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ポメラニアン転生 〜俺が望んだのはこっちではない〜  作者: しゅーまつ


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ヒョウ族の集落へ

誰もいなくなったのを見計らって木から降りたポンタとジャガー。


ポンタは肩掛けカバンを出してから犬に戻る。


ボワン


脱いだ服をアイテムボックスにしまい、カバンの中に潜り込んだ。


「お前、獣に変身出来るのか?」


「キャンっ」


ジャガーにそう答えてカバンの持ち手を咥えてジャガーにクイクイとしてみせた。


「質問は後だ。ここから離脱する」


ジャガーはポンタが入ったカバンを首に下げると共にダッシュした。


怖い怖い怖いっ


暗くなった森の中をなんちゅうスピードで走るんだお前は?


ランガスの走りも速いとは思ったがジャガーの走りは比べ物にならない。しかも地面を走るだけでなく木を蹴り、時には登り木から木へと飛び移っていく。


ヒェぇぇぇぇっ


落っことされないようにカバンを必死に噛み、ブンブンと揺れるカバンに翻弄されるのであった。


もうどれぐらい移動したのか見当が付かない。日暮れすぐに出発してもう夜が明けている。一睡もせずに森の中を飛ぶように走ったジャガー、カバンを必死に噛み続けたポンタはぐったりであった。


「ここまでくれば一息付けるぞ」


と、安心出来る場所のようなのでカバンから出て人化する。


「お前、男だったのか?」


「見んなよスケベ」


ジャガーにバッチリ見られてしまった。俺の事は女だと思っていたらしい。種族が異なると男か女か臭いではわからないみたいだ。


「ここどこ?」


「港街の反対側だ。お前はどこに行きたいとかあてはあるか?」


「暑いの苦手だし北かな。ジャガーも北に行けっていったじゃん」


「わかった。お前は何をしにズーランダまできた?」


「お嫁さん探し」


「つがいを探しに来たのか?」


つがいって……


「人族の国だと嫁探しは難しいと言われてこっちにきたんだよ」


「そうか。私は性の捌け口にはなってやれるかもしれんが子を産んでやるのは無理だな。種族が違うと子は出来ん」


なんとあけすけな事をいうのだジャガーさん。


「いや、そんな捌け口になってくれなくてもいいよ」


「私では不満か?」


「いや、不満とかじゃなくて相思相愛で結婚したいんだ」


「ふむ、お前は男としては小さく弱いから魅力的ではないがお前の作る飯は魅力的だ。私とつがいになれば私がお前を守ってやろう」


小さく弱いから魅力的ではないか。元の世界と真逆の事を言われるとは……


「ありがたい申し出だけど出来れば子供も欲しいし」


「それは叶えてやれんな。残念だ」


スマートに断れて良かった。ジャガーは綺麗で魅力的ではあるが身体の大きさが違いすぎる。それに下手に怒らせでもしたら噛み殺されそうだ。


落ち着いたところでご飯にすることに。クリームシチューでもと思ったけど暑くてそんな気分でもないので鶏胸肉をあっさり塩味茹でにしてみた。しかしジャガーはこの料理を拍子抜けしたみたいな感じで食べるので唐揚げを出してやる。


「これは旨いっ」


ジャガーって、女版のランガスみたいだな。唐揚げを喜んで頬張る姿がランガスとダブる。


「すっかり元気になったみたいだね」


「うむ、お前にもらったポーションのお陰だな」


うんうん、元気になって良かった。しかし、首に首輪の跡が残ってるのは気高そうなジャガーに似合わんな。ポーションでアザは消えるのだろうか?


ジャガーがうまうまと唐揚げを食っている間にいい方法がないか考えてみる。シミ消しクリームみたいなのが作れたら消えるかもしれん。薬草と馬油を混ぜたら可能だろうか?


手持ちの初級ポーションと馬油を混ぜるが混ざらない。鍋に入れてもダメだ。馬油を溶かして薬草を刻んで入れても成分は溶け出さないようだ。


「何を作っている?」


「ジャガーって強くて美人じゃん?毛並みも美しいのに首輪の跡が残ってるのは宜しくないなと思ってね」


「び、美人とか言うな」


真っ赤になって照れるジャガー。こんな顔をすると可愛くもあるな。


「これは何度も抵抗してしつけの魔法を食らったから跡が残ったのだ。恐らくもうずっとこのままだろう」


「うん、でもちょっと色々と試してみるよ」


馬油とポーションが混ざらないのは油分と水分だからだ。卵をいれてマヨ作るみたいにしてみるか。


卵とポーションをシャカシャカと混ぜていく。箸だと時間が掛かり過ぎるな。ポイント交換の所に泡立て器ないかな?


