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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第268話 お前を転ばす

 模擬戦続行! とは言え、このままでは先ほどの繰り返しになってしまう為、何かしらの対策が必須だ。そうだな、まずは正攻法から行こうか。


安息の棺ユーサネイジア!」


 俺自身を内部に収納する形で、棺型の結界を展開。周囲を結界で覆い隠し、外界との接触を物理的・魔法的にシャットアウトする。結界の内部に魔力を流す事ができない以上、これでベクタで直接俺にどうこうする事はできなくなった。さあ、どうする?


「あ、もしかして私を試してる? じゃあ、こうしようかな?」


 久遠がそう言った直後、棺の外側に二つの見えない手が、結界を掴む形で出現した。やはりアンジェのように結界を素通りする事はできないようだ。しかし、何をする気だ?


「シャッフル!」

「ッ!?」


 次の瞬間、俺の居る棺内部はハチャメチャと化した。上下左右前後、棺自体が無秩序に激しく揺らされ、まるで多重衝撃ハイパーインパクトを受けているかのように、障壁内部の壁から壁へと衝突する。ハードを周囲に纏っている為、物理的なダメージは皆無だが――― うぷ、これは酔う……!


「あれ、もう結界を解除しちゃうの? 結界ごと回す大回転とか、まだやりたい事があったのにな~」

「ぜぇ、ぜぇ……! いや、今回のこれは想定していなかった俺が悪かったよ……」


 堪らず安息の棺ユーサネイジアを解除し、小さくも凶悪な嵐から解放される。間髪をいれずに『爽快リリーフ』で回復――― ハァ、落ち着いた……


 いやー、しかし結界ごと俺を振り回すとか、なかなか無茶をなさる。『魔力超過』で棺のサイズを大きくして、内部空間に余裕を持たせるって手もありはしたが、正直あの状態を続けても意味はないよな。内から外へも攻撃できない訳だし、状況が好転する事はまずなかっただろう。唯一の収穫は、久遠の使う別世界の魔法も、この世界の魔法と同様に遮断は可能である事が確認できた事だ。ステータスなどのシステムは違えども、本質は似ているのかもしれないな。


 ―――じゃ、気を取り直して、次。


束縛の泥沼マッドバインド

「おっと?」


 久遠の足元に底なし沼を発生させるも、声とは裏腹に特に驚く様子もなく、奴は宙を蹴ってこれを躱す。


「まだまだぁッ!」


 奴の移動先に標準を合わせ、大小様々種類豊富な攻撃魔法を展開する。それこそ、目が回ってしまいそうなほどの量を、だ。


「わあ、テーマパークみたいで綺麗だね。でも、なるほどなるほど。魔法使いらしく、遠距離からの殴り合いをしようって話かな?」

「そういう事だ。尤も俺は魔法使いじゃなくて、召喚士なんだけどなッ!」


 敵の攻撃が必中かつ対処不可能なのであれば、やられる前にやれば良いだけの事だ。至極単純な答えにはなるが、これこそが戦いの摂理でもある。さあ、存分に殴り合おうか!



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 それから俺達は魔法という名の拳で、目一杯理不尽をぶつけ合った。俺は同時展開できる最大数の魔法を常にぶっ放し続け、久遠もベクタで負けじと殴り蹴り投げ突きを放ち続ける。攻撃するのにも忙しかったが、負けの条件である土を付けられる・・・・・・・を如何に回避するのもかも、相当に頭と体を使うものだった。何せ、敵はあの手この手で俺を床に叩き付けようとしてくるのだ。最大規模の攻撃を維持しつつ、自らの身を護るのは本当に苦労の連続だった。


 ただ殴られるのはまだ良い。剥き出しの顔面以外の場所は、どこに攻撃されようとも意味を成さないからな。ただ、それは久遠も早々に察していたようで、途中からは打撃に不可思議な力が籠り始めた。それが外を護るハードを透過して、肉体の内部へと衝撃を伝えるというものだ。拳から伝わるダメージの類は完全に防いでいる筈なのに、芯に響くと言うか、芯から爆発すると言うか、なぜか俺の内臓に暴力的な痛みが働くのだ。俺もよくは知らないんだが、気功とか発勁はっけいによるものなんだろうか? 確かこの技、スプリングの奴も使っていたっけ。まあ技の完成度については、比較するまでもなく久遠の方が上だったんだが…… 兎も角、これを繰り出すようになってからは、打撃技も油断ならなくなった。


