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南雲艦隊は征く ひとすじの力となって 力となぁってー 

 南雲艦隊は一斉回頭した後に五航戦が索敵機を発艦させ、空母全艦が対艦装備をで発艦準備を始めた。

 そこに入電。


『われ瑞鶴二番 敵艦隊発見 東経*** 北緯*** 二群に分かれ速力二十五ノット以上にて東進中  各空母四隻 戦艦二隻 巡洋艦四隻 駆逐艦十六隻』


「至近距離ではないか。それに二十五ノット以上だと?近づかれてしまうではないか」

「長官。戦闘機を発艦させたのでしょう」

「艦隊速力上げ、第五戦速」

「艦隊第五戦速」

「航空参謀。発艦準備はどうか」

「ハッ、あと四十分掛かります」

「もっと早くならないか」

「魚雷の調停時間が掛かります」

「航空参謀、戦闘機と降爆だけで良い。敵の飛行甲板を潰す」

「雷撃機はどうされますか」

「まず第一波として戦闘機と降爆だけで出す。急げ」

「ハッ」


 十五分後、零戦四十三機と九九艦爆五十一機が発艦を始めた。




「レーダーに反応。接近する編隊確認。距離60マイル、時速180マイル、高度400フィートで接近中。推定機数100」

「ファック!なんでそんなに近い」


 南雲艦隊から発艦したばかりで高度が上がっていないが、そんなことは33任務部隊からはわからない。


「低空で接近してきたのでしょう」

「とにかく戦闘機を全部上げろ。邪魔になる攻撃機は発艦させてしまえ。空中退避だ。準備が出来ていない機体はガソリン抜き取りと爆弾を弾火薬庫に降ろせ」

「間に合わない機体と爆弾と魚雷はどうされますか」

「仕方がない、投棄して良し。責任は俺が取る。各空母に徹底させろ」


「敵編隊速度を上げました。距離30マイル、時速220マイル。4000フィートに上昇しています」

「レーダー、降下する機体は無いか」

「低空には反応無し」


「爆撃機だけなのか」

「魚雷が間に合わなかったのでしょう」

「戦闘機は」

「80機程度が発艦しました」

「まだ発艦準備中の戦闘機は途中で良いから出してしまえ」

「了解」


 上がれたのは最終的に130機程度。旧型のゼロとヴァルとケイトの100機相手なら十分なはずだった。




『全機、こちら蒼龍二中隊鈴木、前方に機影、正面』

「こちら板谷。見えんぞ」

『大きくなります』

「む、アレか。加賀隊と赤城隊が行く。他は動くな。指揮は蒼龍隊菅波大尉が執れ」

『『『了解』』』


 三十機以上に見える敵戦闘機に自身を含め十八機で向かわせる攻撃隊戦闘機隊長板谷少佐。向こうと同じ結果が出ているので十分だと考えている。どのみち機数が少なくこれ以上は出せない。

 その後、集団ではなくバラバラとやってくる敵戦闘機に対抗しながら敵艦隊に接近する。既に高度三千で九九艦爆は全速飛行している。


『十一時に敵艦隊発見』

「高橋だ全機突撃せよ。目標、一空母二空母三空母だ。駆逐艦なんて小物に当てるなよ」

『『『『了解』』』』




『敵機はゼロとヴァルの編隊。ケイトは見えない。おおよそ100。これより戦闘に入る』

『こいつら、防弾が。撃墜出来ない』

『後ろに回り込まれた。誰か来てくれ』


「敵機距離10マイル、高度10000フィート」

「艦隊オープンファイヤ。戦闘機隊には入り込むなと徹底しろ」

『戦闘機隊だ。撃墜不能、敵全機に突破された』

「なんだとー!」

『こちらは半分以上撃墜された』

「なんだとー!」

「ファック。レッツダンス、各艦回避自由。衝突に気をつけろ」


『敵編隊6機、後方5時から近づきます。後続の編隊あり』

「面舵用意」

『敵機降下!』

「面舵一杯、急げ」


 面舵一杯で急旋回をして爆撃から逃れようとするエセックス。しかし、選りすぐりの搭乗員がさらに経験(向こうの世界で)を重ね無敵の飛行機でやってきたのだ。




「ぎょうさんおる」

『選り取り見取りや』

「おお、夢にまで見たレキシントンとサラトガがおる」

『アレは赤城隊と加賀隊がいただく』

「おい。まあいい。新型のデカい奴二隻を翔鶴隊と瑞鶴隊がいただく」

『蒼龍隊と飛龍隊は続け。南東にいる集団のヨークタウン級をやるぞ』

「残り二隻はどうするんだ」

『おいおい、二次攻撃隊の連中に残しておかんと怒られる』

「そういうことかい」




 アメリカ海軍33任務部隊には悪夢だった。

 33.1部隊のレキシントンとサラトガは爆発炎上し停止している。エセックスとイントレピッドも黒煙を上げて速力が落ちている。

 33.2部隊ではヨークタウンとエンタープライズは既に海面下へと姿を消した。

 軽巡アトランタも停止している。


 アトランタ、レキシントン、サラトガの各艦には総員退艦命令が出ていた。


 レキシントンに四発、サラトガには三発命中した。両艦ともガソリンと爆弾が残っている機体が十機近く格納庫内にあり最初の一発で数機に引火誘爆が発生。さらに続いた命中弾で残り全機が引火誘爆。格納甲板以上が破壊され人員も多くが戦死し消火不能となり艦の放棄が決まった。