ウィンドウを開いて交換出来る物を見ていく。あった、泡立て器は980ポイントか… まぁ、これは使い道が多いからポチるか。


「何だそれは?」


「物を混ぜるものだよ。箸というか棒で混ぜるより早いから」


と泡立て器をジャガーに見せる。


「これはシャカシャカと動かせば良いのか」


「うん」


「では私がやってやろう」


シャカカカカカカッ


速えぇぇ。電動泡立て器みたいだ。


ジャガーがシャカシャカしてくれているところに溶かした馬油をポチョポチョと垂らしていく。一度に入れると失敗しやすいのだ。


ポチョポチョしていくと段々と乳化していきクリーム状になった。


「ありがとう、もういいよ」


出来たクリームをアイテムボックスに入れてちゃんと出来ているか確認する。


・初級ポーション(クリーム)


ちゃんと出来てるからもう一度取り出して指に取る。


「ジャガー、顔上げて。首にこれを塗ってみるから」


「それは何だ?」


「塗るポーション。これで首輪の跡が取れたらいいね」


顔を上向かせたジャガーの首にポーションを塗っていく。


ヌリヌリヌリヌリ 


「んっ……」


そんな色っぽい吐息を出すんじゃない。刺激が強いじゃないか。


「もういいよ。これで跡が薄くなっていけばいいね」


初級ポーションで効き目がなければフルポーションで試してみよう。


一晩中走り続けたジャガーは眠そうなので木の上に登って眠ることにした。ポンタは寝たら落ちるかもしれないのでカバンの中に入りジャガーにぶら下げてもらって眠ったのであった。



ーズーランダ王都ー


「クソッ、これだけ探しても見つからねぇって事は他の街に逃げやがったな」


「リリベ、お前はこの失態をどう挽回するつもりだ?」


「あ、兄貴……」


「兄弟全員で探すぞ。このままだと俺等も巻き沿いを食うからな。その代わりリリベ、この決着が着いたらしばらく船で働かせるからな」


「わ、わかった」


奴隷商から貰った猶予は2週間。次に船がここから出発するまでの期間だ。それまでに何としてでもポンタを見付けてやる。


リリベは賭で稼いだ金を全部使い、鼻の効く奴らを雇ってポンタを探すのであった。



「ポンタ。今晩も全速力で逃げるぞ」


「どこまで逃げる予定?」


「ここからずっと離れた北西の場所に我らの集落があるからそこまで行く。そこならもし追っ手が来ても返り討ちに出来るからな」


王都からは取り敢えず東に向かって逃げたらしい。ヒョウ族の集落の場所はバレているので東へ逃げたと見せかける必要があるそうだ。恐らく微かに残した臭いを頼りに探すだろうと。


「それで地面に降りたり木から木へ移ったりしたのか?」


「そうだ。犬族系の奴らは木登りが苦手だ。地面に残した臭いは点在しているから追うのに時間が掛かるだろう。ここからは木から木へ移動するから遠回りになる」


朝飯というか夕飯を食いながら逃げる予定を聞いて出発した。また落っこちないようにカバンを一晩中噛んでいなければならない。俺の可憐な顎が割れ顎になったらどうすんだよ?とか余計な事を考えながら追っ手から逃げるのであった。


そんな生活が一週間ほど続いたあとに集落近くまで到着。


「もうすぐだ。これからの事は集落でしばらく身を潜めてからどうするか決めろ」


「うん、そうさせてもらうね。あと集落に辿りつくまでに首の跡が消えて良かったね」


「お前のイヤらしいポーションの塗り方のお陰だな」


イヤらしいとか言うなよ。確かに段々と調子に乗って楽しむような触り方はしたのだが。


逃亡の旅の途中にジャガーがなぜ借金奴隷になったのかを聞いた。ヒョウ族の子供が街の方まで遊びに行った際に人の食べ物を盗んでしまったようだ。恐らくそれはヒョウ族の子供を犯罪者にするために嵌めたのだろうとのこと。ジャガーはその子供達を買い上げて逃がすために借金奴隷になったらしい。


「首の跡が付いていたら子供達の後悔が大きくなるだろうから本当に助かったぞ。改めて礼を言わせてもらう」


「こちらこそ助けてもらったんだからおあいこだね」


「そう言ってもらえると少しは気が楽だな。私のお前への借りは大きいからな」


ジャガーはゴミ捨て場で死にかけていたときは物凄く殺気立った怖い顔をしていたけどこうやって笑うととても可愛く見える。俺とは種族も違うし大きさも全然違うからお嫁さんには無理なのが残念だな。



「ここだ。粗末な集落だが我慢してくれ」


ヒョウ族の集落は木々に囲まれた場所にあり、案内されたのは洞窟だ。他にはツリーハウスみたいななのがいくつかある。集落と言っても人数は少ないようだった。


「ジャガーねぇちゃんっ」


洞窟から顔を出したヒョウ族の子供がジャガーを見付けて駆け寄ってきた。獣寄りの顔立ちで背中から上腕、太ももまで毛皮で覆われている。獣度6といったところか。


「無事に帰れていたようで良かった。元気だったか?」


その声が聞こえたのかあと二人の子供が出てきた。皆獣度6くらいだし良く似ているから区別がつかん。子供といっても俺よりデカいからちょっと怖い。


3人の子供がジャガーに抱き付きはしゃいで喜んだ後に。


「これ誰?」


「私の命の恩人だ。長の所に案内してくれ」



こうしてポンタはヒョウ族の洞窟へと案内されたのであった。



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