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37:〔一時の……〕

「うぅん……」


何だか妙に寝苦しい。

どうしたことか、と寝返りを打つ。何か暖かいものがあったので、無意識に抱き寄せた。


「ふわっ……」


耳元で艶っぽい声が。

いや、気のせいだろう。今はとにかく、このやけに暖かくて気持ちいい抱きまくらに身を任せていたい。

そんな本能から、更に身体を寄せて擦りついた。あぁ、すごく……落ち着く。


「椛〜、ミコトさんの様子は――」


スッ、と扉を開く音がして、文の声がした。

ん?椛?


僕が一抹の疑問を覚えると同時、抱きまくらがびくりと動いた、気がした。


「あ、文さん!?ここ、これは違いますよ!?決してその、私がミコトさんの布団に入っていた訳では」

「つまりは誘惑に負けて布団に入ったら寝ぼけたミコトさんに抱きしめられたと!!こ、これは滅多に無い特大ネタです!!」

「文さん!?た、頼みますから新聞になんて載せないで下さいね!?」

「否定しないということはそうなんですかぁ!!『犬走椛、鬼を打ち倒したあの妖獣にその身を許した!?』見出しはこれで完璧ですね。アハハハハ!!」

「文さん!?私の話を聞いてますかぁ!?」


ドタドタバタン!と騒がしい音を最後に、また周りは静かになった。

すっかり目が覚めて、現在自分が行っている行動を話の内容から理解する。ヤバい、冷や汗がダラダラと流れ出して来た。


僕はゆっくりと腕の力を抜き、椛を抱きしめていたであろう体勢から脱出。はやる気持ちを押さえ付けてゆっくりと反対方向に寝返りを打った。


「あっ……。す、すごい汗……。もしかして、不安、なのかな」


布か何かで僕の額の汗を拭き、椛はそんなことを呟く。

当たりと言えば当たり。


「えっ、と……安心させれば、いいのかな。でもどうすれば……あ」


まるで何か思いついたかのような最後の一音。ズリズリと這うような音が聞こえる。


「文さんは……まぁ、ここまできたら同じですか。いざとなったら開き直れば……」


――――まさか?


「で、では……失礼して」


一体何を失礼するのか、なんて聞く暇もなく、僕を包む柔らかな感触。薄く目を開くと、椛の来ている白い服が見えた。

すぐに目をつぶると同時、頭に回された腕が僕を抱き寄せる。

リラックスどころか、身体は強張る一方である。


サラリと髪をすく、椛の指先。


「綺麗な髪……。それに、なんて細い身体。この身体で、私を守って戦ってたんですか……」


ギュッ、と身体が抱きしめられ、同時に椛の感情が流れ込んでくる。


それは、とても暖かくて、優しい感情。もっと相応しい言葉があると思うけれど、僕の頭はその感情にいつしか支配されて、それ以上考える事が出来ない。


身体の強張りはいつの間にか消えていた。












まぁ、もうしばらくはこのままで……。

短いですが、どうしてもここで一つ区切りを入れたかったので更新しました。



椛かわいいよ椛。

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