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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー2 白翼の地編
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第192話 視界共有

 グロリアは即座に駆け出し、この場からの離脱を図った。ジェラールを通り抜けてしまえば、もう彼女が戦うメリットは何もない。


「むっ、待てい!」

「すまないが、勝負を預からせてもらう」


 背中から呼び止めようとする、ジェラールの叫び声が聞こえる。それでも、彼女は足を止める訳にはいかない。戦いから逃げるのかと罵倒されようとも、今グロリアが最優先すべきは、あくまでも脱出――― 罵倒程度であれば、いくらでも受け入れる。彼女にはその覚悟があった。


「待て、待ってくれ! もう少しで何かが掴める気がするのじゃ! 先ほどの嵐の如き攻撃、もう一度かまして、ワシをボコボコにしてくれい! 後生じゃ!」

「ッ!? え、ええい、風紀に反するような言葉を吐くな、馬鹿者が! 何が後生だ!」

「ああっ、逃げるでない! お願い、待つのじゃ~~~!」

「絶対に断るッ!」


 ……罵倒される覚悟はあったが、自分が罵倒する立場になるとは思ってもいなかったようだ。


 その後、グロリアは危険な香りのする自称騎士から、全力で逃れる事に成功する。頑丈さは化け物染みていたが、彼女の予想通り、移動速度はそこまでではなかったようだ。


(別に恐れを抱いている訳ではないが、なぜかホッとしている自分が居る…… この道が間違っていたら、またあそこに戻らなければならないのか? う、ううむ……)


 そんな複雑な思いを抱きつつ、歩みを進めるグロリア。が、幸か不幸か、彼女の苦い思い(?)はそこで終わりを告げた。


「来たわね! じゃ、手合わせ願おうかしら! あ、私はケルヴィンの制約の対象外になっているから、安心して攻撃しなさいよね!」


 先ほどと似たT字路に差し掛かると、そこで聞き覚えのある声を耳にしたのだ。と言うか、その台詞とこのシチュエーションにデジャブが感じられた。道の先に目を凝らすと、分かれ道のど真ん中にて、何とセラが待ち構えているではないか!


「………」


 この辺りでグロリアは、僅かに抱いていた疑問を確信へと変えた。そして彼女は足を止め、仁王立ちで待ち構えるセラを睨みつけ、こう言い放つ。


「お前達、ひょっとしなくても、私を鍛錬に利用しているだろう!?」

「あり、もうバレた?」



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



 配下ネットワークを介した視界の同期を行う。映像元は今グロリアと戦っているであろう、セラの視界だ。さて、向こうはどうなっているかな?


『私を弄んだな!? 粛清してやるぅ!』

『よく分からないけど、やる気があるのは良い事ねッ!』


 よし、上手く繋がった。映像も音声も問題ないようだ。


「ジェラールの方も問題ないか?」

「うむ、実に鮮明に映っておるわい。なるほど、これがぶいあーる体験と言うものか」

「お前、セルジュ辺りから変な言葉を教えられていないか?」


 兎も角、だ。ジェラールの方も映像の共有は上手くいったようだ。


「技術の進歩とは凄まじいものじゃのう。まるでワシがその場に居るかのような、不可思議な体験じゃて」

「『召喚術』の技術向上という意味であれば、まあそうかもしれないな」


 セラの視界情報をリアルタイムで配下ネットワークに再現するっていう、見た目よりもかなり高度な事をやっているからな。少し前の俺だったら、ラグがあり過ぎて使い物にならなかったと思う。


