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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第377話 復興の御旗

 翌朝、まだ随分と早い時間帯ではあるが、俺達は移動の準備に取り掛かっていた。何せ、今日は水国トラージでアンジェとの式があるのだ。時間はいくらあっても不足してしまう。幸い、ここからトラージまでの移動は転移門で行う為、そこで時間をかける事はない。つか、そうでもしないと連日の結婚式なんて無理だからな。昨日今日と続いて参加してくれる招待客の皆も、俺達と同じく転移門で移動してもらう予定だ。尤も、ここまで足を運んでくれている時点で、参加する面子は錚々たる顔ぶれが揃っている。こちらが気を遣わずとも、勝手に何とかしてくれそうな信頼感があるよ。 


「まあ、そこも招待する側ホストの責務ってやつだな。行き帰りの足、必要であれば宿泊場所を確保するのは、基本中の基本!」

「あなた様、急にどうしたのですか? まさか、これからホストを目指すおつもりで?」

「そっちの意味のホストじゃないよ!?」


 とまあ冗談もそこそこに、そろそろ移動しなくては。一足先にアンジェがあっちに行っている事だし、俺も急がないと。


「えと、一応の最終確認なんですが…… ラファエロさん、剛黒の式場アダマンウェディングホール剛黒の宿アダマンホテル、本当にそのままにしておいて良いんですか? 頑丈なんで壊れる事はそうそうないと思いますけど、結構な場所を取っていますし、将来的に邪魔になると思いますよ? ほら、白翼の地イスラヘブンはこれから復興に向けて動いていく訳ですし」

「いえ、是非ともそのままにしておいてくだされ! 我々が責任をもって、この聖地を守り抜いてみせますので! このッ! 聖地をッッ! 我々がッッッ!」

「……その、無理に維持する必要はないんですよ?」

「無理などしていません! むしろ道理、そのど真ん中です!」


 天使の取り纏め役であるラファエロさんにここまで言われては、もう俺の方から止める事はできない。いや、結婚式をやった思い出の場所が残るのは、俺にとっても良い事なんだけどね? けど、再訪した時により聖地になっていそうで怖いと言うか、どうせ残すなら、以降も式場や宿として使ってやってほしいと言うか。


「そうです、この聖地こそが我らの生きる希望!」

「この聖地があるとないとでは、生活の質がダンチなんです!」

「そうですそうです! 復興の御旗として、この聖地は私達の心の支えとなるでしょう! ああ、この地の中心として復興していく未来が見えます! こうなったら、メル様とケルヴィン様の石像とかも建造しちゃいましょう! より神秘的にする為に、裸体にするのもアリだと思います! 必要とあらば、この私がそのお手伝いをハァハァ!」


 朝っぱらからテンションマックスのコレットが、周りの天使達に交じって熱いメッセージを投げつけてくる。元々その道のプロというのもあって、コレットはこの手の話が大好物なのだ。


「いや、だから何でそっちの交ざっているんだよ?」

「コレット、ステイ。流石の私も、そこまでは許容できませんからね?」

「ハッ……! わ、私は一体何を……!?」


 どうやら無意識のうちに参加してしまっていたようだ。そんなコレットを回収したところで、俺達は転移門を潜り、トラージへと移動する事に。


「メル様! ケルヴィン様!」


 と、その間際になって、ラファエロさんに呼び止められる。何だ何だ?


「あの子を、ルキルを救ってくださり、ありがとうございました。恥ずかしながら、ルキルとあなた方の間に何があったのか、その詳細までは把握しておりません。ただ、ある時を境に様子がおかしくなった彼女が、今は良い表情をするようになった。だから、本当にありがとう……!」


 ラファエロさんが深々と頭を下げるに次いで、天使の皆さんも次々に頭を下げ始める。ここまで真っ正面から礼を言われると、ちょっと照れてしまう。という事で、まっすぐな感謝の念を背に受けてつつ、俺はそそくさと転移門を潜るのであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「そういやラファエロさん達、一体いつの間にルキルと会ったんだ? 良い顔をするようになったっていう事は、白翼の地イスラヘブンを離れる前に顔を合わせたんだよな、ルキルと?」

