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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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お宝と不穏な動き

「もう動けるし帰ろうか」


ミノタウルスをアイテムボックスに収納して帰る準備をする。と、フワッと山頂のほうから風に乗って匂いが流れてきた。


「ここの上は何があるの?」


「この上か?木があるだけだぞ」


「なんかブドウみたいなもの実ってない?」


「ブドウ?これくらいの実はなっているが食えんぞ」


「ちょっと取ってきてくれない?」


「ポーションの原料になるのか?」


「いや、調味料だよ。違うかもしれないけどツルになっている実なら取ってきて欲しいんだ」


そういうとネロが取りに行ってくれ、葡萄のなり損ないみたいな実。緑のと赤い熟した実を取ってきてくれた。


「これの事か?」


「うん。ありがとう。ちょっと貸して」


それをアイテムボックスに入れて確認。


・胡椒の実


ビンゴっ!


「ネロ、これはどれぐらいなってる?」


「そんなもん山程あるぞ」


「そこへ連れてってよ。たくさん収穫したい。これは調味料というか香辛料で、肉とか旨くなるぞ。売ったら高値がつくかもしれないし」


「マジかよ?」


「マジで!」


ポンタはまた犬化してカバンに入るとネロがそれを持って上に登っていく。ジャガーも一緒に来て上に登るとそこはなだらかな斜面になっていて、大きな木に胡椒のツルが巻いていた。


「お宝の山じゃん。取り敢えずなってる実を全部取って行こう」


自分の手の届く範囲の実は自分で取り、高いところのはジャガーとネロに取ってきて貰った。大漁大漁っ!


「これはこのまま食うのか?」


「乾燥させてから粉にして使うんだよ。帰ったら干して乾燥させよう」


岩塩も胡椒も手に入ったしミノタウルスの肉まで手に入った。これはラッキーだ。


集落まで戻って早速胡椒を干していく。何日掛かるか知らないけど楽しみで仕方が無い。


他の人達がミノタウルスの解体をしてくれているので余分な脂は別にしておいてとお願いしておいた。


「ポンタ、ハンバーグを作ってくれ」


とジャガーに言われたのでミノタウルス肉と玉ねぎのハンバーグを作ることに。試しに生の胡椒を潰して味見をするとちゃんと胡椒の味となんとなくフルーツっぽい味がしたのでそれも使う。


今日の飯はステーキとハンバーグだ。俺はワイン飲んじゃお。



「むっ、なんだこの辛さと風味は」


「それが取ってきた胡椒の風味。乾燥させてから粉にしたらもっと強く風味が出ると思うよ。胡椒は肉を旨くするだろ?」


子供達にはあまり好評ではなかったが大人達には好評だった。


「あの食えねぇ実がこんな風に使えるなんて思ってもみなかったぜ」


「明日街に行って買い物するときにどれぐらいの値段で売られているか確認してみようか」


「おう、いくらになるか楽しみだな。高値が付きそうなんだろ?」


ネロは嬉しそうにそう言う。


「まぁね。恐らく高く売れるけど…」


「どうしたポンタ、何を心配している?」


「いや、胡椒をどこで入手したかを調べようとするんじゃないかと思うんだ。それで簡単に手に入ることがバレたら争いになるんじゃないかと思って」


「争い?」


「うん。ヒョウ族って人数少ないだろ?多勢に無勢って言葉もあるぐらいだから大勢いる種族に攻めて来られる可能性が否定出来ないんだよ。ほら、金の為に人を陥れて奴隷商に売ったりするような奴らがいるじゃん」


「ハイエナ共か」


「そう。群れを作る習性のある種族だと仲間を集めて金儲けの種を奪いに来るかもしれない」


「ということは?」


「高値で売れてもたくさん売らないほうがいいと思う。少しずつ少しずつお金が必要な時だけ売るとかね」


「なるほどな…」


「それか値段が下がるのを承知で大量栽培するかだね」


「栽培?」


「そう。ヒョウ族って植物育てたり収穫したりするの得意?」


「いや、苦手というかやったことがないな。野菜とか作っているのはウサギ族やヤギ族とか草食系獣のタイプばっかりだ」


「じゃあその人達と協力して一緒に栽培するとかだね。ヒョウ族は他種族が攻めて来ないように防衛担当、育てるのは草食系種族担当とかだね。一つの集落の総人数が多くなれば攻めてこれないでしょ。なんかあったら大事になって衛兵とかに捕まるだろうし」


「しかし、我らは元々群れない種族だなんだぞ。それに他種族と暮らすとか…」


「そうしろって言っているわけじゃないよ。そういう道もあるよと言っただけ。草食系種族もヒョウ族に守ってもらいながら生活出来るなら安心して生活出来ると思うんだけどね。俺もそうだし」


そういうと皆は黙ってしまった。昔ながらの自給自足で暮らしてきたヒョウ族にとっては考えもしなかったことだろう。


「ところでさ、ズーランダで犯罪奴隷になるって何したらそうなるの?」


「この国では人から奪うのが悪だとされている」


物を奪うのも命を奪うのも同じ悪なのだそうだ。喧嘩になって多少の怪我をさせるぐらいでは犯罪奴隷にまでならないようで、物を盗った方が罪が重いらしい。


「あの岩塩も胡椒もヒョウ族の物?」


「いや違う。縄張りを通る必要があるというだけだ」


「縄張りはヒョウ族の土地?」


「街中以外は誰の土地だというような決まりはないな」


だろうな。


「胡椒が金になると知った大勢の犬族系が近くを通ったらヒョウ族は攻撃出来る?」


「……………」


「攻撃を仕掛けた方が悪くなるよね?向こうは誰の土地でも無い所を歩いていただけだというだろうし」


「そうだな」


「だからあの場所のことがバレたら防衛は無理なんだよ。今までと同じ暮らしを望むなら必要最低限しか売れない事になるよ。それすら危ないかもしれないかもしれないけど」


「ポンタ、お前は賢いな」


「人族と暮らしてるとこういう発想は当たり前なんだよ。ハイエナ達は奴隷商と繋がっているならこいう入れ知恵をされてもおかしくない。それに奴隷商なら人族への胡椒の販路もあるから今言ったような状況になる可能性は高いよ」


