第375話 アダマンホテル
「あ~、食べた食べた! こんなに食べたのは久し振りだな~。おまけにフルコースだったし、すっごく美味しかったし! って事で、おばさん降参しま~す。あ、食後のお茶とかありますか?」
大食い対決はマリアの予想通り、久遠のギブアップ宣言により幕を閉じた。幕を閉じた以降もメルはフルコースを食べ続けていたが、それもマリアのダンスが終える頃に「ご馳走様」が宣言され、こちらの食事もストップ。ちなみに、この御馳走様は食材の在庫が丁度切れるのと同タイミングであったという。
その後にも仲間や友人達による催しは続き、急遽アダムスに呼び出されたパトリックが酒を飲まされ、食後の運動がてらにと久遠とスズの模擬戦が始まり、ケルヴィンが身を乗り出したのをジェラールが止め、数分して小腹の空いたメルがデザートを注文し、妾も目立ちたいとマリアが再びステージに登り始め、コレットはエフィルやアンジェ達から何やらピンク色のアドバイスを受けていて――― 披露宴は最初から最後まで、賑わいの中にあったようだ。
そして、本日予定していた日程の全てが終了。同時に、この日の為にケルヴィンが生成した剛黒の式場もその役目を終えた訳だが、天使達はこの会場を新たな聖地にすると、喜び勇み涙もしていた。コレットもその輪に入り、泣きながら有難がっていた。恐らく、この聖地は向こう何百年と手厚く保護されていく事になるだろう。
「入口にメル様とケルヴィン様の肖像画を飾りましょう! こう、デカデカと煌びやかにッ!」
「「「「「それ、採用!」」」」」
「待て待て!?」
ケルヴィンは全力で止めた。維持するだけならまだしも、テンションの上がった最中に繰り出されたコレット案は、あまりにあんまりだったのだ。
とまあ、そんな小さな騒動を間に挟みつつも、本日、招待客の殆どはケルヴィンの用意した剛黒の宿に宿泊する事に。もちろん、こちらの建造物も未来の聖地予定地である。
「結局、ルキルは最後まで来ませんでしたね。暫くは自分探しの旅に出ると、アダムスはそう言っていましたが、パクモグ……」
「まあ、元気に出回れるくらい元気になったんだって、そう喜んでおこう。それに、あいつにはあいつなりの考えがあるんだろうさ。 ……ところで、その握り飯はどこから持ってきた?」
「帰り際にエフィルがくれたのです。帰路の途中でお腹が空くだろうからと」
「そ、そうか……」
「それはそれとして、ルームサービスを頼んでも良いですか?」
「お前、まだ食うつもりか…… いや、ここってホテルと名付けてはいるけど、俺の魔法で作った建造物でしかないから、そんなサービスはないんだ。その代わり、前もってエフィルが用意してくれたミニバーがあるから、そこで小腹を満たしてくれ」
「おお、神サービスですね! エフィル、愛していますよ!」
本日の主役であったケルヴィンとメルも、このホテルの最上階に滞在している――― のだが、どうやらそこには、もう一人分の気配があるようで……?
