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第150話 援軍

 ―――朱の大峡谷・剛黒の城塞


 場所を移動し、エフィルによって寸法を合わせたメイド服を纏うロザリアとフーバー。大広間にてお披露目である。


「おお、二人とも似合っているじゃないか」

「馬子にも衣装とはよく言ったもんだぜ! ククク!」

「ダハクは黙っていてください。うう、なぜメイド服なのでしょうか……」


 人型に変身したロザリアの姿はダハクとは対照的な黒髪に透き通った白肌、外見上の年齢はうちのエリィと同じくらいだろうか。凄まじく綺麗なお姉さん、といった印象だ。メイド姿なのになぜか貫禄がある。ロザリア曰く、アズグラッド以外にこの姿を見せたことはないらしい。


「あ、足がスースーしますね」


 男装を止めメイド姿になったフーバーは年相応の可愛らしい女の子になった。竜騎兵団で鍛えているだけあって、引き締まった健康な足をスカートから覗かせている…… 何でフーバーのメイド服だけミニスカートなんだ? エフィル含め他の者は皆ロングスカートで正統派メイド服なのに。嬉しいサプライズだが、予め言っておく。俺はそんな注文してないぞ。


『ご主人様の知識を基に、彼女に最も似合うメイド服を作成致しました。自信作です』


 エフィルさんが頑張った結果だった。グッジョブ。


「あのう、本当に何でメイド服なんですか?」


 俺の趣味で、ゲフンゲフン。これにはちゃんと理由があるんだ。説明してやろうではないか。


「メイド服についてだが、周りの目を惑わす一環だ。ロザリアは人型の姿をこれまでアズグラッドにしか見せたことがなかったし、フーバーも普段から男装姿だった。こんなメイドが竜騎兵団関係者だとは誰も思わないだろ? 足止め、もう包囲戦でいいか。それも終わったことだし、俺たちは一度パーズに帰る。次に戦いになるまで二人は俺の屋敷で働いてもらうからな」

「流石はあなた様。聊か言い訳がましいですが、理に適ってます」


 ふふん、だろう? 棘のある言い方だが、その程度では俺の心は折れないぞ。


「もう決定事項なのですね。いえ、抗う気はありませんが」

「でも、私たちはメイドの仕事なんてしたことが……」

「問題ありません。一週間で一人前のメイドにしてみせます」

「ええっ!?」


 パーフェクトメイドのエフィルにかかれば十分に可能だ。屋敷で働き始める前まで料理をしたことがなかったリュカでさえ、一端にまで成長したのだ。二人が超絶料理下手でもない限りはやり遂げてくれるだろう。


「それでもシュトラの目を誤魔化せるかは微妙なところだがな。おい、それよりも聞きたいんだが……」

「ああ、悪いなアズグラッド。流石に男用のメイド服はないんだ。ってか見たくない」


 これ以上プリティアのような筋肉モリモリのオカマを増やしてたまるものか。俺やジェラールの精神が削られてしまう。


「違ぇよ! 俺は首輪これで十分だ!」

「そうか。ふう、なら安心だな……」

「お前、何に怯えてんだよ。それよりも部下達は本当に大丈夫なんだろうな?」

「それこそ安心してくれていい。トライセンではどうなのか知らんが、今回の送り先は東大陸4国に跨る唯一の自治領、パーズだ。荒々しく扱うようなことはしないと約束するよ」


 これも予めギルド長のリオとは打ち合わせ済みだ。捕虜の扱いについては同盟間で取り決めがあり、捕らえた国で保護することになっている。捕虜の扱いまで他国に干渉してしまえば同盟間に亀裂を生む原因となるからかね。その際は情報を吐かせる為の責問や拷問は禁止されておらず、各国の判断に任せる形となっている。各国に支部を持つ冒険者ギルドが中心となって動くのが今のパーズだ。方向性としては、できる限り禍根を残したくない。よってパーズで保護する捕虜に対しては荒々しく扱うことを禁じている。