「うむ、よく分かった。取り敢えず胡椒はどれぐらいの値段で売られているか確認してみよう。話はそれから考えても遅くはなかろう?」


「そうだね。俺がラメリアに移住したらまた別の手段が取れるし」


「別の手段?何が出来る?」


「俺がヒョウ族から仕入れてラメリアで売る。仕入先は漏らさないからここも安全だし俺も儲かる」


「ちゃっかりしてるなお前は」


「俺は狩りで生計立てられないから、他の事で儲けないと生きていけないんだよ。弱い者は弱いなりに生きていく術が必要だからね」


そういうとネロにお前はほんとうに弱っちいからなぁと笑われた。確かに弱ったミノタウルスの蹴りで死ぬところだったしな。



翌日、ジャガーとネロと3人で街へ出掛けた。


「ちょっと冒険者ギルドに寄ってもいい?」


「何するんだ?」


「手紙が届いていないか確認したいんだよ。後は情報収集」



「はい、ポンタさんに手紙が届いていますね。こちらになります」


やっぱりランガスから手紙が届いていた。無事に到着してホッとしたということと、俺がいなくなってから飯が不味くて食えないと書いてあった。あと寂しいとも…


ランガスはソロで行動してたから今は一人か。俺も会えなくなって寂しいからジャガーが居なかったら泣いていたかもしれん。


手紙を読んでちょっとホロッとしかけたのを我慢して情報収集することに。


「ギルドでファングラビットの毛皮の買い取りはしてます?」


「んー、してなくはないですけど二束三文ですよ。冬毛ならラメリアで売れるんですけどズーランダのファングラビットは夏毛のばかりですから」


なるほどな。


「岩塩とかの買い取りはしてます?」


「岩塩はしていますよ。海塩より携帯性に優れていますので」


「ちなみにこの大きさだといくらぐらいになります?」


「結構大きいですね。では重さを計りますね」


天秤で岩塩の大きさを計り値段を提示してくれる。


「この重さだと4200Gです。買い取りに出します?」


「じゃあお願いします」


結構いい値段で売れたな。ヒョウ族に取って塩はいい商売になるかも。


「あと、これは売れます?」


「これはなんでしょう?」


「香茸という人族には人気のものなんですけどね」


「ちょっと聞いて来ますね」


と、奥に聞きに言ってくれた。人族に人気があるというのは嘘だ。オールディでは買取りしてくれなかったからな。


ドタドタっ


大きな足音がして豚獣人のオッサンがやってきた。


「きみっ、これはどこで手に入れたのかねっ」


「採取場所は秘密ですよ。場所を荒らされたくないので」


「うむむむむっ、それはそうだな、いやスマン。こいつを見たのはとても久しぶりでね。これは売ってくれるのかね?」


「値段によっては」


「通常ズーランダのギルドでは採取依頼がない限り買い取りはしていないのだが私が君に採取依頼した事にしてもらえないだろうか」


「いいですよ。報酬に色付けてくださいね」


ということでクエスト発注、受注、達成という手順を踏んで貰った。報酬は香茸一つで7万G、ボロ儲けだ。


「う〜ん、この芳醇な香りは採れたてそのものだ。まさかズーランダで香茸が採れるとは思ってもみなかった」


採ったのはここじゃないけどね。


「君に指名依頼したらまだ採れるかね?」


「まぁ、まだ少しなら」


「我々、豚族はこの香茸が大好物でしてね、同族の貴族でも欲しがる者が必ずいる。君の名前を教えても構わないかな?」


「いや、ズーランダにずっといるわけでもないし、この通り小さくて弱いので狙われたらいやなので名前は伏せて欲しいです。ギルドに依頼が入ったら受けますよ。報酬にもよりますけど」


「うむ、分かった。ならば近々また立ち寄ってもらいたい」


「了解です」



ポンタはホクホクでギルドを後にした。


「ネロ、塩が売れたぞ。はいこの金はお前にやる」


「本当に売れたのか?」


「これぐらいのサイズで4200Gだった。冒険者ギルドの買取り価格は適正だけど買取に出す店によっては値段はまちまちだと思う。まぁ、ギルドに売る方が安心ではあるよ。へんな駆け引きしなくて済むから。ネロはそんな駆け引き苦手だろ?」


「そうだな」


「ギルドに売るなら冒険者登録が必要だから気が向いたら登録してみたら?」


「俺が冒険者になるのか?」


「塩を売るためだよ。長の許可が必要かもしれんから相談してからにしろよ」


「分かった」


その後はお買い物兼値段調査をして行くポンタ達。



「いやがったぜ。やっぱりジャガーと一緒だったか…、おい仲間に知らせろ」


ジャガーに肩を組まれ、反対側はネロに手を繋がれたポンタにはその声は聞こえていないのであった。







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