「正にメル様に相応しいサービスです! ハァハァ!」
ルンルン気分のメルに熱い視線を送っていたのは、他でもないコレットであった。そう、今夜は彼女もこの部屋に宿泊する事になっているのである。その理由は言わずもがな、だろう。
「コレットもお疲れ、神父役をやってくれて助かったよ」
「いえいえ、むしろ御礼を言うのは私の方でして! この役目は絶対に私が遂行しなくてはと、予行練習の頃からずっとイメトレを重ねていたんです! 今日、その夢が遂に叶って、私、私ぃぃぃ……!」
「そ、そうだよな。ずっと前にやった予行練習の時も、コレットが頑張ってくれていたもんな。分かる、分かるよ、その気持ち」
ケルヴィンは感涙するコレットに胸を貸し、優しく頭を撫で続ける。恐らく、貸した胸は鼻血で酷い事になっているだろうが、今は考えない事にしたようだ。無心である。
「ああっ! あなた様、早速コレットとイチャイチャして! 一応、今日の主役は私なんですよ! 私も私も!」
「はいはい、分かってる分かってる。だから胸に飛び込んで来るにしても、その両手の食べ物を置いてからにしろよ?」
「いえ、食してから飛び込みます!」
「あ、そっちが優先?」
「ハァハァ、メル様と共にケルヴィン様の胸の中に飛び込んでいる私……! ここが桃源郷か……!? ひょっとしたら私、既に昇天してます……!?」
「あなた様、こちら側にまで血が侵食して来ています。早急な対処を」
「無心だ、無心」
―――それから数時間後、ケルヴィンはマリアから頂戴した『賢者の血』入りの小瓶を取り出していた。特にこれといった理由がある訳ではなく、何となく取り出しただけである。深い理由は本当にない。
「それが噂のマリア様の血…… 普通の血と比べて鮮やかな色合いですね。凝血せず、液体として保っているのも不思議です」
ケルヴィンからその小瓶を受け取り、まじまじと観察するコレット。先ほどまでのモードが嘘のように、現在は至極真面目な様子である。尤も、衣服は多少乱れているようだが。
「この血、途轍もない魔力量を感じますが、まだ力が残っているのでしょうか?」
「多分な。重傷のルキルを回復させる為に、媒体として一切の加減なしに使ったつもりだったんだが、それでももう何度かは同じ事ができそうな感じだったよ。この程度の量でこれなんだから、正直反則だよな」
「そんな反則級の血の主であるマリアが、明日の“ちょっと待った”の相手な訳ですが…… 正直なところ、勝機はどれほどあると考えています?」
寝転がりながら、メルがそんな事を尋ねる。流石にお腹が満たされたのか、今は食べ物を持ってはいないようだ。尤も、こちらも衣服が多少乱れて以下略。
「マリア本人がどれだけの力を有しているのかは、正直予想が立てられない――― と、そう言うところだったんだが、実は式場でマリアの奴からこんなものを貰ったんだ」
ピッと、ケルヴィンが小さな紙を取り出す。
「それは…… 名刺、ですか? やけにカラフルですね」
「奴が言うに、アイドルの名刺なんだとさ。ご丁寧にサイン付きだ」
「は、はぁ、なるほど…… それで、それがどうしたんです?」
「表面はまあ普通、と言って良いのか分からないが、所属事務所やら名前やらが載っているんだよ。けど、問題は裏面だ。小さいから見辛いと思うけど、頑張って読んでみてくれ」
「……? よく分かりませんが、拝見させて頂きます」
メルとコレットが名刺の裏面を覗き込む。そこには、ある情報が記載されてあった。
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マリア・イリーガル ■■10歳 女 ヴィスアシェンプテル
職業 :偶像LV13(19930/20000)
HP :361620/361620(+50000)
MP :169340/169340
筋力 :92312
耐久 :44884
敏捷 :73784
魔力 :39948
知力 :41224
器用 :100928(+10000)
幸運 :53948
スキルスロット
◆歌唱LV100
L歌姫LV100
L歌神LV3688
◇風魔法LV100
L風翠魔法LV100
L狂飆魔法LV3639
◆舞踏LV100
L舞王LV100
L舞神LV3376
◇格闘術LV100
L格闘王LV100
L格闘神LV3305
◆演技LV100
L俳優LV100
L大御所LV2436
◇再生LV100
L超再生LV100
L不死身LV3168
◆話術LV100
L雄弁LV100
L神話LV2139
◆危険察知LV100
L危険網羅LV100
L危険全知LV1890
◇瞬発力LV100
L縮地LV100
L瞬神LV2811
◆軽業LV100
L妙技LV100
L天人LV1852
◆鼓舞LV100
L御旗LV100
L象徴LV1258
◆指揮LV100
L総締LV100
L支配LV856
◇魔法武器LV100
L魔法兵器LV100
L魔法神器LV1202
◆交友LV100
L親交LV100
L魅了LV635
固有スキル:賢者の血
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