表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

動き出せば それは まぎれもなく 南雲艦隊

サクッと勝ちます。

 シアトル強襲と米国本土太平洋岸の通商破壊戦を成功させた南雲艦隊は内地に戻っている。各員に二週間の休暇を与えて。

 もちろん半舷休暇で都合一ヶ月少々は作戦行動には出ないことにした。強気であるが、海軍は認めた。既に海軍内で南雲艦隊は独立艦隊扱いされている。それだけのことを行ったのだし、海軍には南雲艦隊以上の戦力が存在しない。認める理由もあった。

 それに帰還当時は行方不明になったことを悪し様に陰口を叩く面々も多かったが、行方不明になった理由やその後の物資補給や活躍でその声も減っている。陰口を言えば周りから相手にされなくなっていくのだ。



 だが、そんな南雲艦隊を利用しようとする連中もいる。主に陸軍と大陸派だった。

 それをはねのけたが、


「何故国難の時に協力しようとしないのか。大陸に航空隊を派遣して友軍のために戦果を上げるべきだ」

「元々陸軍がまいた種だろう。何故海軍がケツを拭いてやらんといかんのだ。貴様達は自分の後始末も出来んのか」


「天誅!」

「「天誅!」」

「「「天誅!」」」

「「「「天誅!」」」」


 陸軍士官や大陸派などが人まで雇って襲ってくるがレベルアップした南雲艦隊の面々に刃物や拳銃程度で傷を付けられるわけもなく、逆に圧倒され全員叩きのめされた。

 南雲艦隊は海軍に対して陸軍を押さえるように強硬に申し入れ海軍も陸軍に内部の違法行為を押さえるように脅し気味に申し入れる。陸軍も恥であるとして一時は押さえ込めた。

 が、一部の勢力が憲兵隊と特高と結びつき海軍高官や南雲艦隊の家族にも手を出した。




 暴れた。




 手を出した奴らに背景を吐かせ(一部の特高や憲兵隊がかばう素振りが見えたので犯人を強引に奪取し吐かせた)結果、一部勢力の屋敷や建物と特高本部と憲兵隊司令部の内部は残骸となり負傷者も多数出た。さらに陸軍省と参謀本部と内務省にも相当な破壊の痕跡が。

 ちなみに南雲艦隊の装備品は使っていない。装備品は強力になりすぎていたし使ってはいかんと当然考えた。得物はそこら辺のバールや鉄パイプや棍棒や石だった。レベルアップにより隔絶した身体能力が人力で破壊をもたらした。


 この事件が無検閲で大々的に報道され(陸軍と内務省と特高と憲兵隊は検閲どころではなかったし、海軍と内部でその連中を嫌う勢力は検閲をしたが素通りさせた)幾つかの思想団体と政治団体と陸軍と憲兵隊と特高は名を下げ忌み嫌われるようになる。

 当然だった。南雲艦隊は帰還後、勝利をもたらし物資の安定に協力的で我が物顔に振る舞わない。人気はあった。


 この騒ぎは陛下の耳にも入り御下問された。陸軍大臣と内務大臣は主上の納得出来る答えを答えることが出来ず、海軍大臣は答えることが出来た。

 海軍大臣にはやり過ぎないようにと仰せられたと。逆に総理大臣兼陸軍大臣兼内務大臣には無言でもあったと。

 事実上許されたとか考えて良かった。陸軍と内務省は逆に大騒ぎになる。無言ということは何も期待されていないと考えた。思想団体と政治団体は解散を命令された。

 まあ大騒ぎになっただけで終わったが。陸軍と特高と内務省の自浄能力は低かった。憲兵隊はそれでも自浄能力を発揮し本来あるべき姿(軍人による違法行為への対応と基地周辺の警戒と防諜)に戻ろうとしていた。

 しかし、外圧はきつくなった。

 陸軍は志願兵が激減し徴兵拒否も多発。憲兵隊への配置転換も拒否が続出。内務省も今まで協力的だった各組織や会社が非協力的になる。政府内部でも相手にされなくなってきた。 

 しかし、これでも内務省は組織改革には手を付けない。さすがに陸軍は危機感を強め内部の規律引き締めに乗りだしたが動きは遅かった。



 そんなふうに国内が混乱する中、南雲艦隊は次の行動に移る。

 真珠湾攻撃である。

 六度目の単冠湾からハワイを目指し出撃する。


 当然成功した。迎撃機と迎撃艦隊を蹴散らし真珠湾を攻撃した。今回は燃料タンクを攻撃目標にしなかった。機数が少ないので軍港と艦艇のみ。そして、そのままの勢いでサンディエゴ海軍基地の攻撃を行ってしまった。

 もちろん成功する。ドックに入っていたハンコックはドックの扉船が破られたせいで盤木から外れドックに衝突して損傷が拡大、予定以上に長期占拠してしまうことになった。

 ついでのついでにサンフランシスコ海軍造船所も攻撃し残骸に変えてしまう。


 そしてアメリカ太平洋艦隊主力は洋上から姿を消した。残された巡洋艦と駆逐艦と潜水艦では有効な戦闘力はない。ハワイ・シアトル・サンディエゴ・サンフランシスコの軍港と造船所を残骸にされ太平洋側は軍港と造船・補修能力を失ったのだ。



