86:〔紅霧〜解放された闇〕
魔理沙と別れ、相も変わらず妖力弾に乗って移動を続ける僕。密かに空を飛ぶ特訓でも始めようかと考えながら、代わり映えのしない赤い霧を見て目を細めた。
どうにも気分がよろしくないが、多分この赤色のせいだろう。灰色が何を言うかと言われそうだが、全身真っ赤と全身灰色、どちらか選べと言われたら迷わずに後者を選ぶ。
「ん……動いたな」
小さく呟いて、更に目を細める。
元は霊夢のことが気になって出てきていた僕だったが、霊夢らしき命の気配はすでに見付けてある。
今の今まで一箇所に留まって飛び回っていたのだが……。
「参ったな……これじゃあ置いてかれる」
一箇所に留まっていたのは、おそらく弾幕決闘を行っていたせいだろう。先に進み始めたということは、霊夢が勝ったということだ。
弾幕決闘の間に追い付いて、あわよくば霊夢に付いていく(肩にでも乗って)予定だったのだが……。
空を飛ぶスピードはあちらの方が格段に上、先に行かれてはどう考えても追い付けない。
「……走るか」
言いながら弾から飛び降り、落下の最中に脚に妖力を込めておく。別に飛んでいかなければならない理由は無し、走りならば余裕を持って霊夢にも追い付ける。
そう考えているうちに地上に到達。膝を思い切り曲げて着地した僕は、歯を食いしばって思い切り前に跳んだ。
爆発音にも似た音が後ろで響き、凄まじい加速が僕の身体を圧迫、思い切り跳んだ故の爽快感を感じ、笑みを零しながら赤い霧の中を突き進む。
と、そこで。
「ん……?」
違和感を覚えたのと、その違和感が姿を現したのはほぼ同時。
地面を削りながら着地した僕は、改めて辺りを見回した。
「何も見えない……」
――そう。
あのうっとうしい赤い霧も、辛うじて見通せるような幻想郷の景色も、いきなり、真っ暗な闇に包まれていた。
声は出さず、渇いた唇を舐めて目を閉じる。
――過去に一度だけ、僕は同じような体験をしたことがあった。
そう考えた僕は、広く展開していた能力をこの近辺に集中――すると同時に、すぐ背後に現れた気配に向けて爪を突き出した。
「キャッ……!」
か細い声がして、辺りを覆っていた闇が霧散していく。途端に現れた赤い霧に顔をしかめながら振り返ると、そこには予想通りの妖怪の姿があった。
黒い服に赤いリボン、更には赤い瞳に黄色い髪。その姿に溜め息をつき、彼女の名を呼ぶ。
「ルーミア……いきなり何をするんだ」
闇を操る妖怪、ルーミア。
一度人間に化けていた時、本当に人間だと勘違いして襲い掛かってきたのが彼女との初対面だった。
その時に軽く捻ってやってからは、僕に襲い掛かってくることはなかったのだが。
もしかして早くもそのことを忘れたのだろうか、と思いながら、へたりこんで何も言わない彼女を眺めてみる。
ルーミアは、頭につけていた赤いリボン――おそらく僕の一撃で破れ、外れてしまったのだろう――を、その手に持ってじぃっと見つめていた。
大事なものだったのだろうか。しかし、いきなり襲い掛かってくるお前も悪い。そう言おうとして彼女に歩み寄る。
「…………?」
が、一歩目を踏み出したところで違和感を感じた。
得体の知れない感覚に思わず辺りを見回すも、例の霧以外には何もおかしなところはない。ならば、この違和感は一体……?
