表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
44/112

44:〔変わらなかった答〕

「……あいつ」


僕は、空に浮かぶ彼女の姿から目を離すことが出来ずにいた。

彼女の名は、藤原妹紅。かつて共に旅をした、僕にとってはとても大切な人間の一人。

妹紅の背後に沢山の炎が浮かび、


「ぐっ……」


その熱気に、思わず僕は自らの妖力を解き放っていた。隠していた猫又としてのパーツが現れ、そんな僕に妹紅が視線を向ける。


「……!!」


目を見開いて、妹紅は炎を消して地面に降り立った。

ゆっくりと僕に向かって近付いてくる妹紅に、かぐや姫は、


「私との戦いは」

「黙ってろお姫様。私はコイツに用があるんだ」


眼前に現れた炎に、かぐや姫は歯を食いしばって飛びのく。その間にも、妹紅は僕に着々と近付いてくる。


僕はまぶたを下ろして思い返す。

かつて、僕は妹紅に父親殺しであるかもしれないことを告げた。

果たして、あれから妹紅はどんな答を出したのか。


「ふむ」


トン、と縁側から外へと飛び降りる。

そこで目を開き、すぐそこにいた妹紅と目を合わせた。赤色が僕を射ぬく。


「ミコトだな?」

「いかにも。早速だが、答は出たのかな?」

「ふん……。昔から変わらない」

「っ!?」


妹紅が手をかざしたかと思うと、そこから火玉が顔面に飛んできた。咄嗟に顔をそらすも、その熱風だけでも皮膚が焦げる。


それに驚いた瞬間、妹紅は僕を担ぎ上げていた。


「え、ちょっ」

「コイツは借りていくぞ!文句無いな!」


言いながら宙に浮かび、そのまま妹紅は飛んだ。

いや、かぐや姫に許可取る前に本人に許可取れよ。

というかさっきまでのシリアスな雰囲気はなんだったんだ?

なんて考えている間にも、妹紅はどんどん飛んでいく。その速さは昔とは比べものにならない。

そんな風に妹紅の成長を風と共に感じていると、不意にスピードが緩まり、少しずつ下降を始めた。どうやら目的地に着いたらしい。


「っと」


しっかりと着地し、辺りを見回す。どうやらまだ竹林の中のようだが、ここにはぽつんと一軒家が建っていた。

その一軒家を二秒程眺め、妹紅の存在を思い出し振り返る、と。


「うわっと」


妹紅が、僕に飛び付いてきていた。背中に回された腕が、ギュッと僕を抱きしめる。


「妹紅……妹紅?」


そのまま着物に顔を埋めて顔を上げない妹紅。

一体どうしたのか、と首を傾げ――


「…………!」


――微かに、その身体が震えていることに気が付いた。流れ込んで来るのは、妹紅の感情。


……あぁ、そういうことか。


「……妹紅」

「っ……は、い」

「……ただいま」

「っ!」


頭の後ろに手を回し、優しく、けれど力一杯抱き寄せる。


妹紅の答は、あの時からずっと変わっていなかった。


「本当に、馬鹿だなぁ」

妹紅も、僕も。

妹紅すげぇいい娘になった……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