 それに加え、久遠は急所も容赦なく攻めてくる。具体的に言えば、目とか目とか目とか金的とか――― 今回の模擬戦で、一体何度両目を潰されただろうか。いやあ、必中の投げも対処に困ったもんだけどさ、必中の目潰しとか何だよと思う。どんなに早く気付いても、ベクタで作った久遠の指先が、俺の眼球に突き刺さってんだもん。顔を覆い隠すように透明な障壁と作ったりもしたけど、それも力と技で捻じ伏せて無理矢理突いて来ようとするしで、滅茶苦茶に痛かった。砕け散った障壁の欠片が顔に突き刺さったりもして、二次被害までもが酷い有様だ。眼球や顔面を回復する度に潰される俺の気持ちにもなってくれ。まあ、ハードのお陰で金的は防ぐ事ができたんだけどさ、金的に発勁が合わさって来ていたら、きっと悲惨な結末を辿っていたと思う。いや、マジで。


 で、止めとばかりに本気のファンタジー系の格闘術も披露された。最早これを格闘術の技と評して良いのかも分からないが…… ともあれ、解説しよう。ベクタの手で体の一部を掴まれた時点で、俺の体が一切動かなくなってしまったんだ。本人は合気の応用とか言っていたけど、本当に指先一つ動かす事ができなかった。ついでに口も舌も動かない為、魔法を詠唱する事もできない。それでも不幸中の幸いと言うべきか、無詠唱での魔法の発動はできたんだが、コンマ一秒を争う戦いでこれをやられたら、もうアウトである。


 ―――そんな訳で、今回の模擬戦はコテンパンにやられました。


「ん~~~……! いやはや、良い汗をかいたね。食後の運動にピッタリだったよ~」


 両腕を伸ばしながら、満点の笑顔を見せる久遠。


「通算成績、三十七戦三十七敗か。ハハッ、まさかここまで一方的にやられるとは…… けど、何だろうな。不思議と心は満ち足りてる。昔、メルとやってた修行の日々を思い出したよ」

「おっ、青春してるね~。何々、そのメルさんとやらにも、目潰しとか金的されたの?」

「流石にそこまでの事はされなかったよ。精々、油断すると関節決められて骨を折られたくらいだ」

「なるほど、健全な関係だったんだね~」

「そうか? ……それよりも、少し聞きたい事があるんだが」


 そう言って、俺は久遠の両手に視線を移した。俺に大量の魔法を浴びせられ、その度に己の肉体のみで対処していた久遠は、決して無事とは言えない状態だ。特に直接魔法と接触する機会の多かった彼女の拳は、痛々しいくらいに負傷している。今、笑顔を維持しているのが不思議なほどだ。


「何かな、ケルヴィン君?」

「あんだけ戦ったにしては、傷が浅過ぎると思うんだけど…… 気のせいかな?」


 しかしこれは、あれだけの魔法を掻い潜ったにしては、軽傷も軽傷、信じられないほど無傷に近いとも言える。それだけ俺は容赦なく『魔力超過』込みで魔力を使ったし、封印や状態異常を引き起こせて一杯食わせようともしたんだ。腕の一本くらいはもらっておかないと、ちょいと計算が合わない。いや、その計算以上に不可解な事もあった。


「戦いの最中、俺はアンタに超重力を負荷させたり、格闘術には欠かせない肉体の可動部を封印しようともした。けどアンタは、その超重力がなかったかのように動いていたし、封印の方は壊されたってよりも、自壊に近い形で砕け散っていった。ひょっとしたら体質的に、魔法が効かなかったりするか? あ、いや、ダメージの類はしっかり受けているから、魔法の一切を無効化してる感じではないと思うんだが……」


 具体的に言えば、シルヴィアの魔法を無効化する固有スキルとは、似ているようでちょっと違う気がするんだよな。


「おおっ、そこに気が付くとは流石だね~。んー、どうしよ? これ、言っちゃっても良いのかな? ……良っか、別に隠してる事でもないし! うん、それは私の固有スキル『波羅蜜はらみつ』のお陰なんだ」

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