表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
913/1031

第303話 卒業式

 清々しい、ああ、今日はなんて清々しい日なんだろうか。空を見上げれば雲一つない青空が広がり、心地よい陽気が辺りを満たしている。格式高そうな人達と挨拶や雑談を交わす事だけは、唯一面倒ではある。けれども、そこに目を瞑りさえすれば、今日は門出に相応しい最高の日であった。門出、そう、今日はルミエストの卒業式が執り行われる、とても大切な日だ。


「う゛お゛お゛お゛お゛ぉぉぉん……! ベルぅぅ……! 最高の卒業生代表挨拶だったぞぉぉぉ……!」

「リオンもよく……! 本当によくぞここまで頑張ってくれだぁぁぁ……! お前は俺の誇り゛だぁぁぁ……!」

「学食って、保護者も使って良いんでしょうか?」


 で、そんな大切な日に俺は何をしているのかと言うと、保護者として卒業式に参加しているところである。メルと義父さんも一緒で、今は共に余韻に浸っているところだ。卒業式自体はもう終わっており、今は学園内のベンチにて絶賛男泣きに尽力中。どれだけ涙を流しても、いくら感情を爆発させようとも、それらが収まる気配は今のところない。メルだけは呑気に茶(特大サイズ)をすすっているが、俺と義父さんは駄目だった。うん、もう涙で前が見えないの……


 まあ、そんな風に言ってはみたものの、俺に限っては『並列思考』の一つがギリギリのところで冷静さを保ってはいる。うん、ズバリこの並列思考の事だ。他の思考は全滅も全滅、涙なしでは語れない感動の嵐の中で、揃いも揃って存分に舞っている最中なのだが、リオンの記念すべき卒業式で変な事をしたら不味い! という至極真っ当な考えの下、ここだけはギリギリ耐える事ができたのだ。いやあ、よく自壊せずに持ったな、この並列思考。偉いぞ、俺の並列思考。褒めて遣わす。


「けど、一番偉いのはやっぱりリオンな訳でおろろぉぉぉん……!」

「何を言っでおるが愚息ぅぅ……! 全校生徒全教師更には父兄の方々の前で立派に挨拶を言い切ったベルが偉いに決まってるではないがぁぁぁ……!」

「あっ、茶柱が。これは学食に行っても良いという天啓でしょうか? そうですね、そうに違いありません!」

「ぞれは止めどげぇぇぇ……!」


 あ、危ねぇ……! 油断すると直ぐこれだよ! 卒業式後の余韻も関係なく破滅が迫るよ! ……改めて、俺の冷静なる並列思考、よくぞ無事でいてくれた。でなければ、メルが学食を粉砕するところだった。卒業式という大事に日に、学園の七不思議的なものが増えるところだった。うん、マジで。


 見た目は至って普通の様子、なのに何をしでかすか一番分からない。それが本日のメルの立ち位置だ。分かりやすく言えば、遊園地に来た子供の如く舞い上がっているのである。表面上の態度は兎も角、中身がそうなっているのである。学食という珍しい形態の食堂に加え、卒業に伴って普段は見ないような出店も結構並んでいるからな。お陰で並列思考(冷静)の俺はひと時も油断できない。メルに比べれば、まだ義父さんの方が大人しいくらいだ。


「ああ、そうだ、この感動を記録に残し、後世に伝えていこう…… ベルの為にパパ、帰ったら筆を執る……! うむ、ベストセラー間違いなしだッ!」


 ……たまにこんな予想外な発言をする事もあるが、学園や周囲の者達に実害が生じる訳ではないので、ギリセーフである。仮にその記録が出版されるような事になったら、ベルにのみ実害が生じるかもしれないが…… その時は義父さん、ベルに断罪されるだろうなぁ。


「そ、それはナイスなアイディア……! よし、俺もリオンの為に――― 筆を執るッ!」


 おい馬鹿止めろ、感極まってる俺! 一時のテンションでそんな事をするな、リオンに嫌われるぞ!?