『それにしても…… もう権能の顕現をしているみたいだけど、やっぱりこんな狭い場所じゃ、あの大きな十字架は出せないみたいね。ちょっと荷が重かったりする?』

『何だ、その安い挑発は? この程度、ハンデにもならん!』


 なんて話をしているうちに、セラとグロリアの睨み合いが、そろそろ実力行使に移りそうだ。


「っと、そろそろセラの挑発に乗ってくれそうだ。ジェラールの時は粉塵で何も見えなかったし、ただただむさい叫びがするだけだったからな。集中して見学させてもらおう」

「じゃってー、ワシはゼロ距離攻撃だなんて、初めての事じゃったしー」

「じゃって、じゃなくてだな……」


 まあ、対処を誤るとあんな感じで反撃に転じ辛くなってしまうと、そう理解しておこうか。事実、分かっていたとしても、アレを真正面から耐え忍ぶのは難しいだろう。


 距離操作の権能による必中攻撃、こいつは他で味わう事のできない、大変に貴重な体験だ。けど、肝心のグロリアが素直に協力してくれるとは限らないし、彼女が使える権能には限りがある。だからこそ、逃走のチャンスを与える事でやる気を出させ、貴重な権能を有効活用する為に、こうやって皆で視界を共有している訳だ。


 ちなみに、セラの次は俺が立ちはだかる予定である。それでもグロリアの権能の残高が残っていたら、またジェラール、セラ、俺――― って感じで、順番を回していくつもりだ。最低でも2巡はしてもらいたい。


『そこまで受けたいと言うのなら、存分に弾丸の嵐を浴びせてやる! 斂葬十字弾帯クロスマガジンベルト!』

無邪気たる血戦妃クリムゾンアストレイア!』


 十字架の弾丸を連射したグロリアに対し、セラが行ったのはゴルディアーナ直伝の奥義、無邪気たる血戦妃クリムゾンアストレイアだった。爆発するが如きの勢いで、セラが全身より紅のオーラを放出。そしてその直後、十字架の弾丸群がセラへと直撃――― する事もなく、刹那に四散した。


『何ッ!?』

『ふい~、大分スリリングな思いをしちゃったわね! 上手くいって良かったわ!』


 後続の弾丸もセラの間近までは接近するが、その全てがセラに触れる寸前に散ってしまう。グロリアがどれだけ十字架をぶっ放そうとも、結果は一向に変わらない。


「なるほど、紅の闘気の効果か」

「確かステータスを底上げし、『血染』の効力も引き継ぐんじゃったな」

「ああ、即座に自滅しろとか、そんな命令を発しているんだと思う。たとえグロリアが距離を短縮できたとしても、その空間を通ったという事実は変わらないからな。セラが無邪気たる血戦妃クリムゾンアストレイアを展開している限り、グロリアの攻撃は絶対にそれに触れてしまう」

「その結果として、セラに直撃する前に弾丸が消えてしまうと?」

「そういう事。まあ、それにしたって無邪気たる血戦妃クリムゾンアストレイアの『血染』効果、前よりも強力になっている気がするな。以前なら、微弱なレベルのものしか付与できなかった筈だ。あの即効性、セラの血を直に浴びるレベルで働いていないか?」

「うむ、ワシもそう思っとった。展開力の高さと相まって、おっそろしい事になっておるのう~」


 自由奔放なセラはいつも遊んでいると思われがちだが、見えないところではしっかり努力しているからな。これは俺もうかうかしていられないぞ。グロリアもこれ以上撃っても意味がないと察したのか、遂に銃撃を止めてしまったようだ。


『あら、おしまい? じゃ、準備運動はこれくらいにするとして―――』

「ん?」


 あ、あれ? セラの視界から、紅のオーラが消えてしまった。まさか、無邪気たる血戦妃クリムゾンアストレイアを解除したのか?


『―――次の攻撃をお願い! 今度は素の状態で何とかするから!』

『ハァッ!?』

「「ハァッ!?」」


 セラの無謀な宣言を受けて、グロリアと一緒に驚いてしまう俺達。いやいや、ジェラールじゃないんだから、流石にそれは危険―――


 ―――なんて、そんな風に思っていたんだが、何つうか、うん…… その後、セラは見事に有言実行を果たしてみせた。何だよ、十字架が触れた瞬間に全てキャッチするって…… 勘と反射神経で何とかなるって、そんな訳ないだろ……


 余談であるが、セラとの鍛錬でグロリアは権能を使い果たした。そう、俺に順番が回って来る前に、使い果たしてしまったのである。そんな事ってある?

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― 新着の感想 ―
[良い点] そもそも敵を鍛錬に利用するな…… まぁそんなこと思ってないけど
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