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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第379話 火花散る控え室

 式に向けての準備は整った。と言っても俺が特に何かをした訳ではなく、全てアンジェとツバキ様が立てた計画通りに進んでいる訳だが。俺が介入したのは、精々“ちょっと待った”の対策くらいだろうか? うん、マジでそれくらいしか口を出していない気がする。世間からは駄目夫だと駄目出しを食らいそうだが、式のプランニングに参加させてもらえなかったのだから、仕方がなかったと諦めるしかないだろう。最善は尽くしたと、今はそう思っておきたい。


「ねえねえ、ケルヴィ~ン? どこで“ちょっと待った”を宣言したら、一番目立てると思う? やっぱり教会のキスシーン前? でも今回の結婚式って、文化が違ってやり方も変わってるって聞いたんだよね。だからこそ、妾もいつもとは違うドレスを着て来たんだけど――― って、聞いてる? 妾の話、ちゃんと聞いてる?」

「ああ、うん、聞いてる聞いてる、ちゃんと聞いてるって」


 しかし、どうして俺は今、控え室でマリアに絡まれているんだろうか? 一人称が同じ妾でも、今俺の隣に陣取っているのはマリアの方だ。ツバキ様の方は開始前の最終確認をアンジェとやっているところで、現在は不在中。ここでもサプライズを展開する為なのか、その打ち合わせにも俺は参加させてもらえず、なぜか本日の敵方とエンカウント。現在に至ってしまう。


 風と共にどこからともなくやって来たマリアであるが、彼女もまたトラージの着物を纏っていた。但し、こちらの着物はクノイチのものではなく、派手に派手を重ねた豪華絢爛なものだ。花魁風って言うのかな? どこにカテゴライズされるのかは分からないけど、兎にも角にも目を引くデザインである。尤もマリア本人がどう見ても幼い見た目なだけに、色気よりも可愛らしさが前面に出てしまっているのが、俺の素直な感想だ。もちろん、直接口には出さないけどな。


「妾、うっすい嘘は直ぐに分かっちゃうんだからね! 絶対本気で聞こうとしていないでしょ!?」

「そう言われてもな……」


 タイミングの話をされても、前述の通り、俺自身が今日の予定をよくは知らない訳で。うーん、ここはその辺をしっかり説明しておくか? いつまでも粘着されそうだし。


「えっ? ……ケ、ケルヴィン、新郎なのに今日の予定、何にも知らないの? 一緒に予定とか組まなかったの? それってどうなの? 妾、柄にもなく困惑しちゃうかも……」


 結果、マリアにそんな事を言われてしまった。よりにもよって、超絶自由人――― 否、超絶自由吸血鬼に引かれてしまったぞ。地味にショックである。


「俺の都合で全任せにしている訳じゃないから、そのマジな反応は止めてくれよ。仕舞いには泣くぞ?」

「あはは、そんな事を言われちゃったら、本当に泣かせたくなるかも?」

「子持ちの母親が言う台詞じゃねぇな…… まあ、アレだよ。今回の結婚式は俺に対してのサプライズ尽くし、っていうスタンスらしいんだ。だから何にも教えてもらえない訳よ」

「へえ、面白い事を考えるんだね? でも、なるほどな~。式の詳細を知っちゃったら、全然サプライズにならないもんね」

「そうそう、そういう事! だから宣言するタイミングを俺に相談するのは、全くのお門違いってこった。どうしても相談したいのなら、アンジェかツバキ様を当たってくれ」

「そっか~…… うん、分かった。今日のケルヴィンはとんだ役立たずみたいだから、妾、そうするね?」

「おいこら、“ちょっと待った”で泣かすぞ?」


 この吸血鬼、喧嘩を売るのが本当にお上手ですこと……!