 ……とまあ、冷静な俺は過労するレベルで忙しい訳だ。ただまあ、そんな何とも近寄りがたい感じでベンチに座っているものだから、現在俺達に挨拶をしに来る者は皆無。えっ、アレに話し掛けないといけないの? S級冒険者や北大陸の有力者とは、確かに人脈を築きたいと思っているけど、本当にアレに話し掛けないといけないの!? などと、そんな空気が遠巻きにヒシヒシと伝わってくる。まあ、今ばかりはそれも有難い。だって冷静なる俺、俺を含めたこの三人への対応で手一杯だから。これ以上は過労死するから。


「あなた様」

「クッ、やはり執筆は駄目か……! って、どうした、メル? 何度言ったって、学食を荒らしに行くのは駄目だぞ?」

「いえ、そちらの話ではなく、これからの事を再度確認しておこうと思いまして」


 空になった特大コップをベンチに置き、真面目な表情を作るメル。何だ何だ、さっきまでとのギャップが凄い事になっているぞ?


「本日をもって、リオンとベルは学園を卒業します。飛び級を重ね、一年という短期間で卒業の条件を満たし、ベルに至っては主席での卒業――― これ以上ないほどの、実に素晴らしい成績と言えるでしょう」

「だな、俺も誇らしいよ」


 ちなみにであるが、ドロシーの奴もちゃっかりと卒業生の中に入っていたりする。何でもリオンと同じ講義を受けまくって、一緒に卒業条件を満たしてしまったんだとか。いやはや、友達だからって同じ講義ばかりを受ける必要もあるまいに。まあ、それだけリオンと仲良くしてくれているって事かね? “ちょっと待った”に本気で参戦してくるくらいだし。


 あ、でもその代わり、雷竜王の方は卒業できなかったみたいだ。あっちもあっちでリオンと一緒に卒業する事を目指していたそうなんだが、圧倒的なまでに単位が足りなくて、あえなく断念。それどころか留年の危機にあったとかで、少し前まで相当大変な目に遭っていたらしい。リオンが居ないなら、学園を辞める! なんて発言も飛び出したんだが、獣国ガウンの推薦を受けて来た上で、そんな我が儘が通る筈もなく――― まあ、最終的には死ぬ気で頑張って、進級には至ったんだとか。


 ともあれ、来年の今頃も同じ過ちを繰り返さないよう、雷竜王にはこれからも頑張ってもらいたいものである。いや、だって竜族の頂点なんだよ? 王様だよ? そんな彼女が留年なんてしていたら、マジで笑うに笑えないって。あ、でもうちの竜王ズが仮に入学した場合も、同じ結果に陥ってしまいそうな気も…… 竜族の未来は大丈夫なんだろうか?


「あなた様、何か変な事を考えていませんか?」

「いやいや、俺は至って真面目だぞ。真面目に考えて、未来を憂いていた」

「何だかとても怪しい気配がするのですが…… ただ未来を憂いているのは、私も同じです。何せ、リオンとベルが卒業したとしても、この学園には在校生としてクロメルが残るのですから。警護役のベルがいなくなってからは、一体誰がクロメルを護るのでしょうか?」

「え? ……あっ、本当だ! 警護役が居ない!?」

「そそそ、それは一大事なのででではないかががががッ!?」


 今更な事実に今更気付き、激しく動揺する俺&義父さん。俺はもちろんの事、クロメルは義父さんにとっても大事な孫のような存在だ。だから、まあ、こうなってしまうのは、ある意味必然であった。


「やはり気付いていませんでしたか…… それで、どうするのです? 代わりの警護役を誰かにお願いしますか?」


 慌てふためく俺達を見て、メルは大変に呆れた様子だった。だが、心配は無用。今の俺は流れで動揺してしまっているが、卒業式に参加する前、要は随分と前に対策は講じていたのだ。と言うか俺、S級の『胆力』を持っているのに心乱し過ぎじゃない? いくらリオンとクロメル絡みの事柄とは言え、スキルの効果打ち消し過ぎじゃない?


「どどど、どうしよう、義父さん!?」

「どどど、どうしよう、愚息!?」


 だから大丈夫だって! 俺、しっかりして!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