ちょっと料理指南
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「これは何に使うつもりだ?」
ゴードンが部屋まで荷物を運んでくれるらしく荷車の荷物を見て聞いてくる。
「自分で使う用とここで使う用。試してみて良かったら採用して」
コーンスターチはここでも使っているのでそれを使ってベーキングパウダーを作って行くことに。重曹とクエン酸を混ぜてすぐに使うならいいけど、一度に作っておくなら遮断材としてコーンスターチが必要だ。
天秤秤で分量を計る。自分用ならアイテムボックスを使って分量を量れるけど、ゴードンが自分で作る時用に天秤秤を使うのだ。
コーンスターチ10、重曹10を混ぜ合わせる。そこにクエン酸8弱を混ぜて完成だ。
「ゴードンさん、これはちゃんと蓋をしておけば一ヶ月くらいは傷まない。この粉をパンを焼く時に混ぜてみて。それで良かったら自分でも作れるでしょ」
「パン作るときに混ぜたらどうなるんだ?」
「軽いパンになるよ。いま試してみる?」
晩の食事時のパンを作るのに使ってみることに。
しかし、ゴードンもスーザンもよく働くよね。休みなしでランチまでやってるんだから。
変になったら晩飯用のパンが大変になるということで半分だけ試すことに。
パン生地を薪オーブンに入れて焼き上がるまで話をする。
「さっきの針生姜だけどよ」
「うん」
「切り方一つで食感がかわるもんなんだな」
「繊維が強く入っているのとかはそうだね。気にならない人にはあまり関係ないけど、気になる人はそういう少しの事を解ってくれるよ」
「あの魚料理は旨かったか?」
「めっちゃ旨かったよ。それにあの魚塩は他の料理にも隠し味とかに使えると思うよ。使ってるとわからないぐらいの量だと苦手な人も旨味だけを感じてくれるんじゃないかな?」
「なるほどな」
「炒めものとかに使ってみれば?」
「野菜肉炒めとかか?」
「そう。そういうやつ。寒くなった時の料理だと餡掛けとかにもいいかな」
「餡掛け?何だそれは」
「じゃがいもを使ってトウモロコシの粉みみたいなのを作ってそれを使うんだ。ゴードンさん達は忙しいからここでは作ってなかったけど」
「じゃがいもから粉が作れるのか?」
「手間が掛かるから面倒臭いよ。少しは持ってるから餡掛け作ってみる?」
パンは15分程で焼けるのでそれを待ってから野菜炒め餡掛けを作ることに。ゴードンとスーザンには収納魔法みたいなものが使えると話した。
「えーっ、そうなのかい?だから荷物が少なかったんだね」
「お前は狙われやすいから言うなと言われてたんだよ。隠しててごめんね」
「いいよいいよ、そのまま隠しておきな。バレたら良くない目に合いそうなのは分かるよ」
ということで遠慮なく片栗粉と鶏ガラフープを出す。
「それなんだい?」
「鶏ガラスープ。鶏の骨を煮出したものだよ」
「骨を煮出す?」
「鶏肉でもスープになるけど、骨でも作れるんだよ。捨てる材料でスープが取れるからお得でしょ?」
「そういや、鶏肉だけで煮込んだ時より、骨付きのまま煮込んだ方が旨くなるのはそのせいか?」
「そうだと思う」
話しながら鶏ガラスープに味付して火から鍋を下ろす。
「火に掛けたままやるとへんな塊が出来るから、火から避けて水に解いたじゃがいもの粉をよく混ぜながら入れてやる。で、混ぜたら火に戻してまたよくかき混ぜてトロッとしたら完成。
ゴードンに野菜炒めを作ってもらい、そこに隠し味の魚醤をいれてもらった。
「出来たぞ」
「それにこの餡を掛けて軽く炒めたら完成だよ」
3人で実食。
「おっ、何だこれは?」
「冷めにくいから寒いとき向けの料理だね。おろし生姜を入れてもいいと思う」
というと残っていた針生姜と共に食べるゴードン。
「こいつは他の店では食えん味だ。旨いぞ」
「良かったね」
「ゴードン、パンも食べなきゃ」
「おっ、そうだった」
ベーキングパウダー入りのパンの試食。
「なんだこりゃ?こんなにフワッとしたパンは初めて食べるぞ」
「本当だね。美味しいじゃないか」
「どっしりとした硬いパンを好む人も居ればこうしたパンを好む人もいると思うんだよね。粘りの少ない小麦粉を少しまぜるとなお軽くなるよ。高級パンにするなら水の代わりに牛乳使ったり、バターを使ったりするとパンだけでも食べられるんだ」
