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24:〔無意識なる否定〕

カサカサと木の葉が揺れる音。


「…………」


僕は大きな山の麓、森というよりは樹海の木の枝に身体を預けている。

もう、かなりの時間をこうして過ごしている。

ここに訪れたのは東の空が白み始めた頃。今はもう太陽が申し訳程度に少し顔を出している程度である。少なくとも半日はここでじっとしていたことになる。


「ふぅ」


割と独り言が多い僕ではあるが、今は口を開いても溜め息しか出てこない。

かといって何かを深く考えているわけでもない。考えていないわけではないのだが、考えることが出来ないのだ。果たして何から考えればいいのかわからず、結局時間ばかりが過ぎていった結果が、今だ。


もう何に悩んでいるのかすらよくわからなくなってきた。


人間を殺したこと?


永琳のこと?


トラウマのこと?


自分のこと?


脈絡がない考えばかりが頭を巡る。

果たして僕は何に悩み、何に苦しみ、何が許せないのか。


『あなたが気に病む必要はないわ。妖怪なら妖怪らしく、過ぎたことを気にするのはお止めなさい』


永琳の言葉が、ふと頭を過ぎった。


「妖怪なら妖怪らしく……か」


何気なく手を見る。鋭い爪がそこにはあった。

こめかみ辺りを触ってみる。 そこに耳は無く、その変わりに猫の耳が頭にあった。

尻尾を触り、手を離して一振り。


「……僕は、妖怪」


そう。僕は妖怪、猫又。それは理解している。

だが、果たして納得はしていただろうか?

心のどこかで、まだ人間だという気持ちが残ってはいないだろうか?


「そうか……そうだ、な」


そろそろ、一区切りする必要があるのかもしれない。いや、しなければならないのだろう。

人間の感覚で物事を考えているから、こうした矛盾が生まれるのだ。

いい加減に、認めなくては。


僕は妖怪。人間の恐怖から生まれた存在。


「…………ん」


クルリと身体を転がし、枝から自由落下をする。スタンと四つん這いで着地をして、二本足で立ち上がる。

不思議と身体が軽い。直接悩みが無くなったわけではないのに、自らを妖怪だと認めただけで楽になった。

それもそうだ。自分からも認められない身体なんて、自由に動くわけがない。やはりどこかで、僕は自分にリミッターをかけていたのかもしれない。

過ぎたことは気にしない、とまではいけないけれど、クヨクヨと悩むのは止めにしよう。悩んだって過去は変えられないのだ。

どうせ悩むのなら、これからについて悩もうじゃないか。


過去より未来。全くもってその通りだ。


「……過ぎたことに悩んだって答が出ないのは当たり前じゃないか。なんで気付かなかったんだ」


思い切り身体を伸ばし、ついでに妖力も解放。今はなんとなくいろいろと解放したい気分だ。


「……おぉ?」


で、気付いた。

妖力の絶対量がかなり増えているではないか。


「まさか、こっちにまでリミッターがかかっていたとか……そんな感じ?」


これならもしかして桃鬼に肉弾戦で勝て……いや無理だ。夢を見るのは止めておこう。しかし志妖の妖力には追い付いただろう。ちょっと嬉しい。


妖力を抑え、さてこれからどうしようかと考え始めた時に、トクンと胸が鼓動を打った。トラウマの時とは違う、とても優しい鼓動。

久しく感じていなかった。


これは、『彼女』の鼓動だ。


「そうか……。僕は、君まで否定して認めていなかったんだね」


ゴメン、と胸に手を当てて『彼女』に言う。すると、もう一度だけ鼓動を打って、それきり何も感じなくなった。


なんとなく胸が暖かくなった僕は、そこで初めて山の方向に大量の命を感じ取った。

空を見上げてみれば深く染まった黒の色。瞬くように輝く星の側には、満月から少し欠けた月の姿があった。


「なんだ……?あ、そうか。ここ富士山だ」


ザクザクと歩きながら能力を使って命を感じ取り続ける。

この大量の命は人間だろう。かぐや姫が残していった不死の薬を埋めにきたのか。

それならまだ理解出来るのだが、一つだけ引っ掛かる点が。


「一つだけポツンとある命はなんだ……?」


おそらく隊列を組んで山を登っている兵隊達の後ろ、一つだけ孤立している命があった。

単純に遅れているだけか、それとも……。


「しかも、なんだろ。この命だけ……何か、違う」


考えていても始まらない。とにかく、行ってみようか。










「ん!?なんだ、命が……!?」


山の中腹辺りに差し掛かったところで異変が起きた。

山頂辺りで固まっていた命が、一つ、また一つと消えていく。

やけに力強い命が、他の命を刈り取っていく。


「……!」










「これは……!?」


妖力を使って山を駆け上がり、一気にその場所まできた僕を出迎えたのは、


「うわあぁぁぁぁ!!」

「ひゃああぁ!!」

「くそっ!この……化け物め!」


小さな戦争、だった。

兵隊の方は約五十人弱。しかしすでに何人かはやられてしまっている。

僕なんかには目もくれずに戦っている辺り、かなりの緊急事態と見て取れた。


一体何が起きているのかと、兵隊達の視線を追っていく。


「!!」


瞬間、僕は息を飲んだ。


そこにいたのは、人間の少女。着物を着込んだ、可愛らしい見た目の女の子――。


――髪が白く、目が朱く染まっていることを除けば、の話だけれど。


しかし、本当に驚くのはこれからだった。


一人の兵隊が放った矢が、彼女の左胸を貫く。

終わった、と僕は思った。


が。


「――あああぁあぁああ!!」


あろうことか、彼女は自らの心臓を貫通した矢を強引に抜き取ったのだ。

グチッと嫌な音が耳に届いて、思わず顔をしかめてしまう。

その瞬間に、また一人の兵隊の命が消えていた。

彼女の手に持たれた小刀は、今日だけで錆びるのではないかと思う程に赤く染まりきっていた。


さて、僕はどうしたらいいだろうか?

なんてのんびり考えていたら、兵隊が全滅してしまうな。


「ふっ!」


僕は妖力を解放、ここら一帯に結界幻術を発動させる。

一瞬で人間達の動きが止まる。ちなみに、彼等は今一面の花畑を見てもらっている。感情の鎮静化が目的だ。


その一瞬で少女の背後に周り、


「失礼」


首筋に一撃。

そのついでに一瞬感情を取り込んで見たが、どうやら何かしらの原因で暴走状態にあった模様。

ガクリと意識を失った彼女を担ぎ、幻術を解除と同時に僕はその場から跳んだ。

ものの数秒で山を下り切り、樹海の中へと突撃。












さて、これからどうしようか……。早速、悩まなくちゃならないみたいだ。

文章がグダグダしてたような気が……。



ここで感謝の意を。


PV100000、ユニーク10000突破!本当にありがとうございます!

これからも頑張ってまいりますので、どうかよろしくお願いいたします!


感想、質問、ポイント、随時受け付けておりますので、暇な時にでもどうぞ。作者が涙目になりながら喜びます。(案外真実)

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