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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第409話 結婚式七日目

 最後の“ちょっと待った”を無事にやり遂げた俺達は、次に式本番に取り掛かる事となった。柔らかな緑のウエディングドレスを纏ったエフィルの横に、エルフ族の民族衣装を身に着けた俺が並ぶ。これから俺達は森の大樹の前で結婚の誓いを立てる訳だが、そんな俺達の前にはほんのりと顔を赤らめたネルラス長老が居て――― いや、きっと牧師的な立ち回りを担っているのは分かるんだが、この人既に飲酒済みなんだよね。大丈夫…… だよな? 多分お決まりの台詞やらを言う事になると思うんだけど、ちゃんと言えそう? ウィアルさんもさっきからすっごい心配そうにしてるよ?


「フフッ、ケルヴィン殿にも緊張される時があるのですね。大丈夫、この儀式に難しい事は何もありませんから。自分の気持ちに正直になって答える、ただそれだけです」

「な、なるほど……」


 緊張していない訳じゃないけど、どっちかと言うと長老を心配している割合の方が高いからね!?


「さて、皆様の準備もできたようですし、そろそろ始めましょうか。オホンコホン……」


 何度かの咳払いをした後、長老がキリっと凛々しい表情へと切り替わる。良かった、大丈夫そうだ。


「……■■■■、■■■■■■、■■■■」


 ……ん?


「■■■■■■■■、■■■■?」


 待って、ちょっと待ってくれ。何か長老の口から意味不明な言葉が出て来たんだけど? ブチ切れた時の義父さんが喋る時みたいになっているんだけど?


(ケルヴィンさん、こっちこっち!)


 突然の出来事に俺が戸惑っていると、ウィアルさんが遠巻きに何かを伝えようとしてくれていた。何やらフリップボードみたいなものを持ってる。ええと、何々……?


(これ、古代エルフ語! これで喋るのが通例なので、そのまま聞き流してください!)


 な、なるほど、古代エルフ語と来たか。流石の俺も知らない言語は理解できないからな。しかし、エフィルも人が悪い。こんな展開になるのなら、先に言ってくれれば良かったのに。と、そんな事を思いながら、エフィルの方をチラリ。


「うう、ぐすっ……」


 ……えと、エフィルがすんごい泣いているんだけど、これは何事? もしかして、エフィルにはネルラス長老の言葉が理解できていて、今長老がすんごい良い話をしているとか、そんな展開? いや、そこまで感動的なら俺も気になるんだけど!? ウィアルさん、頼むから翻訳してくれ!


(……ぐすっ)


 アンタも泣くんかい!


 ―――とまあ、そんな感じで色々ありながらも、何とか結婚の誓いを終える俺達。いやあ、長々と古代エルフ語の話を聞かされている最中、突然標準語に戻って食い気味に「誓いますか!?」と聞かれた時はビビったね。何に対して!? などとツッコミを入れなかった自分を褒めてやりたい。ただ、それ以降は誓いのキスをしたりもして、大方俺のイメージ通りの儀式に戻ってくれた。良かった、本当に良かったよ。


 ……でさ、それにしても、だ。


「俺の嫁さんは本当に綺麗だな」

「ご、ご主人様、突然何を?」

「思った事を素直に言っただけだよ。ネルラス長老も言っていただろ? 自分の気持ちに正直になって答えろ、ってさ」

「……ご主人様も素敵ですよ」

「ああ、何せ宇宙一の旦那さんだからな」

「ごご、ご主人様ッ!」


 最近はメイド長が板について常に冷静なエフィルだけど、こういう真っ赤になって慌てる姿もやはり良いものだ。参列しているアンジェのお姉さんも、うんうん分かっているねと頷いていらっしゃる。


 んでもって、いよいよ始まってしまう宴の部。折角の衣装だったんだが、酒で汚れたらいかんと言う事で、俺とエフィルはいつもの恰好に戻る事に。うーん、いよいよ結婚式要素がなくなってしまったぞ。


「ララノアちゃんってば、本当に可愛いですね~。特にこのほっぺとか…… ふわああ、柔らかい~」

「ウィアルさん、そのやり取り十数回はやってません? まあ、気持ちは滅茶苦茶分かりますけど」


 ここまで来れば最早ただの飲み会でしかない為、各自フリーダムに過ごしている。俺はというと、休憩がてら禁酒ゾーンに来ているところだ。ここは酒が飲めないセラやクロメル達だけでなく、里の子供達なども居る為、もうホント平和な空間。ちなみに現在、ララノアがアイドル的存在になっていたり。特にウィアルさんに好かれてしまったようで、俺と義父さんに匹敵するくらい溺愛しちゃってる感じだ。