「ハア、まあ俺もお前の言葉を信じるしかねぇか…… んで、パーズに向かうのはいいが、この城塞はどうするんだ? またトライセンから新たな部隊が派遣されるかもしれないぜ」

「城塞とゴーレムは自立しているからな。このまま残していく。S級モンスターの1体や2体くらいなら自力で何とかするだろ。それにパーズには今頃デラミスからの援軍が来ているはずだ。将来的にはその援軍にここの護りを固めてもらう」


 それからの行動は戦況次第かな。確かトラージにはトリスタンの『魔法騎士団』が、ガウンには老将率いる『鉄鋼騎士団』が向かっているんだったな。何か仕掛けてきそうなのは断然トリスタンなのだが、まずは現状把握からだ。


「『鉄鋼騎士団』の将軍についてはよく知らないんだが、役に立ちそうな情報はあるか?」

「……お前、マジで言っているのか? あのダン・ダルバだぞ」


 え、そんなに有名なのか?


「俺の師匠でもあるんだけどよ、衰えたとは言え素の力ではダンの爺さんがトライセン最強だ。ガウンに獣王あればトライセンにダン・ダルバありと良く言ったもんよ。デラミス神聖騎士団団長のクリフも良い線いってんだが、あと一歩ってとこだな。トラージは何と言ってもあの竜王が守護する国だからな。あそこは規格外っつか、いつか手合わせ願いたいんだが―――」


 急にアズグラッドが饒舌になってしまった。しかし各国の強者リストを教えてくれるのは嬉しいことだ。メモメモ。


「なるほどな。『鉄鋼騎士団』の将軍も油断ならない相手ってことか」

「まあ黒幕と通じていることはないと思うぜ。ダンの爺さんに不審なところはなかったからな。息子のジンは最近少しばかり挙動不審だったけどよ」

「息子も同じ部隊にいるのか?」

「ああ、副官を務めている。実力はまあ、フーバーとどっこいどっこいだな。強くもないが弱くもない」


 フーバーに視線を向けてやると、ロザリアと一緒になって早速エフィルに挨拶の指導をされていた。フーバーと同じくらいとなると、レベル70オーバーってとこか。ステータスの伸びは個人差があるから多少前後はすると思うが。一応、覚えておくとしよう。


 次に暗部の将軍、そしてアズグラッドの妹であるシュトラについても尋ねたが、アズグラッドは言葉を濁した。シュトラは普段から行動が読めない為、アズグラッドでは怪しいのか判断できないと言う。シュトラについては保留かな。しかし、あのタブラと同じ母親から生まれたのか。 ……本当に優秀なのだろうか?


「そろそろ出発の準備をするか。エフィル、忙しいとこ済まないがサバト達を修練場から呼んできてくれ」

「承知致しました。お二人とも、今こそ練習の成果を見せるときですよ」

「もう実践ですか!?」

「もう実戦です。さ、お客様を待たせてしまってはメイド失格ですよ」

「……んっ?」

「……うっ」


 セラとメルフィーナがパーズ側の道の方向へ顔を向けた。一瞬、メルフィーナが少し嫌そうな顔をしていたような……


「セラねえとメルねえ、どうしたの?」

「パーズの方から渓谷の道に入ってきた集団がいるわね。数は――― 28。油断してたから察知が遅れたわ」

「……ええ、私も感じ取りました。これはデラミスの援軍ですね」

「もう到着したのか? やけに早いな。転移門を使ったか」


 人数からして少数精鋭で来たのだろうか。帝国側の護りは大丈夫なのか? 確認の為、城塞の最上階に移動。悪食の篭手スキルイーターにエフィルの『千里眼』を宿し、遠くを見渡す。


「あれは…… ペガサス?」

「綺麗な白馬ですね」


 ドラゴンと来て次はペガサスか。近頃、伝承上の生物を目にする機会が多いな。


「それよりもご主人様、あの先頭を駆けるペガサスに乗っているのは……」

「ああ、コレットだな」


 最前線にデラミスの巫女さんがやってきた。

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