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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第282話 ロマンスの欠片

 ああ、今日は何だか頗る疲れる日だったな。これが戦闘による疲労であったのなら、今夜は良い気分で眠れたんだろう。が、実際は接待疲れに似たようなもんだったし…… いやー、マジで精神的に疲れた。うん、疲れた。


 アダムス、マリア、そしてツバキ様をも巻き込んだ酒宴は、エマという尊い犠牲者を出しながらも大層盛り上がり、そのうちに幕を閉じた。“お話合い”の方も想像以上に進展したし、俺としても満足のいく内容となった。まあ、それにしたって皆酒を飲み過ぎだとは思うんだけど。その量を俺に強要されても困るんだけど。


 で、酒宴が終わった後にその足で帰還しようと思っていた俺なんだが、ツバキ様の厚意で今夜は城に宿泊させてもらう事になった。厚意と言うか、有無を言わさぬ圧があったと言うか、その辺は正直微妙なところだったけど、まあそうなってしまったのだ。ついでに文無し宿無しの久遠もご一緒する事になったみたいで、俺と久遠、そして元より客将として滞在しているシルヴィア、エマの面子で城へとレッツゴー、である。


 城では二次会めいたカラオケ大会、いや、すっかりアイドルになる気になったツバキ様のオンステージが待っていた訳だけど、素晴らしい歌声を聞かせてもらえて、ここはむしろ役得だったと言える。ただ、歌っていた曲の種類、全部演歌だったんだよな。アイドルに演歌ってアリなんだろうか? 共にユニットを組むゴルディアーナは兎も角として、マリアとかは全然演歌のイメージないんだけど。


「いやはや~、今日は食べた食べた~。もう一年分の焼き鳥を摂取したって感じだったね~」

「ん、それでも明日にはまた食べたくなるのが、焼き鳥の魅力」


 んでもって現在、オンステージ後にトラージ城の檜風呂を堪能した俺は、談話室にて久遠&シルヴィアとバッタリ遭遇。そのまま軽く会話を交わすに至る。


「お前ら、まだ焼き鳥の話をしてんのか」

「当然。これから部屋に帰って、お土産用に購入した焼き鳥をいただこうと思っていたところ」

「右に同じく!」

「その上でまだ食う気なのか……」


 メルほどではないにしても、やはりこの二人の胃袋も化け物級である。


「そういや、久遠はマリアと一緒に帰らなくても良かったのか? あの後、ルキルの見舞いをするとかで、北大陸に向かったんだろ?」

「私は空なんて飛べないからねー。マリア、お土産の焼き鳥を温かいうちに持って行くって張り切っていたから、私の泳ぎなんかじゃ追いつけないスピードを平気で出すだろうし。とてもじゃないけど一緒になんて帰れないよ。そもそも、飲酒後の水泳は危険なんだよ?」

「お、おう、それもそう、だな……?」


 久遠に一般常識で諭されると、何でか不思議な気分になってしまう。なぜだろうか?


「そんな事よりも、おばさんは結婚式の話の方が気になるかな。あの邪神様やうちのマリアを招待しちゃって、本当に良かったの? それに、“ちょっと待った”制度なんてものを導入するなんて、傍からすれば自殺行為でしかないよ?」

「心配してくれている割に、楽しそうにものを言うじゃないか。その様子だと、久遠も参加してくれるのか?」

「んー、周りの様子を見ながら考えるかなー。希望者が少ないようなら、空いた枠を使って参加したいくらいの意気込み」

「あれ? 意外と消極的?」

「だってさ、ぽっと出の私なんかよりも、ケルヴィン君の結婚に恨みを抱いている人が居るかもでしょ? 七人しか参加できないんだし、そんな人達を差し置いて参加なんかできないよ~」

「その配慮はありがたいが、個人的にはもっとこう、ガツンと来てほしい気もしてだな」

「フフッ、複雑な乙女心だね」

「誰が乙女だ。それに、だ。こんな催しを考えておいて何だが、参加してくれる奴らなんて、パッと思い付くのは数人くらいだぞ?」

「パッと思い付くだけでもさ、“ちょっと待った”をしてくる人が数名も居るのは、正直どうなのかな?」

「えっ?」


 普通の事、じゃないのか……?


