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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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軍人

「いくつか質問をする」


「はいどうぞ」 


「スタローン家とはどうして繋がった?」 


「スタローン家ではなく、教授個人との繋がりです。自分はポーションの有資格者でもありますのでラメリアでの資格取得の際にお世話になりました」


「なるほど。他に繋がりのある貴族はいるか?」


「プーアン・ロテリー男爵にはお世話になっております」


「ロテリー男爵?」


「それは私から説明いたしましょう」 


シルベルトは魔女の森のことを説明した。


「あそこの問題が解決したのか?」


「はい、ポンタの店も完成いたしましたのでそこが問題ないと分かれば不良物件街も活気が出てくると思われます」


「そのことは他の貴族は知っているか?」


「いえ、物件の価値が大きく変わりますのでプーアン男爵もどこにも知らせておりません」


「その情報がスタローン家からの手土産か?」


「はい」


「随分と大きな手土産だな」


「ポンタを守らねばなりませんので伯爵様にもお手伝いを頂ければと」


「随分と入れ込んだのだな?」


「ポンタは守らねばならぬ存在だと確信しております。きっとラメリアの財産になるでしょう」


「ほう… ポンタ、お前はポーションを作れるのだな?」


「はい。保存魔法の資格の事を知らなかったので販売するに至ってはおりませんが保存魔法も使えます」


「どれぐらい持つ予定だ?」


「一年は保存可能です。なので結果検証は来年の今頃になりますね」


「一年か、それは貴重だ。中級は作れるのか?」


「はい」


「日にどれぐらい作れる?3本か5本か」


え?


そんな少ない数を聞かれるの?とシルベルトの顔を見る。


「ポンタ、正直に答えていい」


そうなんだ。


「100でも200でも大丈夫ですよ」 


「なんだとっ?」


「伯爵様、ポンタは上級も作れます。上級の数は限られておりますが」

 

とシルべルトは少し濁した。


「お前が守らねばと言った意味はそのことか?」


「はい」


本当は最上級でもフルポーションでもいくらでも作れるけどね。


「保存期間のことは本当なのだな?」


「検証は終わっておりませんが恐らく大丈夫かと」


「わかった。軍から発注を寄こせば期間内に用意出来るか?」


「どれぐらいの数ですかね?ポーションは大丈夫なんですけど、瓶の在庫に問題が出てくるかもしれません」


「空き瓶を回せば可能か?」


「すぐにお使いですか?」


「実践で使うのは長期保存の物が必要だが訓練で使うものはそこまで長く持たなくて良いのだ」


「では初級ポーションですね?そんなに怪我をする訓練なんですね」


「怪我もあるし体力回復のこともあるのだ。体力回復をしながら訓練をすればより多く鍛えられるからな」


「なら、初級ポーションまで必要ないですね。回復ポーションを樽で卸しましょうか?へばったらコップで飲んで貰えればその日の疲れは取れて回復します。怪我は治りませんけど」


「そんなポーションがあるのか?」


「はい、これから販売予定です。専用の瓶を作ってもらっているのでそれ待ちです。ただ…」


「ただなんだ?」


「店を作ってくれている大工が24時間3交代で工事をしてくれていたので回復ドリンクを差し入れたら交代せずに24時間労働をしまして、回復ドリンク中毒みたいになったんですよ。どうやら過渡の睡眠不足でドリンクを飲み続けないとダメになるまでやったみたいで」


「24時間大工仕事をしていただと?」


「はい、多分3日間くらい続けて。今頃死んだように寝ているんじゃないですかね?」


「それはいくらで売るつもりだ?」


「ポーションより少し内容量が多いぐらいで、中身だけだと500Gです。瓶付きなら1000Gを予定しています。販売予定の物は味付けしますので味付けなしだともう少し値段を下げられます」


「一樽で10万Gくらいか?」


「樽代込みなら。樽の交換で良ければ7万Gくらいですかね?樽だと一週間ぐらいで飲み切ってしまわないとダメですけど」


「ここまで納品は出来るか?」


「出来れば商人か誰かを手配してもらえると嬉しいです。一人でやる個人店なので」


「分かった。明日取りに行かせるのは可能か?」


「一樽程度でしたら」


取り敢えず回復ドリンクを軍で仕入れてくれるようだ。これは幸先が良い。


「カードでの支払いは可能か?」


「まだ現金のみです。魔導具工房の人に作っでもらいますのでそれまでは現金でお願いします」


その後、酒の話になる。


「これはズーランダの酒ということはサトウキビ酒だな?」


「はい」


「あれは無色でただアルコールが強いだけの酒だと思っていたが?」


「これは特別製です。少々癖がありますけど気に入らないならお菓子の香り付け等にお使いください。アルコール度数が高いので水で半分くらいまで薄めていただくと他の蒸留酒と同じぐらいになると思います」