「え~、妾を泣かすって聞こえたけど、気のせいかな~?」

「残念な事に、これが気のせいじゃないんだ。つか、そもそも勝負に勝つのは俺達なんだから、泣かすそれが勝利の延長線上にあったって不思議じゃないだろ? 安心しろ、目立った中で負かして泣かしてやる」

「ふーん、やっすい挑発だね~。そんな事ができるって、本当に思っているの? 昨日、妾の名刺を渡したよね? ひょっとして、まだ確認していないとか?」

「確認したわ。クッソ読み辛かったから、拡大してまで読み込んだわ。なあ、もう少し読む側の気持ちになってくんない? 絶対設計ミスってるぞ?」

「あ、やっぱり読み辛かった? そっかー、最近老眼の酷いヴァカラ爺からも不評だったんだよねー。ノリで作ってみたは良いけど、これは改善の余地アリ?」

「むしろ、改善の余地しかないだろ。そのヴァカラじーじとやらを、もっと労わってやってくれ。老眼でなくてもキツイんだから――― って、論点はそこじゃなくて!」


 袴と一緒にスズから渡された扇子をマリアに向け、俺は改めて言い切ってやる。


「あのクッソ見辛い名刺を見た上で、勝つのは俺達だと宣言する! 安心しろ、結婚式の方はマジでノータッチだが、“ちょっと待った”に関するところは、大いに拘らせてもらっているからな。俺達自身も、装備も、戦う場所でさえも対マリア用の特別仕様だ。今更卑怯とは言ってくれるなよ?」

「へえ、妾の為にそこまで準備してくれたの? ……良いね、それ。何だか、少し昔を思い出しちゃった」


 俺とマリアはどちらも笑顔だった。笑顔のまま視線をぶつけ合い、火花を散らし――― それを握手代わりとする。よし、楽しく話せたな!


「あ、ここから真面目な話だけど、タイミングについて悩んでいるのなら、マジでアンジェの方に相談してくれな? あっちはあっちでサプライズに苦心しているみたいだから、マリアも協力的に参加してくれると助かる」

「なら、アンジェちゃんに指定されたタイミングで宣言する事にしようかな? うん、そうしよう! それじゃ、最高の結婚式にしようね~♪」

「ああ、お互い頑張ろうな」


 すっかりご機嫌になったマリアは、そのままスキップしながら退室して行った。


「あっ、そうそう」


 扉を閉める寸前のところで、マリアが扉の隙間から顔を出す。


「どうした? 何か忘れ物か?」

「ううん、一応伝えておこうと思って。アダムっちゃんの部下の子達――― ええと、実験農場だっけ?」

「……ひょっとして、十権能の事を言ってたりする?」

「そう、それそれ! その十何とかって子達、昨日まで謹慎状態にあったけど、今日と明日の結婚式には参加するんだって。アダムっちゃんがよろしくって言ってたよ~」

「おー、そうなのか? 元々あいつらにも招待状は送っていたから、全然問題ないぞ? つか昨日のメルとの結婚式の段階で、一人来てなかったか? ほら、アダムスにアルハラをされていた奴」

「あー、そういえば居たね。一人だけ連れて来られて最初はハイテンションだったけど、途中で撃沈して静かになってたっけ」

「そう、そいつそいつ」


 まあ、昨日のは急遽連れて来たって感じだったから、元々は予定していなかったのかな。あからさまにアダムスの相手をさせられていたし。一方で、今日から正式参加って事は――― “ちょっと待った”の見学目的、だろうか? 後学の為、もっと強くなる為って感じの目的なら嬉しいんだけどな。義体の身なれど、今があいつらの強さの限界って訳じゃないだろう。ケルヴィムをはじめとして、他の面々ももっと強くなってくれれば…… 夢が広がるばかりだな! クハハハハハッ!


「……なんて、浮かれている場合でもないか。今更になって十権能の全員参加、何か思惑があると考えた方が良いか」

「だよね、絶対何かあるよね!? 詳しくは知らないけど、妾もそんな気がするの!」


 気が付けば、マリアが俺の隣に戻っていた。興味津々! といった様子で、目を輝かせている。


「……行かないのか?」

「何か面白そうな波動を感じたから♪」


 その後、アンジェとツバキ様が俺を迎えに来るまで、マリアは控え室に居座るのであった。

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