足を踏み出したまま考え込む僕を余所に、ルーミアはリボンを投げ捨て、そしてゆっくりと立ち上がった。しばらく不気味に揺らいでいた身体だったが、不意にピタリと動きが止まり。
――うなだれていた顔が上がった瞬間、僕は、全身の毛が逆立つような感覚に襲われていた。
「外してくれたのは、貴方ね」
「……なるほど」
ルーミアから大量の妖力が溢れ出す。いつの間にか額に滲んでいた汗が、つぅっと頬を伝わった。
違和感の正体。それは、他でもないルーミアから感じ取っていたことを理解する。
頭を掻きながら踏み出していた足を戻し、気圧されないように妖力を解放した。
赤い霧の中、ルーミアの瞳は更に赤い光を放っていた。笑みを見せる口元から覗く歯が、嫌に目につく。
「何が何だかわからないってところかしら」
「いや……大体は予想がついてるよ。大方、そこにあるリボンが封印になっていたのかな」
僕の言葉に大人びた笑いを零すルーミア。大妖怪独特の余裕を滲ませながら、彼女は僕を下から舐めるように見上げていた。
何かを観察するような視線に嫌悪感を感じながら、いつでも飛びのけるように少しだけ膝を曲げておく。
少しだけ感情を読み取ってみたが、正直あまり覗きたくないような心をしていた。波打つことのない真っ黒な水面下に、あまりに妖怪らしい感情が渦巻いている。まるでその真っ黒な水に足を突っ込んだかのようで、すぐに僕は読み取るのを止めていた。
「逃げないの?」
「理由が無いもので」
「そう……なら」
至近距離で僕を見上げていたルーミアは、途中で言葉を切ってその身体に闇を纏い始めた。闇はルーミアをたやすく飲み込み、少しだけ膨張する。そして一度、生き物のように大きく鼓動を打って――
「ッ!!」
――瞬間、闇から飛び出してきた『何か』が、僕の顔面に襲い掛かっていた。
間一髪、思い切り顔を横に振ってかわした僕は、頬に熱いものを感じながら飛びのいた。
綺麗に裂かれた頬から、思い出したかのように鮮血が吹き出す。
「あら、避けたの」
「なっ……!」
異物が飛び出してきた闇から声がして、闇が溶けるように消えていく。そこから現れた人物の姿に思わず声を上げてしまう。
「ルーミア、か?」
「えぇ。これが真の私。先代の愽麗の巫女に封印されてああなっていただけ」
「いや、にしても……」
違いすぎるだろう、と続けようとして、頬の痛みから口を閉じた。
今のルーミアの姿は、僕の知っているルーミアとはこれまた掛け離れている。身長が伸び、髪も腰まで下りていて、あのどこか無邪気な顔立ちはどこへやら、妖艶さすら感じさせる大人の顔立ち。
……まぁ、言ってしまえば子供から大人になっただけの話なのだが。
それにしても、先代の愽麗……?
「先代に封印された? でも、またなんで」
「別に? 暇潰しに幻想郷を闇に落としてやっただけよ」
「どれくらいの間?」
「季節が一回りするくらい」
「…………」
「勘違いしないで。別に四六時中闇に落としてたわけじゃないわ。人間が死んだら困るもの、精々一日の半分くらいのもの」
「充分すぎるよ。そりゃ封印されるわ」
「そうかしら?」
駄目だ、子供ルーミアもそうだが、大人ルーミアもまた違う方向で話が通じない。一年間も定期的に光を奪ったらどうなるかわかるだろうに、全く悪びれる様子もなく話しているあたり質が悪い。
ルーミアは、片手に持った剣を軽く振るった。闇から突き出したのはあれだろう。妖力を解放している僕の肌をここまで綺麗に裂いてきた辺り、ただの剣ではなさそうだ。ちなみに普通の剣ならどんなに切られようとかすり傷程度で済む。無傷じゃ済まない辺りが僕らしい。
「で? なんでいきなり襲い掛かってきたんだ?」
「そうね。久しぶりに解放されたから思い切り暴れ回りたいのと……。多分貴方を放っておいたらろくなことがなさそうだし、消しておこうかと思って」
