シルベルトとのやり取り
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宿の仕事の手伝いをした後に最上級ポーションというのを作ってみる。フルポーションを少し薄めてやれば大丈夫なはず。
ポーション瓶にフルポーションを入れて、水を少しずつ入れてはアイテムボックスへ。フルポーションでなくなればOKだ。アイテム名は鑑定機のように効能の数字までは出ないからな。
翌日、薬師錬金ギルドにいくとヒステリアが睨み付けてくる。
「おはようオバサン」
昨日注意をされたからかカウンターから飛び出そうとまではしなかったが視線だけで殺されそうだ。
「教授に呼ばれてんだけど」
「う、伺っております」
めっちゃ悔しそうにそう言ったのでこちらも言葉使いを元に戻すことに。
「これ試供品として差し上げますよ。ソバカスを気にされているなら隠すより無くしたほうがいいですよ」
「余計なお世話よっ」
個人的にソバカスは別に嫌いではない。キャンディは気にしないわ♪と言ってたけど気になる人が多いからワザワザそのようなフレーズが生まれたのだろう。ヒステリアもおしろいみたいなのを塗りたくっているがこの世界の化粧では隠しきれていない。
しかし余計な事を言ったポンタに対して必要ないとヒステリアは拒絶した。
「それなんですか?」
その様子を見ていた隣の受付の人。ポンタは他の受付が空いているにも関わらずヒステリアの所に行ったのだ。
「これは塗るポーション。昨日資格が取れたから渡しても問題ないかなと思って。シミ・そばかすやアカ切れや擦り傷に効きますよ」
「へぇっ、そんなのが作れるんだぁ。私も欲しいなぁ」
そう話し掛けてきた受付の娘もソバカスがあった。ヒステリアみたいに厚くおしろいを塗ってはいないが。
しかし、試供品用の小さな容れ物に入ったのは1つしかない。
「ごめんね、試供品は一つしか持ってきてなかったんだよ。製品もこれから作るからストックがなくてね」
「ネダリーが欲しいならもらいなさいよ。私は獣人が作ったものなんていらないわっ」
あっそ、なら欲しくなっても売ってもやらないからな。
「じゃあ、ネダリーさんだっけ?良かったらどうぞ。気に入ったら製品化した時にお買い求め下さいね」
「やった!これ塗るだけ?」
「そう。たくさん塗っても効果は同じなのでほんの少しでいいですよ。それで効き目が薄いならもう少し効能を上げた物にバージョンアップしますから」
そういうと早速目の下と鼻先に塗るネダリー
「ヒステリア、どう?どう?」
「あっ……」
ネダリーのソバカスがだんだんと薄くなり見えなくなっていく。
「じっ、自分で確認しなさいよっ」
ヒステリアはヒステリックにそう怒鳴った。
ネダリーはお花を摘みに行ってきますと走っていく。今のやり取りをしらない人が聞いたら漏れそうになってると思われるぞ。
「また騒がしくしているのか?」
と、そこへ教授が登場。
「いいえ、騒いでませんよ。ヒステリアさんと和解してお話をしていた所です」
別に和解はしてない。それどころかネダリーのソバカスが消えた事がめちゃくちゃ悔しかったのかヒステリアは唇を噛んでいる。
「そうか、それは良かった。では行こうか」
なぜ肩を組む?