「ねえ、今アイドルって言った!?」

「はいはい、ここはお酒が飲めないスペースなんで。吸血鬼系アイドルの方は回れ右をしてください」

「むう、言った気がしたんだけどな~」


 ふう…… マリアめ、素直に『神酒愛好会』の方へ帰ってくれたか。まったく油断も隙もない。しかし、ララノアがアイドルか。俺は決して親馬鹿って訳じゃないが、ララノアならそれも不可能じゃないだろうな。きっと将来はエフィルに似て、清楚な美少女になるだろうし。それでいて料理も上手くなって、パパにお弁当とかも作ってくれてえへへへへへ。


「パパ、何だかとっても楽しそうさんです」

「おっと、クロメルからのお弁当も絶賛募集中だぞ! 遠慮せずにガンガン渡してくれ!」

「へ?」

「もう、まーた変な事を考えてる。にしても、長かった結婚ウイークデーも今日で終わりなのよね。何だか少し寂しいわ」


 ジュースをチビチビと飲みながら、何やら物思いにふけるセラ。確かに、結婚式とは思えないくらいにイベント目白押しのスケジュールで、ある意味でずっとお祭り状態だったからな。それが終わるとなると、その気持ちも分かるような気がする。


「エフィルさんから一週間の日程を聞いた時は正気の沙汰かと思いましたが、本当にやり遂げてしまったんですよね。それも、大陸中を横断しながら」

「海も渡ったから、正確には世界中を横断した事になるかな? 全日結婚とバトルで濃い一週間でしたよ。疲労が凄いけど、充実感も半端ない」

「私達も式でやりたい事を全部やれたし、ケルヴィンと同じ気持ちかしらね。あ、そうそう! 新しい釣りのライバルもできたわ!」

「結婚式で、釣り……?」

「ウィアルさん、深く考えては駄目だ」


 多分、聞いたところで理解は得られないと思うから。


「で、ですか…… ええと、今日は里に泊まられるんですよね? 明日以降はどうされるんですか?」

「そうですね、いずれアダムスから依頼が来るでしょうが…… それまでは我が家に戻って、少しゆっくりすると思います」


 あ、でもトライセンとデラミスにグレルバレルカはがっつり国の事情が入っているし、そっち関係で行動する事にもなるかな。うーん、クソ忙しくなる予感しかしない。


「なら、私との子供も早いところ作らないとね! 父上に孫の顔を見せてあげたいし、最低でも五人は欲しいわ!」

「五人……!? が、頑張ります……」


 うん、色々と頑張らないとね、本当に……


「ケルヴィンく~ん? 何ここでサボっているのかな? 君、一応今日の主役なんだよ?」

「はい、今日一日は私の隣に居てくださいませんと」


 そんな風に俺がなけなしの決意を固めていると、両脇より音もなくアンジェとエフィルが現れた。ひょえっ、なんて情けない声が出そうになってしまうが、何とかそれを堪える。けど、何だかジェラシーの波動を感じちゃうぞ?


「こ、これはこれは、お揃いで――― えと、何で二人して俺の腕をホールドしているんです?」

「もち、逃がさないように♪」

「そろそろ他の席へも挨拶へ向かいましょう。それにご主人様、お酒も良いですが料理もしっかり食べてください。どれもこの日の為に改良に改良を重ねた自信作ですし、ご主人様用・・・・・の料理は特に精がつくようにしていますので」

「せ、精がつくのか~、それは楽しみだな~」

「でしょでしょ?」

「遠慮なんて不要です、おかわりは沢山ありますから」


 そうして、俺は二人に連れ去られるのであった。俺、思うんだ。今夜が最大の難所かも、って……


「もう、二人とも強引ね。あんな風に連れて行かなくたって、今日は二人の日だって皆分かっているのに」

「……セラさん、アレって大丈夫なんですか?」

「まあ、大丈夫じゃない? いざとなったらメルかコレットが怪し気な薬を作ってくれると思うし」

「な、なるほど……」

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