「自分勝手な理由だこと。どっちにしろ僕は消されるわけだ」
「わかってるじゃない。……けど、貴方強そうだし、ルールを決めましょうか」
「ルール?」
「えぇ。私が勝ったら、貴方の存在諸々、私の自由にさせてもらうわ。逆に貴方が勝ったら、消滅させる以外なら、私の存在を好きにしてもいい。封印を再度かけるも良し、僕にするのも良し……もしそうなったら、貴方の言うことには従いましょう」
「……ちなみに僕が負けたとして、僕の扱いはどうなるんだ?」
「さぁ? もしかしたら、食べちゃうかもしれないわよ?」
ペろりと赤い舌を覗かせるルーミア。
食べられるなど冗談ではないが、ここで僕が逃げてしまえばどうなるかわからない。最悪、この異変に紛れてさらなる混乱に幻想郷を陥れるかもしれない。そう考えると、僕が選べる道はひとつしか見当たらないわけだ。
「仕方ない……いいよ、その戦い、乗った」
「ウフフ、お手柔らかにね? あぁ、想像するだけで涎が出ちゃう。どうしましょう?」
「知るか」
吐き捨てるように言い、展開させた弾幕をルーミアに向けて射出。同時に地面を蹴って距離を取った。あまりルーミアの近くにいると、例の闇に捕まってしまうかもしれない。接近戦はむやみにしかけるべきではないだろう。幸い、ルーミアの闇はそこまで範囲が広くない。気をつけていれば、闇に呑まれることは――。
「って、おいおいおいおい……!」
顔が引き攣っているのが自分でもわかる。
ルーミアとの距離は目算で三十メートルと言ったところ。本来ならルーミアの闇は、本人を中心に広くて三メートルあるかないか……。
だがどうだ。目の前にあるこの巨大なドームは、僕を飲み込もうと凄まじい勢いでその勢力を拡げているではないか。
「そういや、幻想郷を闇に落とした、なんて言ってたか……」
今更になって思い出す彼女の言葉。この状況は、予想しようと思えば予想できたではないか。ただ、たとえ予想できていたとしても、結果としてどうしようもできないのが悲しいところではあるのだが。
なんて考えているうちに、僕の身体は闇に飲み込まれていた。が、特に焦りはしない。たとえ視界が奪われようと、僕にはルーミアの位置が手に取るようにわかるのだから。
「でも……そうだな……」
ルーミアには僕の能力を教えていない。ここからいきなり襲い掛かってやれば、それなりに驚かせることはできるだろうが……『それなり』じゃあ、つまらない。
ふと思い付いた策にニヤリと笑った僕は、尻尾を揺らしながらルーミアの攻撃を待つことにした。
弾幕を軽く避けたルーミアは、あっという間に距離を取った相手を見て妖艶な笑みを浮かべていた。
妖獣にしては強力過ぎるまでの力もそうだが、何よりもあの『心の闇』が心地好い。
ぱっと見ではわからない、今のルーミアだからこそ感じ取れるその闇。闇を操るルーミアにはそれがとても心地好く、彼女の心を必要以上に逸らせる。
抑え切れない笑みを零しながら、彼女は自らを包む闇を勢い良く拡げていく。あっという間に辺り一面が闇に飲み込まれ、その中にミコトも含まれたと理解した瞬間に、彼女は得も言えぬ快感を覚えた。
闇の中は彼女のテリトリー。自らの体内と言ったら言い過ぎかもしれないが、闇の中に入ったものは既に手に入れたも同然。封印から解放された彼女は、闇の中でも視界を失うことはない。
――今すぐ殺すのはもったいない。どうせなら、あの『心の闇』を心行くまで愛でてみたい。それからゆっくりと、舐めるように、少しずつ、私のモノにしてやろう。間違って食べてしまうかもしれないが、それはそれで構わない――
ルーミアはそんなことを考えながら、期待に震える身体を抱きしめた。
闇に浮かぶ灰色。トロンとした瞳でその姿を眺め、溢れ出しそうな生唾をごくりと飲み込む。すっかり欲情しきった身体が大きく跳ね上がり、一直線に灰色に向かっていった。