伯爵は瓶の蓋を開けて香りを確かめる。


「いま味見をしてよいか?」


「どうぞ」


使用人を呼び、グラスと氷と水を持ってこさせた。しかも3人分。


まずは何も入れずに味を試す伯爵


「かなりキツイな。しかし、独特の甘い風味がある酒だな」


次に氷、水と入れて味を確かめる。


「これは驚いた。あの酒がこのように旨くなるのか」


ダークラムはそれに香ばしさとスモーキーな香りが混じり、コクをより強く感じるらしい。


「かなり飲める口なんですね」


「そうだな。食べ物と酒の組合せを楽しむのは好きだ。お菓子とお茶の組合せもな」


「おつまみ出しましょうか?」


「持ち歩いているのか?」


「このお酒も販売予定にしています。そこそこ高い値段で販売するので試飲してもらったときに必要かなと」


ここで出すつもりはなかったのだが成り行きだ。


おつまみ2種。甘いおつまみはパンに黒蜜を染み込ませて乾燥させたもの。例えるならかりんとうみたいなものだ。しょっぱい系はチーズをハムで包んだもの。


「うむ、甘いおつまみとは驚きだ。黒い方の酒とよく合う」


「食事が終わった後にまったりとする時間に良いかなと思います」


「ハムは自作か?」


「はい、オーク肉をズーランダ産の岩塩と生胡椒に漬け込んだ後に燻製にしました。ズーランダ産のまろやかな味の岩塩と爽やかな胡椒の風味が薫香に負けずに残るので自分も好きなんです。豚肉を使うと獣臭が気になるのでオーク肉を使ってます」


「なるほど、ハンプシャー家の御婦人が肩入れするわけだな」


「あの奥様、甘いものお好きですよね」


「あちらでは甘い物を作ったのか?」


「はい。伯爵様にもご機会がございましたらお作り致しますよ」


「それは楽しみにしておこう。では最後にもう一つ」


「はい」


「その服はなんだ?」


「これは伯爵様にお会いするのに作りました。自分は小さいので既製服は女物か子供服しかありません。それと伯爵様とお会いするのに失礼の無い服と考えた結果、軍服にも見える正装が良いのではとこれを作ってもらったんです。手違いで白色になってしまいましたが」


「いや、実に良い。隊長クラスの儀式服に良いかもしれんな。襟に階級や武勲を示す物を取付られるように出来ているではないか」


ここには校章をつけるんだけどね。


「この服を軍で採用されてしまうともう自分は着れませんね。結構高かったんですけど」


「そうか、それはいい。軍で採用した暁にはお前にも着用許可を与える。ならば身を守るにも一役買うだろう。実に良い考えだ」


「これを作った服屋さんはこれを売り出すつもりなんですよ」


「ならばこちらからそこへ発注をかけよう。市井で売れるのを待つより良いのではないか?」


確かにこの服を着た人が増えたら目立たなくなるとは思ったけど、俺が望んだのはこっちじゃない。そんな事をしたら軍人扱いされるだろうが。


伯爵はご機嫌になり、軍の訓練を見せてやろうと連れ出されてしまった。酔ってんじゃないだろうな?


馬車で移動して貴族街を出て街からも出る。そこから森の方へむかった所に訓練施設があった。



「人数が多いですね」


「王都防衛の要の部隊であるからな。ほぼ犬族で構成されている」


同じ種族で構成してあるのか。シェパード、ドーベルマン、テリア系、コリー系かな?訓練された兵の統率力が高いからこの部隊と戦える種族は少ないだろう。


実際の犬とは違うから剣や槍を使っている人もいるがみなスピードが早い。連携されたら相手はどうやって戦うのだろう?


「もし、この部隊がズーランダに戦争を仕掛けたらどうなると思う?」


「えっ?」


「例えばの話だ」


「そうですね、魔法なしで来るならズーランダにも勝算があると思います。個の力では犬族に勝る種族も多いですから」


「ほう、この訓練を見てまだ勝ち目があると思うか?」


「はい。犬族の強さは集団による統率力ですから、そこを潰して個の戦いに持ち込めればなんとか。侵略戦は難しいですけど、防衛戦はなんとかなると思います」


「お前がズーランダ側に付いたらの話だなそれは」


「そうですかね?なんとかなると思いますよ。まぁ、戦争のタラレバ話は意味ないですよ。争う必要も理由もありません」


「胡椒や岩塩を奪いに行くとは考えなかったのか?」


「人の命の方が大切です。お互いの人命に被害が出るならそんなもん渡せばいいんですよ」


「そう思うか?」


「獣なら欲しい物を奪うかもしれませんが獣人や人族には知恵があります。仮に武力でそれを奪ってもその場限りです。生産者が死ねば胡椒も枯渇してなくなります。それより仲良くしておいてずっと供給される方がいいんじゃないですかね」


「そうだな。お前の言う通りだ。他の領主達もお前ぐらい知恵があればこのような厳しい訓練も必要ないのだがな」


ヴォルフは訓練をしている兵を見ながらそう言ったのであった。




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