このパンは軽くなったけど滑らかさはない。元の世界のパンはもっと滑らかで美味しいからな。
「これより旨いパンが作れるのか?」
「使う材料しだいだね。でもパンだとお金が高く取れないから採算性は落ちると思う。高くても買ってくれる客層ならいいけどここは庶民向けでしょ」
「確かにな。しかし、宿で他店と差別化が難しいから料理の旨い店が流行るんだ」
「利益率の低いパンが大量に出たら料理するのに追いつかないよ。じゃがいもの粉を作るのにも手間暇掛かるから過労で倒れるよ。今でさえ心配してるんだから」
「この宿を作るときの借金があるからな。稼げる時に稼いでおかないダメなんだ。借金奴隷にはなりたかねぇからな」
土地と建物を入れたら初期投資はかなりのものだろうからな。稼ぐ必要があるのはわかる。なら効率良く稼ぐには夜の酒がどれだけ出るかだな。
「利益が出るのは夜だよね?」
「そうだな。昼間は単価も安いからな」
「酒の進むメニューを充実した方がいいかもね」
「酒の進むメニューか。今のじゃだめか?」
「料理が旨いから、酒飲むというより飯を食いに来る人が多いだろ?」
「それがうちの売りだからな」
「それプラス酒の進む料理を出せばいいんじゃないかな?」
「例えば何がある?」
「揚げ物と辛い料理」
「揚げ物は油代がなぁ、それと辛いものとはなんだ?」
「唐辛子は取引のある商人は扱ってる?こんなやつなんだけど」
唐辛子の粉を見せる。
「これは薬師の店で買ったんだ。多分食欲増進の薬に使われていると思う」
「これ、肩こりや腰痛の薬に使われてるやつだろ?食べて問題ないのかい?」
あー、ここでは温湿布みたいな使い方をしてるんだ。
「スーザンさんは腰が痛いの?」
「ゴードンだよ。一日中立ちっぱなしだからね」
「そうだったの?早く言いなよ。これあげるから飲んで、多分治るから」
「これはお前の商売道具じゃないか。それにポーションなんか高くて買えんぞ」
「これはちゃんと瓶詰めもしてないやつだから原価も掛かってないよ。薬草も自分で採取したやつだから気にしないで飲んで」
「しかし…」
「ここで遠慮されたら、俺も全部遠慮しないといけなくなるじゃん」
そう言うと悪いなと言ってゴードンは中級ポーションを飲んだ。
「どうだいゴードン。ポンタの作ったポーションは効くのかい?」
「こりゃすげえ。ずっと痛かった腰がなんともねぇ」
ゴードンは立ち上がって腰をグルグル回したり、前屈や背中を反らしたりしている。
「昔、試しに初級ポーションを飲んだ事があるが少しの間痛いのが収まるだけだったぞ。それにえらく渋くて二度と飲まんと思ってがポンタのは渋くもなんともねぇ」
「効いて良かったよ」
「これは初級ポーションじゃねぇよな?」
「カテゴリーとしては中級だけど、上級と呼んでもおかしくないぐらいの効能があるよ。鑑定してもらったらそうだって」
「上級だと…?」
「そう。若干上級には効能が足りないから中級として売るけどね」
「ちなみに上級ポーションはいくらする?」
「100万Gとかだったかな?中級で10万G。最上級はいくらなんだろ?もしかしたら言い値かもしれないね」
「100万Gっ?」
「これは中級だから売るとしたら10万Gだね」
「上級と遜色なくても価格は1/10になるのか?」
「100万Gなんて買える人ほとんどいないでしょ。10万Gでも買う人そんなにいないんじゃないかな?稼いでいる冒険者がいざと言うときの為に買うようなやつだから」
「ポンタは上級クラスのポーションを中級の値段で売るのか?」
「実際に販売するときには効能を落とすよ
。そうしないと他のポーション屋に悪いからね」
そんな高級な物をこんなに簡単に渡すなと言われたので、親孝行だと思っておいてといったら少し涙ぐんで抱き締められた。
「スーザンさんには他のをもう少し後で渡すから待っててね、いい容器がないから明日瓶工房に聞きに行ってくる」
「いいよ、そんなのっ」
「店が出来たら売り出す商品だからお試しってやつだよ」
その後、酒の進む料理として唐揚げとエビチリを作ってみた。油はラードなので植物油よりはるかに安くなるだろう。ついでに獣脂の仕入れをするのに肉の仕入業者も紹介してもらうのであった。