灰色は動かない。逃げる素振りも全く見せない。
――当たり前だ、彼に私の姿は見えていないのだから。
彼女は彼の目の前で急停止した。
そして至近距離でその脚を、身体を、首を、顔をねっとりと眺め、ゆっくりと彼の周りを一周する。ユラユラ揺れている尻尾が、彼女には不安げに揺れているように見えていた。
――きっと必死に私の気配を探っているんだろう。私はこんなに近くにいるというのに。
ある種の優越感が、彼女の欲情をさらに深めていく。
彼女はおもむろに彼の肩に片手をかけて、チロリと出した舌で首筋をなぞった。ビクリと震える身体に彼女の目は光り、片手に持った剣を彼の腹に突き立てる。
「大丈夫……私が可愛がってあげるから……」
言いながら、ズブズブと彼の身体に沈んでいく黒い刃。肉を裂き、骨をたやすく断つ感覚が彼女の手に伝わる。
刃が根本まで沈み込むのに、さして時間はかからなかった。身体の向こう側に、血を滴らせている刃が見えている。
これだけでは不十分だと感じたのか、彼女はそこから思い切り刀を回転させた。横を向いていた刃が、グチグチと嫌な音を立てて回る。そしてそこから思い切り引き抜くと、その刃にはねっとりと何かが付いてきた。
それを指で掬い取り、甘美の表情を浮かべながらその指をしゃぶるルーミア。
が、次の瞬間、ルーミアは信じられないものを見た。
「僕の身体……そんなに美味しいの?」
――目の前の灰色が、とびっきりの笑顔でそんなことを言っていた。
これにはルーミアも驚いた。どてっ腹に剣を突き刺され、内臓をえぐられたというのに、彼は痛がる素振りをかけらも見せていない。
ルーミアは自らの唾液にまみれた指を服に拭い、スッと横に動いた。彼には私が見えていない、視線が合ったのは真正面にいたからだ、と。
ミコトは真正面を向いたまま動かない。なんだ、焦らせないでちょうだい。そう言おうとしたルーミアは、彼の目を見て凍り付いた。
――彼の目が、しっかりとこちらを向いている――
身体はおろか、首も動かしてはいない。だが目だけはしっかりとルーミアの姿を捉えている。
普通に見られるより数倍不気味に感じる視線に、ルーミアは迷わず剣を突き出した。一度目とは違う箇所に突き刺さる剣を見て、これならと再度ミコトの顔を見る。
「――――!」
その表情を見て、ルーミアは心底ゾッとした。
苦痛に歪む表情が見れると思っていた。
ただのやせ我慢だと思っていた。
だがしかし、ルーミアのそんな願望にも似た考えは外れていて――。
「それで終わり?」
――無邪気な笑みが、ルーミアを見下ろしていた。
「う……あ……」
剣の柄を握っていた手から、少しずつ力が抜けていく。
ルーミアに、ひとつの。しかし強大な感情が込み上げてきていた。
「ねぇ」
「うぁっ、うわああぁぁぁぁぁぁ!!!!」
ミコトの声を皮切りに、ルーミアは狂ったように剣を振るい始めた。
妖怪の力で振るわれる剣は、瞬くまにミコトの身体を切り刻んでいく。次々に咲く真っ赤な花は、ミコトの身体はもちろん、ルーミアの身体にもその花びらを散らしていった。
しかし、どれだけ切ろうとミコトの笑みは揺らがない。
指が無くなり。
肩から先が落とされ。
片足が飛び。
胸が貫かれようと。
――その笑みは、終わらない。
「うあぁぁッ!!」
完全に恐怖に魅入られたルーミアは、その笑みをなんとか消そうとついに顔面に向けて刃を振り抜いた。
恐るべき速度で振り抜かれた刃は、ミコトの顔面、鼻の頭から上を消し飛ばした。
――これならさすがに……。
今までに何度も浮かんだこの言葉。
だが、その期待は浮かんだ回数だけ裏切られてきた。
そして、それは今回も例外では無く――。
「満足した?」
「……ア、ハ、……ハハ……」
もはや苦笑いしか出てこないルーミア。