 エセックスとイントレピッドの場合は機体を捨てるのが間に合い誘爆はしていない。していないが八十番陸用相当の爆発力を持つ爆弾三発を喰らい飛行甲板は大破。残骸となった。こちらも人員の多くが戦死して火災の消火が間に合っていない。

 ヨークタウンとエンタープライズは悲惨だった。防御力は一段落ちるのに、命中率が異常に高い爆撃隊に襲いかかられたのだ。両艦とも四発以上の直撃弾と同程度の至近弾を受け、あっと言う間に沈んでいった。

 アトランタは蒼龍隊で投弾しようと思ったら爆炎と火災の煙で目標視認が困難になった機体が4機あり、そいつに攻撃を受けた。命中1至近弾2である。


 アメリカ海軍33任務部隊の悪夢はまだ続く。第2次攻撃隊がやってきたのだ。もう防空をしてくれる戦闘機はたいした機数が残っていない。今度は雷撃機が主役だった。

 33.1部隊のエセックスとイントレピッドはとどめを刺され、戦艦サウスダコタとインディアナは複数の航空魚雷が命中。サウスダコタは艦首から沈みインディアナは横転した。軽巡ヘレナは爆弾2発と航空魚雷1本で炎上、行動不能となり退艦命令が出た。重巡サンフランシスコは艦首切断で航行不能。浮いているだけだ。残りの軽巡ナッシュビルも前部主砲群を吹き飛ばされ、よく前部弾火薬庫が誘爆しなかったくたらいの損害で船体前部の損傷が大きく速力は低下している。ジュノーは無事だった。

 駆逐艦は16隻の内、溺者救助中だった5隻が見逃された感じで攻撃を受けず、残りの11隻が大物の後で狙われた。奮闘むなしく2隻が沈んだ。

 33.2部隊は無傷だった空母バンカー・ヒルとタイコンデロガが集中的に狙われあっと言う間に沈んだ。戦艦ノースカロライナとワシントンも同じく沈んだ。

 重巡ミネアポリスはかろうじて浮いている。軽巡クリーブランドは艦後部の上部構造物が残骸になった。軽巡ブルックリンは直撃弾こそなかったものの至近弾数発で浸水したのか左舷に傾いている。

  駆逐艦は16隻中3隻が撃沈されたが、残りは無事だった。

 

 悪夢はまだ続いた。

 ほぼ無傷で残った巡洋艦と駆逐艦全艦が溺者救助に掛かっていると恐怖のコンゴウクラスが巡洋艦や駆逐艦と突撃してきたのだ。

 彼らは発砲せずに降伏を迫ってきた。

 大勢の戦友を救助して艦が重く戦闘も出来ないとあっては致し方無しと、降伏した。

 降伏後は日本海軍も溺者救助を行う。利根と筑摩の水上機も出して広範囲に行った。かなり発見して拾い上げる。

 降伏した艦はどこへ連れて行かれるのだろうか。不安がある。

 意外な行き先だった。グアムだった。おかしい。グアムへ行けと。どう考えてもおかしい。




「おい、草鹿参謀長。降伏しただと?」

「比叡からの報告で間違いありません。しかし困りました」

「内地は遠すぎる。浮いているのが不思議な巡洋艦と駆逐艦もある。そいつらは届かんだろう」

「燃料と食料を捕虜に分けながらですね。負傷者も相当いそうですし。医薬品も分けなければ」

「そんなこと出来るか。負傷者や海へこぼしそうな人員をこちらが引き受ければこの艦隊の秘密がバレるかもしれない」

「出来ませんね」

「困った」


 草加参謀長が周りに


「おい、知恵を出せ。そのためにここにいるのだ」

 ポク

 ポク

 チーンとばかりに一人が案があると言った。

 赤城から比叡に送られた電文は


『捕虜の行き先はグアム。我が方に引き取る余裕無し。通信は自由にさせてやって良い』


 比叡の司令部は混乱した。なんでわざわざ戻してやるんだ。降伏させたのは、あんなに人を甲板まで載せた艦に攻撃するのは気が引けたからだ。しかし、落ち着いて考えると他に妙案も無く受け入れた。それが降伏したアメリカ駆逐艦への指示である。

 向こうも混乱しているだろう。


 もっとも、これからサイパンとグアムを攻撃に行くんだけどな。

 

次回更新 11月24日 05:00 予定


弾薬は爆発威力が上がっており、貫徹力も若干向上。要するに凄いんです。

捕虜の行き先はこれから攻撃するところ。いろいろ酷い。

利根の搭載機は零式三座水偵三機と九五式水偵二機です。

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