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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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思わず叫んだ名前

「では、他ヒョウ族列びに他種族を受け入れる事で決定する」


こうしてヒョウ族は未来へ向けての一歩を歩みだした。他ヒョウ族の勧誘は夫婦のヒョウ族が行うことになり、俺は他種族の勧誘を行うことにした。ジャガーとネロ付きで。


「ポンタ、他ヒョウ族の勧誘を夫婦の奴らにさせたのはなぜだ?」


「男の人だけで行くと女の人は警戒するだろ?女の人だけで行くと危ないしペアで行くのが一番いいんだよ」


「なるほどな。お前はよくそう言うのに気付くな」


「ネロ、自分が単独で生活をしているところに男が来たらどうする?」


「そりゃ警戒するだろ。なにしに来やがったってな」


「だろ?夫婦で来たらどうする?なにしに来たと警戒していても話を聞いてくれと言われたら聞くだろ?」


「まぁな」


「そういうことだ。自分に置き換えて考るとこういうことはすぐに思いつくよ」


ネロの中身はまだ幼い。いずれヒョウ族を背負っていくならこういうことは教えておいた方がいい。


そんな話をしながら向かったのはギルドに畑を荒らす魔獣討伐依頼をかけていた獣人の村だ。依頼料が安いのでまだ残っているのを見付けたのだ。依頼を受けてもよかったんだけど、その報酬でジャガークラスの強いやつが来てくれると思われるとまずいので依頼は受けていない。



「こんちはー」


俺の後ろにいるヒョウ族にビクッとするオジサン。この人達はウサギ族だろう。


「なんか悪さしに来たわけじゃないから安心して。冒険者ギルドで討伐依頼を見て来たんだけどね」


「おー、ようやく依頼を受けてくれたのか」


「いや、受けてないよ。あの金額じゃ誰も受けないよと教えに来たんだ」


「はぁ〜、やはりそうか。受け付けてくれた時も難しいとは言われてたんだが…」


ガックリと落ち込むおじさん。


「ちなみになんの魔物が出るの?」


「大きさはそれ程もないんだが小さいイノシシみたいなやつだ」


柴犬ぐらいのサイズらしい。


「それは多分ウリボアだな。小さくてもれっきとした魔獣だ」


「やはりそうか。初めはイノシシの子供かと思ってたんだがやたら強くてここのものでは太刀打ち出来んのだ。農作物は食われて退治しようとしたやつも怪我をした」


「この畑の周りに掘ってある溝は魔獣よけ?」


「柵は壊されるから畑に入れんように皆で掘ったが軽々と飛び越えられて手の打ちようがなくて困っている。出せる依頼料もあれが精一杯でな」


このまま食い荒らされ続けたらこの村は持たないだろうな。


「何人ぐらいで住んでるの?」


「大人子供合わせて50人程度だ」


「自衛出来ないと大変だね」


「なんだその言い方は?適正な依頼料を払えない俺達を笑いにきたのか?」


「いいや。これからどうすんのかなぁって思って見に来たんだよ」


「やっぱり冷やかしじゃないか。何もしてくれないなら帰れっ」


おじさんに怒鳴られたので退散する。


「お前、どうしてわざと怒らせた?移住の誘いをするんじゃなかったのか?」


ネロはジャガーから俺が何かをするときに余計な口を挟むなと言われているのでその場では何も言わない。が、離れると聞いてくるのだ。


「まだどんな人達かわからないし、向こうもいきなり来た人に移住する?って聞かれてすると思う?」


「怪しむな…」


「だろ?だからウリボアだっけ?それを討伐しにいこう」


「ギルドで依頼を受けないって言っただろうが」


「依頼じゃないよ。ヒョウ族の力を見せてやる為に狩るんだよ。それともネロにはウリボアを狩るのが難しいのか?」


「そんなわけねぇだろうが。それにただでやるのか?」


「あんな少ない報酬をもらうより力を見せることが重要なんだよ。それで村人がどんな反応をするかをみる。上手く付き合えそうなら声をかけてみるよ」


「反応を見る?」


「そう。まぁ話はウリボアを狩ってからだ」


村からイノシシに似た臭いを頼りに森の方へ向かう。数がいるならどこかに溜まっている可能性が高い。畑を荒らしに来るのは夜みたいだからこの時間は休んでいるだろう。


「ジャガー、ウリボアは強くはないけどすばしっこいんだよね?」


「そうだ。ファングラビット系だな」


「なら俺がおびき寄せて二人に狩って貰おうかな」


「また揚げ物をすんのかよ?」


「いや、それで寄ってくるならやるけどファングラビットと同じとは限らないからね。見つけたら前にネロにやったみたいに怒らせるよ」


森に入ると段々とウリボアの臭いが強くなってくる。足跡も結構あるな。


「そろそろだね」


「ポンタは木の上に登っていろ。あいつらは登れん。私がこちらに追い立てるから木の上から吠えてここにとどまらせてくれ」


ネロがひょいと木に登って枝の上に乗せてくれて二人は分かれてウリボアが群れているところに目星を付けて追い立てにいった。二人は何も打ち合わせをしなくても大丈夫なんだな。と感心。


