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黒の召喚士 ~戦闘狂の成り上がり~  作者: 迷井豆腐
アフターストーリー3 結婚編
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第392話 緞帳上がり喝采受けり

 マリアの叫びが一通り終わったところで、ケルヴィンは改めて語り始める。マリアが有する固有スキル、それに魔法などの攻撃の類は、ケルヴィン達にとっては異世界の特殊能力、つまりは『波羅蜜はらみつ』が無効化してくれる適用範囲内に入っているのだと。またこれにより、クロトはマリアの魔法に接触しつつも、それでダメージを負う事なく、無傷のまま魔力を吸収する事ができていたのだと。


「それに加えて、クロトは『打撃無効』のスキルを持っているからな。お前がどんなに強力な拳や尾を繰り出して、それが偶然クロトに当たったところで、ダメージは発生しないんだよ」

「……なるほど、ね。要するに、対妾用の最終兵器だった訳だ。そんな可愛い見た目して、妾の世界のスライムより、よっぽど厄介じゃん」


 マリアの言葉を受け、にょっきりと一部伸ばした体で頭(?)をかくクロト。どうやら照れているようだ。


「あはは、それでいて感情豊かだね♪ セレスティアルゾア♪」


 和やかな会話の最中に歌を挟み、動物を模した真っ赤な風を唐突に放出するマリア。小鳥や子猫に子犬など、見た目は非常に可愛らしいそれら風であるが、攻撃としての性能は先の地獄を形成した魔法と、何ら遜色のないものばかり。破壊力・速度・追跡性能、どれもがケルヴィン達の能力を凌駕していた。 ……が、それら攻撃はケルヴィン達をすり抜けてしまう。引き返し再度突撃してみても、結果は同じ。この展開には動物達も困ってしまったのか、オロオロしながら辺りを彷徨うばかりだ。


「無駄だよ、もう俺達は透過状態を解除しない」

「あらら、ずっと引きこもり宣言? 確かにさっきは裏をかかれたけど、そんなんじゃ、ここから妾に勝てないよ? 現に戦いが始まって暫く経つけど、妾は全然消耗していな―――」

「―――いいや、もうこれで決まりだ」


 このタイミングでの勝利宣言。呆気なく言われたその言葉を、マリアは上手く咀嚼する事ができない。しかし、その間にも運命の時は迫っていて。


「今はこんな勝ち方しかできないけど、いつかはきっと追いついてみせるからさ。マリア、どうかその時まで待っていてくれないか?」

「何それ、人妻のアイドルに向かって告白の言葉?」

「ケルヴィン君!?」

「ち、違うって! どっちかって言うと、元気に長生きしてくれっていう、そんな感じの意味だよ!」


 どこの長寿祝いの言葉だ!? と、マリアがプッチンするのと、戦場であるフィールド全域が超規模の爆発に巻き込まれたのは、奇しくも全く同じタイミングであった。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~



「うわ~ん、こんな負け方ってある~~~!?」


 アンジェのお色直しを待っていると、マリアのそんな声が聞こえてきた。本当に悔しそうな声色をしているが、恰好はしっかりと式のそれに着替え終えている為、ポーズ的なノリでやっているのだと思われる。今は披露宴中な訳だし、マリアと言えどもここから無茶な事はしないだろう。


「だから言っただろ? こんな勝ち方だって」

「でもでも、あそこまでの力技はないと思うな!?」


 そう言って地団太を踏むマリア。式場を破壊しないギリギリの力加減でタップダンスしていらっしゃる。む、無茶な事、しないよな……?


「なあ、頼むから式場は壊さないでくれよ?」

「当たり前じゃん! 妾、赤の他人の結婚も素直に祝福できる吸血鬼だし!」

「うん、少し前に“ちょっと待った”を宣言したのは誰だったっけ?」

「それはそれ! これはこれ! はい、駆けつけ一杯!」

「その言葉を使う場面が違う気がするし、もう酒を飲めないキャラを演じるのも完全に止めちゃってるよね、君?」


 取り合えず、お酌は受け取っておく。敗北した悔しさをぶつける先が必要だったのか、戦いが終わってからというもの、マリアはずっとトラージ酒を飲み続けている。それはもう、メル&ジェラール&アダムスという恐ろしき面子が揃い、知らぬ間に結成されていた『神酒愛好会』に自ら参加していたほどだ。正直、この会に近づくのは死を覚悟する必要があると思う。色々な意味で。


