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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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ラムネ瓶

ブクマ、評価、いいね等を頂いている読書様ありがとうございます。お読み下さっている方の反応を頂けるのが書く励みになっております。

今日来ているのは瓶工房。


「特注品を作れだと?」


「うん。2種類あるんだけど、一つは難しいかもしれない」


「は?ラメリア王都の瓶職人舐めんなよ。獣人の職人と同じように考えてもらっちゃ困んだよ」


受付けてくれた人も職人なのだろう。口が悪くて威勢がいいや。


「なら良かったよ。一つはこんな感じのやつでね、もう一つはこんなやつなんだよ」


紙を貰って図に描いてみる。


「は?瓶の中にガラスの玉を入れろだと?」


「そう。出来ればここをネジ式にして欲しいんだよ。で、ここにゴムをこうはめてね。ゴムが難しければコルクでもいいんだけど」


「ガラスをネジみたいにしろってか?出来たとしても割れるだろうが?」


「ほら出来ないじゃん。嘘つき」


「何だとてめぇっ。こんなもんを作れる奴がいるかってんだ」


頼んだのはラムネ瓶だ。元の世界で炭酸ドリンクの気が抜けないようにしてあった昔からあるもの。王冠タイプのも考えたが、王冠をはめる為の道具がどんなのか知らない。アルミもないから鉄でスクリューキャップも難しい。作れてもサビが出るからな。


「現物があったら信じる?」


「あるならみせろっ」


実はここに来る前にポイントでラムネを交換したのだ。瓶は昔ながらのタイプで上部が逆ネジになってガラス玉を取り出せるタイプ。ゴムの取り付けの事を考えるとこれが一番いいと思う。