「ん、それって参加したらご馳走食べられる?」

「ご馳走? いや、別に参加しなくてもゲスト全員にご馳走は出るから、それ目的でやるものではないぞ」

「そっか。なら、私は別にいいかな」

「お、おう?」


 シルヴィアよ、仮にご馳走が出るって言ったら、俺の結婚に反対するつもりだったのか? 待ったするつもりだったのか? とても人に言えた立場の人間ではない俺だけど、それはどうなのかとちょっと問いたい。


「あははっ、シルヴィアちゃんの行動原理は一貫してるね~」

「ん、飽くなき探求心」

「一体どういう事だよ……」

「私はその気持ち、少し分かるかな!」


 もしもし、久遠さん? さっき問いてた一般常識、どこにぶん投げてきちゃいました? その調子で参加しません?


「じゃあさ、ケルヴィン君的には今のところ、誰が“ちょっと待った”に参加すると思ってるの?」

「んー、そうだなぁ…… 宴の場であんなに乗り気だったし、マリアとアダムスはまあ確定だろう。あとはルキルの奴も、十中八九メル目的で参加すると思ってる。うちの世界からは義父さん――― セラの親父さんが殺る気だろうし、トライセンのアズグラッドもシスコン振りを発揮して、参加してくれるんじゃないかな?」

「ふむふむ? それじゃ、今のところは希望者は五人? あれ、意外と少ないかも?」

「あくまでも確定枠での話だよ。中には愉快犯的に何をするか分からない連中も居るからなぁ。ほら、先代の勇者様とか、冒険者ギルドの総長様とか、どこかの獣王様とか、裏で何か企んでいそうな姫王様の刺客とか」

「えっと…… おばさんはよく知らないんだけどさ、ひょっとしてそれ、殆ど身内じゃない? 何なら、今お世話になってるツバキちゃんも入ってるし」

「フッ、気付いてしまったか」


 そう、この世界はアダムス以上に行動原理の読めない奴ばかりなんだ。俺としては嬉しい限りだけど、常識という物差しで物事を測ると、少しばかり痛い目を見る事が多いのだ。


「ここだけの話、この“ちょっと待った”を提案したのはツバキ様だしな。この制度を利用して、何かしらのアタックを仕掛けてくると、俺はそう思ってる。確信までしてる。何なら、客将扱いのシルヴィアやエマをぶつけてくる事まで考えてる」

「え、私?」


 シルヴィアが自らに指を差しながら、首を傾げた。自分には無関係な話だと思っていたんだろう。まあ、さっきの今だしな。


「確かに主催側としては、ご馳走を景品代わりにするつもりはない。けどさ、それとは別にツバキ様が、その勝負に勝ったらトラージで一番美味しいご飯を食べさせてやる! なんて事を言い出したら、シルヴィアはどうする?」

「……相当やる気になる?」

「だろ?」


 御馳走目的で“ちょっと待った”されるのもどうかと思うけど、それを言い始めたら、マリアやアダムスが参戦してくる事こそ、おかしな意味合いになってしまうからな。さっきは問うだの何だのと言ってしまったが、俺は全ての理由を許容しよう。そう、皆で後腐れなくバトる事ができれば、理由なんて後付けでどうにでもしてくれ! ってのが、俺のスタンスなのだ。


「そっかー、そんな気軽く参加できる感じなら、私も参戦を検討しよっかなー」

「おっと、その気になったか? 希望者の人数が多くなったとしても、何だかんだで久遠なら枠を勝ち取りそうだし、正直滅茶苦茶期待してる」

「“ちょっと待った”を期待する新郎もどうかと思うけど、そういうスタンスなら仕方ないね。おばさん、前向きに考えておくよ」

「私も場合によっては頑張る。それで昇格式の約束、今度こそ果たす」


 御馳走を期待してなのか、シルヴィアの鼻息はほんの少し荒くなっていた。にしても、昇格式での約束? 俺、何を約束したっけ?


「へえ、約束? おばさん、何だかロマンス的な何かを感じちゃうなぁ。シルヴィアちゃん、何を約束したの? 私にも教えて教えて~」


 久遠、俺以上に興味津々。


「ん、全力でケルヴィンを殺すって約束」


 で、シルヴィアの回答がこれである。あー、そんな約束もしてたっけなぁ。懐かしい。


「……わあ、ロマンスの欠片もない約束だった。ケルヴィン君、流石のおばさんもそれはどうかと思うけど、戦闘狂故仕方なしってやつなのかな?」

「い、いや、その時は即死が回避される特殊な状況だったから、そんな約束をした訳で」


 ちなみに式での即死回避術は、コレットに頑張って頂く予定です。

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