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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第414話 私達の夜逃げはこれからだ!

 かつてアダムスと戦い、敗北の瀬戸際にまで追い込まれたエバは、その際に権能を話を持ち掛けられた。最初こそ罠かと訝しんだが、この状況下でそんな事をする必要はない、そもそもアダムスがそんな手を使う筈がないと、考えを改める。この誘いを断ったところで敗北するのは明白、ならば一筋を希望を託して――― その結果、エバは『神罰』の権能をその身に宿したのだった。


 彼女の権能は神を対象とし、その自由の一切を支配できる力を持つ。言うなれば、レムの『支配』を神に特化させたものであった。『神罰』を得たエバは直ぐ様にその有用性を理解し、アダムスとその配下達に力を発動。敵陣営を一瞬のうちに無力化するに至ったのだ。


 その後、エバはアダムスを徹底的に封印した。直属の部下である十権能にも厳しい処置を施し、牢獄と名付けた星に纏めて幽閉。神の中で唯一世代交代をする転生神を生み出し、アダムスが復活しないよう監視役に置いた。更には彼の力を魔王として地上に出力する事で、定期的に力を削ぐシステムをそこに組み込む事に成功する。


 また数自体は少ないものの、アダムスの管理下にあった星々の住人達に対しても、エバは危機感を抱いていた。上限のないレベルアップを繰り返す、どこまでも闘争を求める、本質が戦闘民族のそれ。とまあ、理由を挙げればキリがない。そうして彼らも牢獄の辺境の地に閉じ込められ――― そうして、アダムスに関わるものは全て処断された訳だ。


 だがそれでも尚、彼女は確信してしまっていた。どんな封印を施したとしても、どんなに厳重に管理したとしても、アダムスはいずれ復活するだろうと。それは元が同じ全能の存在だからこそ分かる、限定的な未来予知だったのかもしれない。そして彼女は、そんな未来が到来する事を前提に――― 逃走の用意を整えていた。


「……いや、どういう事です? 逃げるって、一体どこへ?」

「オイ、本当ニ逃ゲル気ナノカ? 『戦ノ神』ハ無能ダ。トハイエ、自分ノ配下ヲ見捨テルノカ?」

「あーあー、一斉に質問しないでよ~。私、元全能であって今は全能じゃないからね? 質問はひと柱ずつでお願いしま~す」

「「………」」


 取り合えずコタツに座る『秩序の神』と『宙の神』。エバが演技をしていない素の姿を晒すのは、神の中でもこの二柱のみ。彼女が最初に作り出した神だから、最も信頼を置いているから、などの理由はあるだろうが、当人達は慣れるを通り越して、既に呆れてしまっているようだ。


「えっと、まずどこに逃げるかだっけ? そりゃあ外よ、外。私が作り出したこの世界とは全く別の世界、漫画的に言えば違う作品の世界に飛ぶって感じかな? あ、映画の方が例が多かったりする? クロスオーバーって言うの?」

「知りませんよ。そもそも、そんな夢物語が実現可能なんですか? さっき自分で言いましたよね、もう自分は全能じゃないって」

「あっはっは、確かに私はもう全能じゃないけど、腐っても鯛な才能はあるんだよね~。アダムスを封印してから今の今まで、私が何に注力していたか分かる?」

「それまでご自身で管理していた世界運営の全権を配下にぶん投げて、引き籠って遊んでいましたね。あ、最近は自作のカードゲームとかも作っていましたっけ?」

「わっ、辛辣ぅ~。『秩序』君、何か私に対して当たり強くない? さっきまでの尊敬の眼差しはどこへ行ってしまったの?」

「自分の胸に聞いてみてください。貴女が立派に『主神』をやっている間なら、そういう態度も続けていましたとも」


 嘆きながらもミカンを頬張り、糖度の高さを堪能するエバ。宿敵であるアダムスが復活したとは思えない、何とも緩い雰囲気である。


「まっ、そんな私がそれまでの趣味を放り投げてまで頑張ったのが、別世界への移動法、その確立だった訳よ。『創造神』の異名は伊達じゃないってね。残った才能を絞り粕にするまで頑張ったよ、マジで」