「ケルヴィン君、次は場外負けのない戦いをしよう! そもそも、模擬戦形式っていうのが生温いんだよ! やっぱり実戦! うん、実戦は全てを解決する!」

「滅茶苦茶な事を仰る……」


 ちなみに今回、戦いの勝利を決定付けたのは、何を隠そう我らがクロトであった。マリアから吸収した引くほどに莫大な魔力、そして成長と共に『保管』にしまっておいた余分なスライムボディを使い、フィールドのど真ん中から自爆を決行。マリアから直接、そして超規模魔法から根こそぎ頂戴した魔力なだけあって、その威力は過去一にやばい仕上がりに至っていた。それこそ、『遮断不可』で透過状態になっていた俺達以外、海水もマリアも、その全てを場外に押し出すほどだったのだ。これによりマリアの場外負けが確定し、俺達は薄氷の勝利を掴み取れたという訳である。


 無事に勝てたのは良かった。良かったんだが…… 場外に押し出した直後には、もうマリアの奴、元気に復活していたんだよなぁ。あれだけの捨て身の攻撃をまともに食らったってのに、ピンピンしながら地団駄である。うん、やっぱりこいつは正真正銘の化け物だよ。今回の勝ち方以外でマリアに勝てる奴なんて、この世に存在するんだろうか? 仮にあるのだとすれば、是非ともその方法をご教授願いた――― いや、やっぱ自分で考えるからいいや。


「む~、魅せたい技がまだ一杯あったのに~!」

「それはそれで非常に魅力的な言葉だが、あれ以上長引かせると俺が出血死していたからな。サプライズ尽くしの式なんだ、決まり手はサプライズ自爆の押し出しって事で、今回は勘弁してくれ」

「あはは、そんな決まり手はないんじゃないかな~? 個人的におばさんは好きだけどね~」

「うむ、互いの持ち味を活かした素晴らしき戦いであったぞ」


 マリアに続いて、久遠とアダムスもやって来た。何だ何だ、かつての敵と明日の敵が総揃いだな。


「どれ、まずは駆けつけ一杯―――」

「―――アダムス、悪いが使いどころが違うし、ネタにしてもさっきマリアがやったばかりだぞ」

「ッ!? ……そう、か」


 肩を落とし、見るからに落ち込む邪神様。おい、そんなに落ち込まないでくれよ。分かった分かった、飲んでやる飲んでやる。代理を立てて飲んでやる。俺の代わりにパトリックの奴が、死ぬほど頑張ってくれる筈だから。


「ところでさ、さっきの口振りから察するに、やっぱりアダムっちゃん達も“ちょっと待った”を観戦していたんだよね? も~、先に言っておいてほしかったな~。それなら妾、最初からやる気全開モードだったのに!」

「こらこら、このタイミングでそれは負け惜しみにしかならないよ、マリア?」

「であるな。たとえ観客がゼロであったとしても、十全の己の魅力を発揮させるのが、一流のエンターテイナーだ。違うか?」

「う゛っ、それは……」


 まさかアダムスにエンタメを語られるとは思っていなかったのだろう。しかも、言われている事が正論でしかないので、マリアは沈黙するしかない。まあ観客隠しで士気を削げたのなら、それはそれで俺達の作戦勝ちって事かな? 上手く事が運んで良かったよ、本当に。


 ……しかし、問題はアダムスが相手となる明日、か。今日のマリアとの戦い、俺達の奥の手を出し過ぎた感があるんだよな。マリアを相手に出し惜しみなんてできるか! っていう思いがあるのと同時に、アダムスや十権能の面々が観戦する中、これだけ大々的に手の内を見せちゃって大丈夫なのか……? という疑問があるのも正直なところ。おまけに、こっちはアダムスについての情報が少ない。兎に角少ない! 性格的にも慢心や油断をしてくれるタイプじゃないだろうし、さて、どうしたものかね。


「一方でケルヴィンよ、マリアを破るその働き、実に見事であった。ただの我とはいえ、あの戦いをただで見るだけというのは心苦しいな。何か、相応の礼をしたいところだが…… ああ、そうだ。ケルヴィンよ、ただの我の権能は必要か?」


 ……うん? ごめん、今何て言った?

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