馴れ馴れしく肩を組んでくる教授。
「拘束されているみたいなので止めて下さい」
「男同士なんだから問題ないだろ?」
教授もこの世界の人族らしく背が高い。ランガスほどではないが180cmは超えているから肩を組まれたら抱き寄せられているようにも見えるのだ。
「だからやめろって。ヒステリアが鬼の形相で睨んでるだろうが」
そしていい加減にしてっ、と、突き飛ばして離れた。
その後、ポンタは色仕掛けで資格を取ったのでは?と噂をされるようになった事は知らないままだ。
「最上級ポーションは持ってきたかい?」
「多分これがそうだと思う。俺は鑑定出来ないから見てみて」
教授が鑑定機にセットして確認する。
「効能99だと…」
あー、もっと薄めないとダメだったか。薄め過ぎて最上級にならなかったらダメだと加減し過ぎた。
「これは安定して作れるのか?」
「さぁ?多少の誤差が許されるなら可能かな」
「製法は」
「秘密です」
「どんな条件があれば教える?圧力を掛けられるようなやり方は嫌だろ?」
「教授は研究者ですか?それとも貴族ですか?」
「ん?何が言いたいのだ?」
「どちらかお答え下さい。自分の中のご自身のことですよ」
「それによって答えが変わるということか」
「はい」
「身分は貴族ではあるが自分は研究者だと思っている。まぁ、貴族と言っても5男坊だから家を継ぐこともないからな」
「わかりました。秘密は教えませんがヒントはもうお伝えしています。あとは研究者として頑張って下さい」
「ヒントだと?」
「はい、研究者たるもの人の答えをあてにするようでは失格ですからね。ご自身が研究者であるとおっしゃられたのでそれを蔑ろにするつもりはありませんよ」
「ほう、ならば貴族と答えて君を拘束すると言っていたならどうしたんだい?」
「ヒントを出した事は言いませんでしたよ。それに俺を拘束したら教授自身もそうですけど、スタローン家のお立場は悪くなっていたでしょうね」
「君は私より権力があるとでも言いたいのかい?」
「私にはありませんけどね。まぁ、繋がりはありますよ」
「権力者との繋がりと言ってもズーランダのだろ?ラメリアでは通用しないぞ?」
「そうですかね?まぁ、ご興味があればお試し下さい。権力に頼る前に自力でなんとかしてみせますが」
ポンタはブラフで勝負に出た。今の所は教授からは拘束するとの言葉に本気度を感じない。ポンタがどう出るか試しているのだろうと思ったからだ。ハンプシャー家と犬伯爵の名前を出すまでは追い込まれてはいない。
「ふむ、君に危害を加えたら神様からのバチが当たるというやつかな?」
「えっ?」
「君はあまり貴族の情報網を甘く見ないほうがいいよ」
「そんな市井の話までご存知なんですね」
「衛兵を脅すような獣人がいれば報告ぐらい上がってくるさ」
「もしかしてスタローン家は衛兵を管轄してるとか?」
「御名答。君のお陰でゴロツキの薬物ルートの一部が判明しそうでね、ご協力を感謝するよ」
全部知った上でカマを掛けられていたのか。人族とのやり取りは難しいな。
「さ、腹の探り合いはこのへんにしておこうか。君が普通の獣人ではない事はよく理解した。今からは普通に話そうか。自分はこういうのはあまり好きではなくてね」
「ならなんでこんなことをしたのさ?」
「他の貴族を紹介する手前、どういう奴か確認をしておく必要があるからね」
「他の貴族への紹介?」
「家を探しているのだろう?君には王都か王都近くにいてもらわないと困るからね。と言っても王都近辺の物件は高い。地方の安い物件を探して行方がわからなくなるのは困るんだよ。だから王都の物件を手に入れる方法を提供しよう」
「何をやらせる気?」
「年間120万G程度は払えるかい?」
月10万Gか。ポーション販売が出来るなら可能だな。
「なんとか」
「ならいい話だと思うぞ。今からでも大丈夫か?」
「夜は宿の仕事を手伝う約束をしているのでそれまでに帰れたら」
「どこの宿だ?」
「王都と港街の間にあるスーザンのお宿です」
「んー、よく知らないがそこなら夜には十分帰れるから大丈夫だ」
そしてこの建物を出るときにネダリーが寄ってきた。
教授に挨拶をしたあとに、満面の笑みで俺に話し掛けてきた。
「あの塗るポーションはいつから販売するの?」
「まだ正式には決めてないよ。生活基盤とか何も出来てないし」
「じゃあ決まったら絶対に教えてね。私がお客第一号になってあげるから。あとおまけしてくれると嬉しいなぁ」
ニコニコと手を握りながらお願いされた。
「分った。おまけ出来るどうかはわかんないかな。ポーションって価格をあまり変えるの良くないと思うから」
「えーっ? でもそうかもねぇ。あとさ、そのお化粧はどうやるの?何使ってるの?」
「目のこれのこと?」
「そうそう。すっごく可愛くなるよね」
「これは化粧じゃなくて模様なんだよ。化粧はしてないよ」
「そーなのっ?じゃあ、このフワフワの髪の毛は?」
ネダリーにワシャワシャ触られる。やめて毛玉になるから。
「これも自前の毛だよ」
「えーっ、ズルい〜」
今日初めて喋ったのにグイグイくるなこの人。
「ネダリー君、そろそろいいかな?我々は行くところがあるのだよ」
「も、申し訳ありません。じゃあポンちゃん、次来るときはヒステリアの所じゃなくて私の所に来てねー」
「あ、はい」
ポンちゃん……
ポンタはいきなり距離感を詰めてグイグイくる女性がちょっと苦手だった。
「随分とネダリーと仲良くなったんだね」
「どうでしょうね?」
ヒステリアみたいなタイプは嫌いだけどネダリータイプは苦手だなとは言えないポンタなのであった。