しばし木の上で待つとガサガサと音がしたあとに


「行ったぞ」


と遠くからジャガーの声が聞こえた。


出て来たのは怖そうなウリ坊って感じだね。目が4つあって牙が伸びてて可愛げのかけらもない。


「キャウキャウキャウッ」


無駄吠えを食らって集団で走ってきた先頭のウリボアが足を止めてこちらを見上げる。


「グフーっ グフー」


ウリボア達が前足で地面を掘るように蹴り威嚇してくる。


「キャウキャウキャウッ キャウキャウキャウッ」


無駄吠えを繰り返して逆上させていくと木に体当たりしてきた。


「アワワワワワっ」


木が大きく揺れて落とされそうになる。


「わっ」


ぐるん。大きく揺れた拍子に枝からずり落ちてナマケモノみたいになってしまった。これはヤバい。


「ジャガー、ネロっ 早くやっつけてっ」


落ちたら衝撃で動けなくなる。そこを狙われたらお陀仏だ。


ブギっ ブギーーっとかウリボアの悲鳴が聞こえてくる。ジャガー達は追い立てがてら狩って来ているのだろう。ウリボアは仲間の悲鳴が聞こえても念入に怒らせたので木への攻撃をやめない。


ドゴっ ドゴっ ドゴンっ


「落ちるっ 落ちるーーっ。ジャガー早く来てーーっ」


ポンタは激しく揺らされてあわあわしている。


ヤバいヤバいヤバい。


ドゴーーンっ


「うわっ」


その時に一際大きな揺れが襲う。


ズルンっ


「いやーーーーっ、死ぬーーーっ」


また彼女もできないうちに死ぬのは嫌だっ


「助けてランガスーーっ」


ドサっ


「大丈夫かポンタ」


「あ、ジャガー………」


「怖い思いをさせて済まなかった。間に合って良かった」


木から落ちた時にジャガーに受け止められお姫様抱っこされているポンタ。


「あ、ありがとう」


チキショウ、ジャガーのやつ男前じゃねぇかよ。お姫様抱っこへの憧れはあったが俺が望んだのはこっちではない。されるんじゃなしにしたかったのだ。


下に降ろしてもらうと、ウリボアが大量に討伐されていた。


「これ食える?」


「豚よりかは旨いと思うぞ。豚以上オーク未満って感じだ。肉が少ないからわざわざ狩ることも少ないがな」


確かによく見ると頭がデカくて身体は小さいな。歩留まりが悪そうだ。


その辺の木に巻き付いているツルを切ってウリボアを縛っていく。


「収納すればいいじゃないかよ?」


「あの村人達に見せる必要があるからね。それで反応を見るよ」


繋いだウリボアをネロとジャガーでズルズルと引っ張って村の方へ歩いていく。



「おっ、おいあれ…、依頼を受けた冒険者か?」


「いや、さっきピーターのやつが冷やかしだったと怒ってたぞ」


「でもあれはヒョウ族だよな?ヒョウ族の冒険者なんているのか?」


村人達はザワザワして集まりだした。


「あ、あんたら狩ってきてくれたのか…」


声を掛けてきたのは初めに話したオジサン。


「まぁ、近くに来たから様子を見に行っただけだよ。群れがいたからついでに狩っただけ」


「ありがてぇっ。あんたら報酬はどうすんだっ」


「依頼を受けたわけじゃないから貰えないよ。まぁ、これを食うからいいけど」


「ダメだっ。少ない報酬だがちゃんと受け取ってくれ。確か依頼は達成後でも受けた事に出来るはずなんだ。依頼表に達成のサインをしてくるから待っててくれっ」


そう言ったおじさんは走っていった。


「ヒョウ族は野菜を食うかね?」


歳いった人が話しかけてくる。


「そこそこ食べるぞ」


ジャガー達は前まであまりたべなかったけど、マヨとドレッシングを作ってから生でもそこそこ食うようになっている。


「なら、これをせめてもの礼として受け取ってくれんか」


そう言った後に皆が収穫したものを持ち寄ってくれる。トマト、キュウリ、葉物野菜、アスパラガスなんかだ。へぇ、アスパラなんかあるのか。これはありがたい。市場では見なかったからな。肉巻きにしてやればジャガー達も喜びそうだ。


「こんなにいいの?」


「通常の依頼料には程遠いじゃろうから受け取ってくれ」


お年寄りだと思われる人がそういうと皆がウンウンと頷いた。


「ウサギ族って肉は食うの?」


「そこそこ食うぞ」


ジャガー達と逆な感じだ。 



「待たせたっ。これは依頼達成感のサインをしたものだ。これをギルドに持って行ってくれ」


「じゃぁ、ありがたくもらっておくね。それにこんなにたくさん野菜ももらったし」


「うちの野菜は旨いと思うから食ってくれ」


「ここではどうやって食べてんの?」


「塩かけて食ったり、煮たり焼いたりだな」


「今肉も食うって聞いたけど野菜と料理をしたりしないの?」


「一緒に煮たり焼いたりはするぞ」


「塩味だけ?」


「そうだが?」


「ジャガー、ネロ。ここで飯食って帰れる?」


「構わんぞ」


「野菜をたくさんもらって持ちきれないからここで食べて帰るよ。ウリボアの肉もあるし皆で食べる?」


「俺達もか?」


「いらないならいいけど。この場所は借りていいかな?」


「す、好きに使ってくれれば良いが…」


ウリボアの解体はジャガーとネロに任せる。バラ肉を使って野菜の肉巻きにしよう。こちらは野菜の下ごしらえだ。見たことがない葉物野菜を少しかじるとセロリみたいな味がした。見た目は青梗菜みたいなんだけどな。これは生で食うか。キュウリとこいつは野菜スティックにしてマヨだな。トマトとアスパラは肉巻きにと。


解体したそばからバラ肉をもらって薄切りにして巻いていく。手で薄切りにすると結構分厚いのでスライサーが欲しい所だ。


塩コショウで味付けしてと。トマトの方はチーズinのも作ってオリーブオイルを掛けようか。


魔導コンロを出し、フライパンで肉巻きを焼く準備を始める。


「解体はもういいよ。いま食べる分はあるから」


そしてジュウジュウと肉巻きを焼き始めると村人はじーっと見てくるのであった。





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