「何だこの瓶は…」


「ほらあるだろ?まだ中身が入ってるからどう使うか見せてやるよ。氷はここにもある?」


「魔導具があるからあるぞ。ガラス工房は暑いからな」


そうだろうね。向こうに見えてる工房からここまで熱を感じるぐらいだから相当あそこは暑いだろう。俺なら死ねる。


バケツに氷と水を入れてもらいしばし冷やす。


「あと、こっちのもネジ式の蓋か?コルク栓じゃダメなのか?」


「別にコルクでもいいんだけど、単価の高い物を入れるから高級に見えた方がいいかなって」


「なんだそりゃ?」


「ガラス職人は腕に火傷とかするだろ?」


「火傷はガラス職人には付き物だからな」


「それを治すポーションを入れるんだよ。塗るポーションってやつでね、普通のポーションなら初級でも飲みきりで一回しか使えないから少々の火傷なら我慢するだろ?」


「ポーションは高ぇからな」


「塗るポーションなら火傷した所に塗る分しか使わないから使用量が少ない。しかも封を開けても一ヶ月くらい使えるから経済的」


「そんなポーション聞いたことねぇぞ」


「これから製造販売するものだからね。いま頼んだのはその為の容器」


「まさかお前ポーションの有資格者か?」


「そう。薬師錬金ギルドで一番腕のいい工房を紹介してと言ったらここを紹介されたんだ」


一番腕のいい工房と言われて嬉しそうだ。


「そんなら早く言えよへへっ。なんとかしてみせらぁ」


うむ、獣人みたいに単純で宜しい。


「しかし、塗るポーションなんか本当に作れるのか?」


「作ってあるやつがあるから試してみる?大瓶に入れてあるから」


そういうと話をしていた職人が工房に行きさっき火傷したやつを連れてきた。


「こいつで試してみてくれ」


「触ると痛いと思うけど我慢してね」


「やるならさっさとやれ。俺は忙しいんだ」


この職人、獣度は低いけど獣人だな。ゴードンと同じようにハーフとかかもしれない。


水ぶくれが潰れて痛そうな所にポーションをペちょっと塗ってやる。ウッとか言ったけど痛がる様子は見せなかった。


「どう?」


「ん?………」


しばし待つと赤い火傷が薄くなっていき治った。


「今塗ったのはなんだ?」


「塗るポーション。これから売るつもりの商品だよ。その為の容器を発注しにきたんだ」


「どんなのだ。その紙を見せろ」


ばっ、と作って欲しいものを描いた紙をひったくる。


「ネジ式の瓶だと?」


「そう。ガラス玉は作れるだろ?この瓶は作れそう?」


「俺様がやってやる」


「ジョージ、お前がこれを担当するのか?」


「なかなかやりがいのある仕事だ。普通の瓶作りにゃ飽きてたところだからな」


そうニヤッと笑った。


「そこにあるのはサンプルか?」


「そう。他の職人が作ったやつだけどね」


見せろとまたひったくる。そういう取り方は良くないよ。


明かりに透かせてマジマジと瓶を見る。


「うーむ、見事だ。気泡1つない透明感のあるガラスか…」


「もう冷えたから飲んでみようか?」


「これはどうやってガラス玉を浮かせている?」


「ビールとかシュワシュワするだろ?この飲み物もそうなんだ。そのシュワシュワの力が玉を押し上げて蓋をしているんだよ」


「開けてみてくれ」


「これの開け方はこの玉を指でこうぐいっと… ぐいっと…」


ダメだ。俺の指の力では玉が落ちない。専用の玉を落とす奴がなければ無理だな。


「こいつを押すだけでいいのか?」


「そう。でもそうっとね。勢いよく落としたら中身が吹き出してこぼれてなくなるよ」


ジョージと呼ばれた男は難なく指で玉を落とした。少し吹いたけどよく冷やしてあったから問題なし。


飲んでいいか?と聞くのでどうぞと言った。


「ん?ガラス玉が口を塞ぎやがるぞ」


「この凹んだ所に玉が落ちて来ないように引っ掛けて飲むんだよ」


「こんな綺麗な瓶がなぜいびつなのか不思議に思ってたがそのためか。なるほど」


そして飲み干してしまった。受付をしてくれていた人がなに全部飲んでんだテメーとか怒ってた。1本150ポイントなのでお代わりはあげない。


「ビールよりシュワシュワが強くて甘くて旨い。これも作るのか?」


「今のはなんの効能もないドリンク。俺が作るのは疲れた時に美味しく飲んで体力が回復するドリンクを予定しているんだ」


「ほう、それはすぐに作れるのか?」


「今試したい?俺もまだどれぐらいシュワシュワ、これは炭酸っていうんだけど強く出来るか試してないんだよ。どこか個室を貸してくれたら素材は持ってるから今作ってみるけど」


製法は秘密だからと言うと違う部屋を使わせてくれた。


軽く瓶を洗って、冷水にクエン酸を溶かしてほんの一滴フルポーションを垂らす。かなり効能は高いだろうけどこれ以上無理だ。大量に作る時に調整しよう。


コーンシロップを入れて味付。酸味を付ける為にクエン酸の割合は増やしてある。


ここに重曹を入れてえいっ


ラムネ瓶をひっくり返してしばし待つと見事に玉が蓋をした。中では気泡がブクブクとでてやがて収まっていく。


「お待たせ。冷やしてから飲もう」 


試作品が冷えるまで少し話すことに。


「お前名前は?」


「ポンタ。ちなみに男だよ」


「そんなこと言われなくてもわかる」


ジョージがそういうと、受け付けてくれた人はえっ?とか驚いていた。ジョージがすぐにわかったということは犬系なのだろう。


「日頃は何作ってんの?」


「ポーション瓶だ。そろそろ違うのを作りたいとは思ってたところだ」


「そうなんだ。工房って暑そうだね」


「俺は汗かかねぇから辛くはあるが暑いのは慣れてる」


「今から飲んでもらうのはポーションほど効き目はないけど疲れが取れるドリンク。試作品だから効能が強いとは思うけど、販売するときにはもっと効能を落として気軽に飲める料金にしたいんだ。まぁ、瓶の仕入額にもよるんだけどね」


