれてるんだな。


「店は何を売るの?」


「演習や野営などで使える物が中心になります。軍からの払い下げ品も扱う予定ですので安価なものから高価なものまで扱います」


「西側にある冒険者向けみたいな店?」


「近しい物があると思います。それとお言葉ではございますが我々の事は呼び捨てでお願い致します」


隣にミリタリーショップが出来るのか。店が出来たら見に行こう。それに隣にそんな店側あったらポーションを必要とする客層も増えそうだ。


「閣下、あの服は発注するの?」


「当然だ。お前の洗い替えも発注する。貴族街に来るときは身に付けてこい。それで安全が担保出来るだろう」


貴族街なんてそうそう行かないけどね。


一応服屋には軍から発注があるかもしれないと伝えてあると言ったら仕事が早いと褒められた。言われる前に行動するのは良い軍人の証拠だって。いや、軍人じゃないし…


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