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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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この物件を貰う為の条件

「精霊ってなに?妖精とかいうやつ?」


「違うわよバカッ。精霊は精霊よ」 


意味がわからんがまぁいい。


「蔦を魔法で動かして俺達を襲ったのはお前か?」


「魔法?あー、こっちの世界の奴はそう呼んでるわね。蔦を動かしていたのは意志を持たない下位精霊よ。まぁ、私が命令したから襲ったというのは正解ね」


やっぱりこいつのせいか。しかしいま気になることを言いやがったな。


「魔法って…」


「ポンタくん、き、君は一体を誰と話しているのかね……」


青ざめた顔でそう聞いてくるシルベスター。


「誰って、ここにちっこいのが浮いてるじゃない。精霊だって言ってるけど」


「精霊だと?」


「説明しても無駄よ。人間には私達の事は見えないから」


あー、そういやズーランダで魔法が見えてるの俺だけだったな。


「獣人だけじゃなく人族にも見えないのか?」


「その違いはよくわかんないけど精霊が見える人なんて滅多にいないの」


「ならなぜ俺には見えてる?俺は魔力なんてないぞ」


「知らないわよそんなの…」


と、言いかけてちっこい女の子は俺の顔の前まで来て前髪をスッと避けた。


「あんた神眼持ちじゃない。だから見えてるのよ」


「神眼?なにそれ?」


「自分で知らないわけ?額の真ん中にあるじゃない」


え?


「そんなところに目なんてないぞ」


「ちょっと待ってなさい。あんた達鏡になりなさい」


そう言うと光の粒が集まってきて鏡のようにポンタの顔を映し出す。その映った自分の顔には額の真ん中に目があった。


「気持ち悪っ」


我ながら気持ちが悪い。漫画などで見たらそうでもないのだが現実に三つ目とか気持ちが悪い。まるで魔獣じゃないか…


待てよ、魔獣は目が1つか3つ以上だ。もしかして俺は獣人じゃなくて魔獣人なのか?


「ポ、ポンタくん、まさか君は幻覚を見ているのではあるまいな…」


「教授、幻覚ではなく本当だとは思うけど…」


いや、教授の言う通りかもしれん。幻覚を見ている人間は幻覚とは思えないものだ。


「幻覚じゃないわよ。あんたたちここを開発に来たんでしょ?」


「開発というかこの家に住めるなら住みたいなと思っただけ」


「周りみたいな石の建物とかにせずに?」


「そんなお金ないよ。住む所が無くてここが使えるならあげるって言われたんだよ」


「このまま住むなら良いわよ。蔦を避けて」


ザワザワザワザワ


蔦に覆われていた家がどんどん見えてきて蔦が完全になくなった。木造建築の家は建設したてのような感じでとても綺麗だった。


「ポンタくんっ、何をしたんだねっ」


「精霊がこのまま住むなら住んでいいよだって。やっぱり幻覚じゃなさそうだね」


「信じられん…」


俺もだ。


中に入る前にプーアンを呼びに行くことに。今メイと名乗った精霊は俺の肩に乗っている。


「な、なんと蔦が完全に無くなっているではありませんか…」


精霊の件は話さない方がいいとシルベスターに言われたのでプーアンには伏せてある。メイもどうせ信じないからそうしたらと言った。


家の中に入ると、一階には広めのリビングやキッチンダイニング、ポーションを作っていたであろう工房、風呂、トイレ等が全て揃っている。二階は寝室が5つと主寝室が1つに書斎がある。主寝室はもちろん広いが各寝室もかなり広い。それと大きなベランダ。


家の外は裏口を出ると森だな。何となく昔は畑をしていたような感じだな。



リビングでシルベスターとプーアンを交えて話をすることに。この家はランプも無いのに明るい。木々で採光が遮られて薄暗いのだがメイが精霊に命令して明かりを点けてくれているのだ。


「驚きました。まさか本当になんとかされてしまうとは」


「正直私も驚いた。こんなに簡単に解決するとは」


「まだ解決してないよ。ここが呪われてないと思われないとダメなんだろ?鬱蒼とした木々をなんとかしないと噂はどうにも出来ないよ」


「それはそうかもしれませんね」


(木は切ってもいいか?)


コソッとメイに話し掛ける。


「いいわよ。でも少しは残した方が良いわよ」


「プーアンさん、こちらを譲渡して頂く条件を申し上げてもいいですか?」


「どのような条件でしょう?」


「木の伐採と店舗の建築です。店舗は小さな物でかまいません。路面に面した所にポーション等を売る店を作って下さい」


「わかりました」


「あと、今年の分の税金も払っておいてね」


とウインク。


「他に何かありますか?」


「ズーランダから知人を呼び寄せたいんですけど、俺が身元引受人になれるようにできますか?それとここが問題なく使えるようになったのが知れたら無理矢理買い上げにくる貴族が出て来ると思うんですよね。それは抑えてもらうことは出来ますか?」


ここが問題ないとわかったら店も再開して活気が出てくるだろう。そうなれば庶民の獣人が持っでる土地を無理矢理取り上げるとか地上げ屋みたいな事をされるのは目に見えている。


「身元引受人に関してはどうとでもなります。しかし、この土地を奪いに来る貴族が現れた場合に上位貴族だとその…」


「我がスタローン家も上位貴族から来たらなんとも言えんな」


「もし他の貴族がここを奪っても元に戻るだけなんですけど、軌道に乗った後にやり直すのも面倒なんですよね」


「ポンタくんが困った時に頼れと言われた貴族は誰だ?あとそれを紹介した貴族は?」


「紹介してくれたのはズーランダのハンプシャー家です。紹介されたのはヴォルフ伯爵です。紹介状を持ってはいますがヴォルフ伯爵とは面識はありません」


「ズーランダの外交貴族とヴォルフ伯爵か。また随分と大物を紹介されたものだな。ヴォルフ伯爵の後盾があるとお前にちょっかい掛けられる貴族は殆どいなくなるな」


「ヴォルフ伯爵は犬系獣人だと伺ってますが人族の国でそんなに高い地位に付けるものなのですか?」


「ヴォルフ伯爵は王都軍の中心人物だ」


え?