「離れ際に挨拶だけして、それもルキルから口止めをされていたのかもしれませんね。ともあれ、彼女はもう大丈夫かと」


 トラージに転移門で移動するのは、これで何度目になるだろうか? ツバキ様にお呼ばれする機会が多いからってのもあるけど、軽い雑談を交えて移動する程度には慣れてしまった。


「あ、来た来た。ツバキ様、ケルヴィン君達が到着しましたよ」

「うむ、時間通りでじゃな。よくぞ参った、皆の衆」


 移動先の転移門の前では、トラージの着物姿のアンジェ、そして国王であるツバキ様が待ってくれていた。


「アンジェ、お待たせ。ツバキ様も今日はよろしくお願いします」

「うむうむ、今日はケルヴィンとアンジェにとっての特別な日となるのじゃ。いつも以上に妾に頼るが良いぞ」

「はい、頼りにしていますよ。ところで、例の件はどうなりました? こちらとしても、大分無理を言っている事は分かっているのですが、どうしても必要でして……」

「急ではあったが、竜神様も手伝ってくれたのでな。何とか間に合いそうじゃ、安心せい」

「そ、そうですか! 本当に助かります!」


 思わず、ツバキ様の手を両手で握ってしまいそうになる。が、その寸前のところで、俺の手は別のところへと誘導される事に。


「こらこら、ケルヴィンく~ん? 無意識とはいえ、女性の手に勝手に触れるのは感心しないな? と言うか、未来のお嫁さんであるアンジェさんが、目の前に居るんだよ? 握るならこっちにしなよ!」

「っとと……!」


 はい、いつの間にポジションをチェンジしたのか、俺の目の前にはアンジェが居ました。んでもって、手もギュッと握っております。うーん、何という物理的なイリュージョン。


「むむっ、妾は別に気になどせんぞ? 他の男ならそうかもしれんが、相手がケルヴィンであれば話は別。何せ、妾とケルヴィンは深い仲じゃからな!」

「はいはい、誤解を招く言い方をしないでくださいよ、ツバキ様。今、他の招待客の人達も移動して来るんですから。あと、ケルヴィン君はケルヴィン君で私に何か言う事はないのかな? 具体的には私の恰好を見て、何か言う事はないのかな?」


 一歩下がり、そのままクルリと回転して、自らの衣装を華麗に強調して見せるアンジェ。さっきも言ったが、アンジェは現在トラージの着物を身に着けている。式で着るものは別に用意しているから、これはツバキ様に貰ったのかな? 着物にしてはミニスカートの如く丈が短く、大変に動きやすそうな――― ってこの衣装、心なしか忍者っぽくない? いや、でもまずは感想を述べるのが筋か。アンジェがすっかり感想受け入れモードに入っているし。


「ああ、アンジェに凄く似合ってるよ。可愛くもあり、格好よくもあるって言うのかな? けど、少し気になる事もあって―――」

「うんうん! 良いですよね、その衣装! 実は我が家に伝わる、秘伝の装備の一つなんです!」

「っとぉぉぉ!? ス、スズ!?」


 唐突にスズが転移門から現れ、それと同時に彼女の大声が、俺の鼓膜にダイレクトアタックをかます。うん、見事にかまされたわ。普通にビビったわ。いや、転移門前に陣取っていた俺も悪いんだけどさ。


「あー、スズちゃんネタバレは厳禁だよー! 私が説明したかったのに!」

「はい、マスター・ケルヴィンの一番弟子、スズです! そして、すみません! アンジェさんにとっても似合っていて、嬉しくってつい!」

「あ、ああ、なるほど、そういう流れがあったのか。お陰で色々と納得がいったよ、うん……」


 ところでスズの奴、何か昨日のテンションが継続されていないか? 普通の会話も実況みたいな声量になっているぞ?

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