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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー2 白翼の地編
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第197話 降下開始

 聖杭ステークの帰還機能による、世界を彷徨う白翼の地イスラヘブンの位置探知、そして結界の突破に成功した俺達は、現在白翼の地イスラヘブンの上空に居る。聖杭ステークより飛び降り、下降する直前と言ったところだ。ちなみにスズ達は見学組なので、聖杭ステークでお留守番である。


「まさか、あの甲冑の中に洗脳状態のグロリアを連れて来ていたとはな。流石の俺も予想外だったぞ。まだその甲冑の中に居るのか?」


 出発間際、ふとケルヴィムが俺に話し掛けて来た。視線の先に居るジェラールを、興味深そうに見詰めている。


「むむっ、何やら薔薇色の視線を感じるぞい! ワシ困惑! マジ困惑!」

「む? 急に妙な動きを始めたぞ? 中のグロリアが暴れているのか?」

「いや、そういう訳じゃないんだが…… ええと、あんまり見詰めないでやってくれ。訳あって、あいつは熱い視線が苦手なんだよ」


 慌てふためくジェラールに、何とも言えない哀愁を感じてしまう。


 まあ、それはさて置き、ケルヴィムの言う通り、実のところジェラールの鎧の中には、グロリア(セラの血染状態)が入っていたのだ。聖杭ステークを動かす際にセラに命令させ、『間隙かんげき』の権能で道中の距離短縮を試みたんだが…… 嘘みたいに上手くいったんだな、これが。出発! よし、もう到着! という、ワープ染みた移動をした聖杭ステークは、信じられない速さで白翼の地イスラヘブンへと辿り着いた。それはもう発案した俺でさえも驚く、前のめりな到着だ。俺でこれなんだから、敵の奴らなんてそれ以上に驚いているんじゃないかな?


「ちなみにだけど、ジェラールの中に居たグロリアは、さっき召喚術で帰還させたよ。今頃は北大陸の避暑地でまったりしていると思うぞ」

「北大陸? グロリアを鍛錬に付き合わせたという、西大陸のダンジョンでなくてか?」

「俺らが出払っているから、そっちは見張る奴が居なくてさ。まあ、安心して任せられる悪魔に預けたから、逃げられる心配もないと思うぞ」

「北大陸の悪魔? ……ああ、なるほどな」


 俺が誰の事を言っているのかを理解したのか、ケルヴィムは納得してくれた様子だ。


「へえ、これが天使達の大陸なのね! 建造物とかのセンスは微妙だけど、あらゆるものに魔力が満ち溢れているわね! ここで魔法を使ったら、いつもより威力が出そう!」


 一方で、そんな北大陸の悪魔に近しい人物の声が耳に入って来た。そう、悪魔的なセンスを誇るセラである。


「セラ、興奮し過ぎて降りる時に舌を噛むなよ?」


 今にも飛び出して行きそうなセラに注意を促す。悪魔の翼やら尻尾やらがうずうずしていて、ちょいと落ち着かない様子だったのだ。


「失礼ね、噛まないわよ! 私の事よりも、こんな状況になっても食べ続けているメルを注意しなさいよ。今度はターキーを食べ始めたわよ?」

「ふぁい?」


 モグモグと口を動かすメルの両手には、大きな大きなターキーが握られていた。オー、イッツビッグなターキー……


「セラこそ失礼ですね。食べる事において、私に並ぶ者は存在しないのですよ? 食べるとはよく噛む事、つまり私は咀嚼のプロなのです。そんな私が自らの舌を噛むなんてミス、するとお思いですか? たとえスカイダイビングの最中であったとしても、私は問題なく食事を遂行できます!」


 ドヤッ! と、いつもであればセラがやるであろう表情を、器用にもターキーを口にしながら作り出すメル。確かに、これだけ器用なら、まあ…… と、謎の説得力があった。


「おい、ケルヴィン。イチャついているところ悪いんだが―――」

「「イチャついてねーよ(ないわよ)!」」

「フフッ、そんなイチャついているだなんて、そんなそんなムシャムシャ」


 シン総長に対し、俺達は息の合った反論をしてやった。そして、メルはターキーを食った。


「いやまあ、そこは正直どうでも良いんだけどさ。あのドロシーとかいう子、先に行っちゃったけど?」

「えっ?」


 総長が指差す方を見ると、そこには巨翼を使い、猛スピードで白翼の地イスラヘブンに降下するドロシーの姿が――― って、何フライングしてんの!?


「おっと、私もドロシアラちゃんに負けてはいられないな。セルジュ・フロア、出るよ!」

「俺も先に行かせてもらうぞ。エルドは俺が討つ」

「待て待て、お宝は私のものだ! ギルドの代表として、世界の遺産を確保してやろう!」

「そいじゃ、ワシも行くとするかの。中身が空になって、頗る動きやすいぞい!」

「よっしゃあぁぁッ! ムド、ボガ、俺達も行くぜ! 目指すはプリティアちゃんの場所のみぃぃぃ!」

「地獄の日々で溜めた鬱憤、ここで晴らす……!」

「ま、待っでけろ~~~!」

「プリティアお姉様、今助けるからねんッ!」


 ドロシーに続くように、続々と降下を開始する仲間&協力者達。結局、イチャついていた俺とセラ、飯が第一のメル、あちゃーという顔になっているシュトラが、取り残されたのであった。


「「………」」

「完全に出遅れましたね。あなた様が人目を憚らず、私達とイチャついていたせいですよ?」

「お前は飯を食っていたせいな……」

「もう、お兄ちゃん達ったら」


 シュトラには完全に呆れられてしまっているが、まだまだ戦いは始まってもいないんだ。遅れを取り戻す事は十分に可能だろう。しかし、あれほど我先にと戦いに向かったって事は、バトルに興味を持っている事の裏返しでもある。なるほど、皆そこまで戦いが好きだって事か。フッ、バトルジャンキー仲間として、俺も鼻が高いよ。


「セルシウス卿、まだここに残っているのは、私の美しさの独り占めを狙っての事かい? ああ、そういう事ならこのアート、いくらでもセルシウス卿の願いに協力しよう! ほら、ほらあッ!」


 ……あ、いや、ルキルとアート学院長もまだ居た。君達も出遅れ組かい? 仲間かい?


「そんな仲間を見るような目で私を見ないでください。私にはこの聖杭ステークを死守する役目がありますので、別にスタートダッシュに失敗した訳ではありませんよ」

「私も以前に話したように、初めから後方支援が目的だ。この聖なる遺物をライブ会場として、大陸中に我が音色を届けてあげよう。私の繊細かつ大胆な演奏は、能力の向上と様々な支援効果を仲間達に与え、敵の十権能の耳には刺激的な爆音を轟かせる。ああ、安心してくれ。いくら美しい私が目立とうとも、私の超人的な回避能力はこのライブ会場にまで適用され、敵の迎撃攻撃の全てを無意味なものに―――」

「―――よし、俺達もそろそろ出発しよう。シュトラ、俺と一緒に降下しような」

「うん、ケルヴィンお兄ちゃんの背中に乗らせてもらうね」

「わっ、ケルヴィンったら役得ね~。フライングしたジェラールが嫉妬してそう」

「まあ、今回ばかりはジェラールが悪いですね。仮孫に良いところを見せようと、張り切り過ぎていたのかもしれませんが」


 こうして俺達は聖杭ステークを飛び降り、十権能との戦いの場を目指すのであった。


「……ルキル君、私の美しさに見惚れてこの場に残ってって、あれ、もう居ない!?」

アニメ化します! 詳細は活動報告にて!

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