――ミコトは、顔が口だけになっても、笑いを止めなかったのだ。
ペたりと、初めの時と同じように座り込むルーミア。
巨大な闇のドームが、瞬くまに消えていく。
そして、辺りがまた赤い霧に包まれ、闇が完全に消え去った時。
「やれやれ。少しばかり堪えたな」
そこには、まるで『無傷』の妖獣が立っていた。
「やれやれ。少しばかり堪えたな」
目の前で自分の身体解体ショーを見せられた僕は、少し枯れた声でそう言った。一度咳ばらいをして喉の調子を戻しておく。
目の前でへたりこんでいるルーミアを見て、多少やり過ぎたかとも思ったが……まぁ、壊れてはいないようなのでよしとする。
「ルーミア、ルーミア?」
「アハ、ハ、ハ……」
「目を覚ませこら」
「痛っ! ……あ、あれ? 貴方!?」
無傷の僕を見て、途端に慌てだすルーミア。無理もない、先程まで目茶苦茶にしていた相手が無傷で出て来たら驚きもする。
動転している大人ルーミアの姿に苦笑しながら、僕は種明かしをすることにした。
「どう? 化かされた気分は」
「化かされた……? まさか、あれが幻だったって言うの……?」
「そう。お前はずっと、僕の幻を切り刻んでたってわけ」
「で、でも! ……信じられないわ、確かにあれは……」
僕の言葉を信じたくないのか、少し必死に訴えてくるルーミア。
「お前が信じられなくても真実なの。僕の幻術を見破れなかったお前が悪い」
実際、したことと言えば闇に飲み込まれた後に接近してきたルーミアに結界幻術をかけ、僕もその中に入って自分の幻影を創り出したくらいのこと。まぁ、ルーミアが僕の幻影だと気付かないように、幻影に命を分け与えてはおいたが。
後は、少し離れた場所で幻影を操ってルーミアの様子を眺めていたくらいだ。ただ少し誤算だったのが、命を分け与えた幻影が予想外にリアルだったこと。おかげで二度と見たくない解体ショーを見る嵌めになってしまった。
「さ、て。まだやるかい?」
「……いいえ、止めておくわ。約束通り、私は貴方の言うことを聞きましょう」
割とあっさりと引き下がったルーミアに拍子抜けする。そんなに怖かったかと思ったが、仕掛けた本人が言う言葉ではない。
「そう。じゃあ……とりあえずこの異変が終わるまで何もせずに身を隠しておくこと。異変が終わったら、封印するかしないかを考えることにする」
「え? 今すぐに封印しないの?」
「今すぐって言ったって、僕は封印云々の術はさっぱりなんだ。それに、別に封印しなくてもいいかな、くらいの考えだし」
「いいの? 私が約束を破ってしまうことだって、あるかもしれないのに?」
「その時はその時だね。ただ考えることがどんなお仕置きにしようかに変わるだけだし。ルーミアだって、さっきみたいなこと何度も味わいたくはないでしょう?」
「う……二度とゴメンよ、あんな思い」
苦い表情で呟くルーミア。それを見て、僕は苦笑いした。
「とにかく。約束の内容は、勝った方が負けた方の存在を自由にする、ってものだったよね」
「わかったわよ。しばらくおとなしくしてるわ」
「ん、それでいい。もし何か面倒事起こしたら――」
「だからわかってるわよって」
僕のしつこい確認に、ルーミアはそっぽを向いて闇を纏い始めた。少ししつこかったかな、と再度苦笑する。
「異変が終わったらまた来るから」
「えぇ……待ってるわ」
その会話を最後に、ルーミアを包んだ闇はどこかへ言ってしまった。
とりあえずあれだけ言っておけば何もするまい。普段のルーミアならともかく、今のルーミアはそれなりに理性的である。
「にしても……」
一人になり、徐に首筋に手を当ててみる。ぬるりとした感触に身体を震わせ、慌てて着物でそれを拭った。
「危なかったなぁ……」
色々な意味で、だが。
EXルーミアの設定はオリジナル。
矛盾があれば、ご指摘ください。