「戦争はなさそうなのに軍ですか?」


「そうだ。ラメリアは一つの国のようで一つの国ではないのだ」


「どういうこと?」


「ラメリアは広い。各地区に領主がいるのだが他だと一つ一つが国と言ってもいいくらいの規模なのだよ。他国との戦争はなくとも各領地で小競り合いはある。それに領主達が組んで現王族を落とす反乱があってもおかしくはない。ヴォルフ伯爵が率いる部隊は反乱防止の役目を担っているんだよ。犬系獣人だけあって統率の取れた兵は素晴らしく強い」


「それでそんな高い地位なんですね」 


「他の貴族が率いる魔法部隊とかもあるぞ。それに獣人が王都の貴族になっているのはズーランダと揉めない為でもある。ズーランダの国王、すなわち獣王は領地拡大に興味はないと思うが獣王を怒らせて戦争になればこちらも痛手を負う。そうなれば内乱が発生してラメリアは一気に荒れた地になるだろうな」


なるほどなぁ。やはり知らない事がたくさんあるものだ。


「しかし、ヴォルフ伯爵は気難しいのでも有名だ。紹介状があっても後盾になってくれるとは限らんぞ」


「なんとなくどういう方かはハンプシャー家から聞いてはいます。まぁ、そっちはなんとか自分で対応しますのでプーアン男爵には大手商会とかから守って下さると嬉しいです」


「それは任されました。問題ありません」


「大手商会とはこの土地の件以外でも揉めるかもしれませんがそれからも守ってくれます?」


「ポンタ様は個人で店をなさるのですよね?大手商会と揉めるとは思いませんが」 


「これを今回のお礼に差し上げます」


「こちらは何でございます…、あっ、これは胡椒ではないですか。しかもホールのままでもこのような鮮烈な香りっ。これをどちらでっ」


「ズーランダです」


「何ですと?」


「まだ安定栽培には至っていませんが数年後には安定栽培が出来ているはずです。それとズーランダ産の黒砂糖とハチミツを俺が全部取扱うつもりにしています」


「なんですと?」


「えー、ジブラルタル商会はご存知ですか?」


「もちろん」


「ズーランダの商人はそこに黒砂糖やハチミツを卸しているのですが適正価格での取引ではなさそうなんですよね。かなり買い叩かれていると思います。ズーランダの商人はあまり疑問に思ってはいないようですけどね。仕入に対して適正な利益を乗せて販売するのは問題ないと思います。それであればズーランダ産の物がもっと出回りますから。現在のような高値を付けて販売をするのであれば適正な価格で仕入れるのが当たり前だとは思いませんか?」


「理屈ではそうですが、価格は自由競争ですしなぁ」


「そう。競争がないから今の現状になってるんですよ」


「つまりポンタ様が競争相手になると?」


「はい。売値に対して適正な仕入価格で仕入れます。そのうちにジブラルタル商会にはズーランダ産の物は手に入らなくなりますよ。ね、揉めるでしょ」


「確かに。胡椒はジブラルタル商会も高値を付けるのではありませんか?」


「胡椒は大丈夫です。初めから卸しませんから」


「そんな事が可能なのですか?」


「はい。胡椒は私の仲間が栽培してくれているので私が卸元です」


「なんとっ、そうでしたか」

 

「はい。私の仲間達は過度な利益は求めていませんので無茶な価格は付けませんけど、手に入りくい商品になるとは思います」


「懇意にされているところにしか販売されないと?」


「はい。俺は弱いので自分の身を守るための武器が必要なのです。これらはそういった類の武器なんですよ。まぁ、黒砂糖とハチミツはジブラルタル商会が適正な価格で仕入れるならそれはそれでもいいんですけどね」 


「君は全部それを一人でやるつもりかい?」


「無理でしょうね。まぁ、ポーション、岩塩、胡椒の取り扱いで精一杯だと思います」


「岩塩?」


「これもあげますね、肉にはこっちの塩の方が美味しくなると思います。これもズーランダ産のものですよ」


「綺麗な岩塩ですな。これもここで販売を?」 


「んー、まだ検討中です。冒険者ギルドにまとめて売るかもしれません」


「冒険者ギルドに?」 


「自分は冒険者登録してるのです。冒険者ギルドは変な駆け引きなしに適正な価格で買い取りしてくれるので信用してるのですよ。この岩塩に需要があるなら大量買い取りもしてくれるでしょうし」


なるほどと相槌を打たれ、一旦プーアンの屋敷に戻ることにしたのであった。


元魔女の家から出るとズザザザザと蔦が絡んでいく。精霊クイーンのメイはここにいるらしい。


プーアンはその様子を見てそそくさと馬車に急ぐのであった。


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― 新着の感想 ―
クイーンはじゃがいもの精霊さんなのですね笑 男爵さんが何由来か分からなかったです
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