「……ソノ口振リカラシテ、成功シタノカ?」

「もちのぶいっ」


 エバ、ドヤ顔ダブルピース。


「まっ、それでも残念な事に何人もって訳にはいかなくてさ。異世界行きのチケットには人数制限がある訳ですよ。なので、私と一緒に夜逃げする面子は厳選する事になりました! おめでとうございます! 『秩序』君と『宙』君は当確です! 拍手、パチパチ!」

「え、これ喜ぶ場面なんです?」

「当然♪ あ、ちなみに拒否権はないからね? アダムスが封印されてからのなが~い年月、他の神共と違って一切腐らずに頑張っていた君達の事を、母なる私はしっかり見ていた訳ですよ。なので、私と一緒に生きてもらいますッ!」

「誰ガ母ダ」


 もちの私! と言いつつ、次のミカンに手を伸ばすエバ。


「ハァ…… ですが、なるほど。要するに、僕達が管理者としてどのように振舞うか、貴女は今の今まで見極めていた訳だ」

「さっすが『秩序』君、私の言いたい事を理解してくれているね~。まっ、そういう事かな。寿命が存在しない神にとっての一番大切な要素、一体何だと思う? カリスマ性? 圧倒的な強さ? 膨大な知識? 崇高な精神? ううん、そんなものは違う。何よりも大切なのは、永遠に等しい年月を経ても変化しない、そんな狂気染みた信念な訳よ。そういう意味で『戦の神』とかは―――」


 エバはひょいっとミカンを宙に放り投げ、それを口でキャッチしてみせた。


「―――落第。彼、昔は良い男だったんだけどねぇ。アダムスとの戦いで唯一戦果らしい戦果を上げて、十権能にも多少の痛手を与えた、生粋の軍人だった。けど、権力と時間ってのは人どころか神をも腐らせてしまう。あんなに良い身体をしていて部下からも信頼されていたのに、今では見る影もないんだもん。ホント、時の流れってのは残酷だね~」

「……それ、貴女が言います? 腐敗具合で言えば、僕としては『創造神』も良い勝負をしていると思いますけど?」

「右ニ同ジク」

「同じにするな同じにするな! 私は良いんだよ、表向きはちゃんと演技ってるから! えへん!」


 エバ、ドヤ顔ダブルピース、リターンズ。


「まっ、そんな訳だからさ。君らには私が厳選した神達に声をかけて、夜逃げの準備をしておいてほしいんだよね。それまでに私、異世界への扉を開いとくから」

「本当に本気、なんですね…… 分かりました、貴女に従いますよ。どちらにせよ、今のこの世界は神が管理する必要もなくなっていますし。長い時間をかけ、例の監獄以外はレベルやステータスといった概念を排除。いち生物における強さの上限も、現実的なところで定着しています」

「アア、無能ナ神ガ放置シ続ケテモ、問題ナク運営モデキテイル。今更アダムスニ取ッテ変ワラレタトコロデ、ソノ根底ヲ覆ス事ナドデキナイダロウ」

「だよね! うんうん、全ては私の読み通り!」


 エバ、ドヤ顔ダブルピース以下略。


「ところで、最近神となった者についてはどうします? 彼、まだ異名も付いていないんですよね」

「?」

「オイ……」

「ほら、この前挨拶に来ていた」

「あ~、あの初々しい男の子? まだ『秩序』君よりも幼い見た目で、すっごい可愛らしい子供だったよね。んー、どうしようかなぁ。私の予感的に、彼ってば将来すっごい神になりそうだし…… よし、一緒に連れて行こう! あの子一柱分なら、根性で何とかなると思うから!」

「まさかの根性論で解決ですか…… では、彼にも話を通しておきます」

「あっ、待って。ちょうど良い機会だから、あの子の異名も今のうちに付けてあげよう。いつまでも名無しは不便だしね。えっとね、始まり、出発、いやいや、これは違うな。んー…… げん、『原初の神』? うん、これが良い! 何か神っぽいし、私達の門出に相応しい名付けができた気がする!」

「……本人ノ性質ハ全クノ無視ナノカ?」

「だって私、彼の事あんま知らんし! さあ、これから忙しくなるよ! そうと決まれば動いた動いた! 『戦の神』達が肉壁になってくれている間に、私達は生き延びるよ! おー!」

「「………」」

「いや、そこは一緒に拳を突き上げようよ!?」


 狭い部屋の中、エバに続いて拳を突き上げる者はどうやら居ないようだった。

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