 これを機会と捉えた海軍は講和交渉を開始するように政府に申し入れた。

 陸軍を中心とした継戦派と講和派が国内で主導権を争うが継戦派の旗色は悪い。かつて南雲艦隊にテロルを働いたのがおおよそ継戦派に繋がる人間だったから。

 講和派が勝ち国内は講和の雰囲気になっていく。

 遂に東条英機内閣総理大臣兼陸軍大臣兼内務大臣が辞任を発表。

 また次期首班は陸軍ではなく海軍からと天の声があり陸軍は大いに落胆した。

 海軍内部でも継戦派や艦隊派ではなく、戦前の対米戦反対派から選ばれることとなった。多くの人間が候補に挙がったが井上成美中将を推挙すると決定した。

 主上から首班指名を受けた井上中将は内閣総理大臣に就き組閣を行う。

 国内政治では陸軍の撤退を部分的に開始させるなど講和に向けた行動を開始した。陸軍は抵抗するも大勢は決しており、陸軍軍人によるテロルが発生した事もふまえ余計に陸軍の社会的地位は下がった。



 井上政権は交渉の末、対米休戦には成功した。昭和十九年十一月のことである。講和交渉は場所の選定にまごつき戦禍のヨーロッパは論外。ハワイも空襲したばかり。アメリカ西海岸も同様。メキシコも難色を示し南米のウルグアイに決まる。

 全権使節団として派遣されるのは、堀悌吉を代表とする一団だった。


 全権使節団は船で渡航するわけだが日本には優秀な貨客船は空母に改装されたり特設巡洋艦になったり戦没したりで数隻しか生き残っておらず、かといって生き残った貨客船では補給に手間がかかるし。

 と言うことで特急で加賀の上部格納庫を仕切って窓を付けるなど一等船室並みに改装して使節団が乗船するように整えられた。場所は上部格納庫の前部エレベーターと中央エレベーターの間である。加賀が選ばれたのは一番船の据わりがいいからだった。


 全権使節団を乗せた船団は加賀、赤城、霧島、利根の四隻と補給艦国洋丸と東邦丸で構成された。船団巡航速力は二十四ノットを誇る。補給艦も全速で三十ノット出るようになっていた。二十四ノットなのは補給艦の凌波性で二十七ノット以上に上げるとちょっとした波浪でがぶるので押さえるのだった。


 昭和二十年一月二十八日。使節船団は脅威の無補給でウルグアイの首都モンテビデオに到着した。



 交渉はタフであり二十日後に疲れて精神的疲労からおかしくなった随員の一人が「南雲艦隊を大西洋に派遣する」と言い出した。慌てて堀使節団団長が取りなすが、アメリカ側に広くひろがっており事態の収拾は困難を極めた。

 されにこじれる交渉に一度は席を立った両国の使節だが、ルーズベルト大統領が急死の報が入る。アメリカ側から延期を求められる。

 急死の原因だがアメリカ太平洋艦隊壊滅と西海岸の海軍施設壊滅で心労が溜まっていたときに「南雲艦隊を大西洋に派遣する」でとどめを刺されたのではと言う噂もワシントンでは流れた。

 両国使節団は本国からの指令で再度交渉に就いた。

 使節団は休戦期間の延長と再度の講和交渉という条件をもぎとり二月二十日帰途についた。



 三月一日、アメリカ合衆国第三十三代大統領トルーマンが日本との講和交渉再開を明言。舞台はアカプルコである。休戦状態なのでメキシコも態度を軟化させた。

 日本に着く前に決定されたので洋上で向きを変えアカプルコに向かった使節団。長期の洋上生活で疲れ果てている。


 三月十八日、日米休戦条約が結ばれる。太平洋戦争の終わりを告げるものだ。引き続き講和交渉が続けられる。

 オーストラリアも休戦条約を結んだ。

 イギリス、フランス、オランダも日本の撤退を条件に休戦を認めた。


 四月十二日、ソ連軍が樺太国境を越境。すぐに対応し押し戻す。ソ連に厳重に抗議する。ソ連は日本の対応を見たようで以降樺太、満州とも越境はなかった。


 四月二十日、ナチス降伏。


 ここに二回目の大戦は終わる


 五月から七月にかけて、オーストラリア、イギリス、フランス、オランダと休戦条約締結。講和条約の交渉に入る。


 七月、中華民国と休戦条約締結。

 この影響で国共内戦が復活。

 日米が国民党を支援しソ連が中国共産党を支援する米ソ代理戦争が始まる。








次回更新は最終話 11月30日 05:00


ヤルタ会談は1945年(昭和二十年)2月です。その前にね。

B-29がソ連領土内に不時着していないのでTu-4は出現しませんし高高度飛行に必要な最先端技術もソ連には渡りません。

ナチス降伏時にソ連はポーランド国内なのでドイツは分割されません。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