「いくらぐらいにしたいんだ?」


「1本1000Gくらいかなぁ。そこに瓶代を入れないとダメだね。何度も使える瓶なら瓶を返してくれたら瓶代返金してもいいかなと思ってる」


「瓶で儲けようってわけじゃないんだな?」


「そうだね。瓶を売るわけじゃないから」


中身はもっと安くてもいいけど、売れ過ぎたら作るのが大変だ。


そして冷えたのを確認して試し飲み。


「おっ、ポーションみたいなものだと言ってたから渋いかと思ったがさっきのとに似た味だ。これで疲れが………、取れるな」


「シュワシュワ感は?」


「さっきのよりは若干弱いがビールより全然シュワシュワしてるぞ」


なら成功だな。


「これを飲むと疲れが取れるからかやる気が漲って来るな。この瓶は預かっていいか?」


「あげるよ。それを目標にして作って」


「必ず作ってみせる」


ちなみにラムネ瓶のネジは逆ネジなのでこうやって開けて、ここにゴムを取り付けてと説明する。ネジ式の蓋は塗るポーションにも流用できるので2つともジョージが製法を確立してみせると言っていた。


「ポンタ、俺の分はもうねーのかよ?」


「ジョージが瓶を持っていったから無理だね」


そういうとガックリしていた。



薬師錬金ギルドに寄ってから帰ることにしよう。あれからシルベスターの所にも顔を出していないのだ。


ギルドに着くとネダリーは休みのようでヒステリアが睨んでいる。


「今日はなんのご用事ですかっ」


トゲのある言い方をするヒステリア。


「約束はしていないんだけど、教授と話は出来るかな?」


「約束もなく来るとは非常識ですね」


「俺もそう思うよ。あっ、ちょっと目をつぶってくれる?」


「なんでよ?」


「ここにゴミがね」


と、目元を触るふりをしながらポーションをべっと塗ってやった。おしろいの上からでも効くだろうか?指が白くなったわ。


「触らないでっ」


「ごめんごめん、お化粧取れちゃった」


と、白くなった指を見せる。


「キーーーっ」


「じゃあ、明日また朝イチで来るから教授に約束を入れておいて。約束が取れるかどうかわからないけど取りあえずくるよ」


そういうと返事もせずにお花を摘みにいってきますと走っていった。君も漏れそうだと思われるぞ。



冒険者ギルドにも寄って帰る。ランガスから手紙が来ていないか確認するのだ。


「ポンタさん、手紙が届いていますよ」


やっとか。


手紙はランガスじゃなくて跳ね馬商会からだった。跳ね馬商会はハンプシャー家御用達で俺を送ってくれた商会だ。内容はラメリアに来る予定日と黒砂糖とハチミツの量と希望価格が書いてあった。その場でその手紙に上記の件を了解しましたと書いて送ってもらった。価格は安いけど量が多いからそこそこの金額になる。持っている資金がギリギリだ。


「ありがとうロップさん」


「冒険者なんだからロップと呼び捨てでいいですよ。さん付けなんて慣れてないからむず痒いです」


夕方のギルドは依頼帰りの冒険者でごった返している。もう一つの用件を伝えて早く出よう。


「ポーションをギルドにも卸した方がいい?ポーション屋をやるつもりなんだけどギルドの方が取り扱い多そうだし」


「そうですね。ポーションは買い取りという形になります。ギルドの売値は初級1万G、中級10万Gなので買い取りは8千Gと8万Gになりますよ。有効期限が3ヶ月以上残っているものに限りますけど。それを切ると半額に、一ヶ月を切ると買い取りできません」


「有効期限って何?」


「えっ?」


「有効期限ってどうやって付けるの?」


「ポーション資格を取ったのに知らないんですか?」


筆記テスト受けてないからな。


「ごめん、学校に行ったわけでも師匠についた訳でもないからよく知らなかったよ」


そういうと販売しているポーションを見せてくれた。


「蓋に未開封テープが貼ってありますよね」


「うん」


「ここに保存魔法を掛けた人と有効期間の数字の焼印、それと封印魔法を掛けた日付が書いてあるでしょ?」


そういやランガスが買ってくれたポーションにはなんかテープが貼ってあったな。


「これそういう意味だったの?」


「はい」


ロップは呆れた目で俺を見る。


「この保存魔法を掛けた人の焼印と数字は色々あるの?」


「そうですよ。じゃないと責任の所在がわかんないじゃないですか。長期間の保存魔法をかけられる人は少ないので大体この数字は4〜6になってます」


知らなかったよ。


「ありがとう教えてくれて」


購入したポーション瓶にテープが付いていたからそれを貼るだけかと思ってた。それに新品の瓶は密封出来るから保存期間の事をすっかり忘れてたな。


明日シルベスターに聞いてみよう。


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